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真の理解のためのシンプルな数学のノート

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$3$ 次元ピタゴラス数

理論

$3$ 次元ピタゴラス数

定義≪$3$ 次元ピタゴラス数≫

 正の整数 $a,$ $b,$ $c,$ $d$ が $a^2+b^2+c^2 = d^2$ を満たすとき, 整数の組 $(a,b,c,d)$ を$3$ 次元ピタゴラス数(Pythagorean quadruple)と呼ぶ. さらに $a,$ $b,$ $c,$ $d$ が互いに素であるときには $(a,b,c,d)$ は原始的(primitive)であるという.

補足

 ピタゴラス数 $(a,b,c)$ は各辺の長さが整数であるような直角三角形と $1$ 対 $1$ に対応しているが, それは各辺の長さ $a,$ $b$ と対角線の長さ $c$ が整数であるような長方形と対応していると考えることもできる. それと同様に, $3$ 次元ピタゴラス数 $(a,b,c,d)$ は各辺の長さ $a,$ $b,$ $c$ と対角線の長さ $d$ が整数であるような直方体と $1$ 対 $1$ に対応している.

例≪$3$ 次元ピタゴラス数≫

 $1^2+2^2+2^2 = 3^2$ から, $(1,2,2,3)$ は $3$ 次元ピタゴラス数である. よって, $q^2+(2q)^2+(2q)^2 = (3q)^2$ から, 任意の正の整数 $q$ に対して $(q,2q,2q,3q)$ も $3$ 次元ピタゴラス数である. $(1,2,2,3)$ は原始的であるが, $(2,4,4,6)$ は原始的ではない.

単位球面上の有理点

 整数 $(a,b,c,d)$ が $a^2+b^2+c^2 = d^2$ を満たすとする. $d = 0$ ならば $a = b = c = 0$ となり, $d \neq 0$ ならば $\left(\dfrac{a}{d}\right) ^2+\left(\dfrac{b}{d}\right) ^2+\left(\dfrac{c}{d}\right) ^2 = 1$ となる. よって, $3$ 次元ピタゴラス数を求める問題は, $x^2+y^2+z^2 = 1$ の有理数解を求める問題に帰着される.

命題≪単位球面上の有理点≫

 $x^2+y^2+z^2 = 1$ のすべての有理数解は, ある有理数 $u,$ $v$ を用いて \[ (x,y,z) = \left(\pm\frac{2u}{u^2\!+\!v^2\!+\!1},\pm\frac{2v}{u^2\!+\!v^2\!+\!1},\pm\frac{u^2\!+\!v^2\!-\!1}{u^2\!+\!v^2\!+\!1}\right)\] と表される.

証明

 球面 $S:x^2+y^2+z^2 = 1$ 上の点 $\mathrm A(\vec a)$ を通り $\vec d$ に平行な直線と $S$ の交点の位置ベクトル $\vec p$ は, \[\vec p = \vec a-\frac{2\vec a\cdot\vec d}{|\vec d|^2}\vec d\] と表される. 実際, $\vec p = \vec a+t\vec d$ とおくと, $|\vec p| = |\vec a+t\vec d| = 1$ から \[ |\vec a|^2+2t\vec a\cdot\vec d+t^2|\vec d|^2 = 1\] となり, \[ t = -\frac{2\vec a\cdot\vec d}{|\vec d|^2}\] となるからである. 点 $\mathrm A$ を北極, つまり $\vec a = (0,0,1)$ とする. 直線 $\mathrm{AP}$ と $xy$ 平面の交点を $(u,v,0)$ とおき, $\vec d = (u,v,-1)$ とすると, \begin{align*} \vec p &= (0,0,1)+\frac{2}{u^2+v^2+1}(u,v,-1) \\ &= \left(\frac{2u}{u^2+v^2+1},\frac{2v}{u^2+v^2+1},\frac{u^2+v^2-1}{u^2+v^2+1}\right). \end{align*} となる. 符号を考慮すると, 求める結果が得られる.

パラメーター解

 上記の定理において $x = \dfrac{a}{d},$ $y = \dfrac{b}{d},$ $z = \dfrac{c}{d},$ $d = u^2+v^2+1$ であり, $u = m,$ $v = n$ が整数である場合を考えると, 無限個の $3$ 次元ピタゴラス数 \[ (a,b,c,d) = (\pm 2m,\pm 2n,\pm (m^2\!+\!n^2\!-\!1),\pm (m^2\!+\!n^2\!+\!1))\] ($m,$ $n$: 整数)が得られる. このパラメーター解は次のように一般化できる.

命題≪$3$ 次元ピタゴラス数のパラメーター解≫

 $l,$ $m,$ $n$ を整数とすると,   \[ (a,b,c,d) = (\pm 2lm,\pm 2ln,\pm (l^2\!\!-\!\!m^2\!\!-\!\!n^2),\pm (l^2\!\!+\!\!m^2\!\!+\!\!n^2))\] は $a^2+b^2+c^2 = d^2$ を満たす.

証明

 代入によって, 解の候補は方程式を満たすことが確かめられる.

注意

 $(8,36,3,37)$ のように, 上記のパラメーター解以外の $3$ 次元ピタゴラス数も存在する.

問題

数学 A: 整数

問題≪$3$ 次元ピタゴラス数≫

 整数 $a,$ $b,$ $c,$ $d$ が \[ a^2+b^2+c^2 = d^2\] を満たすとき,
(a)
$a,$ $b,$ $c$ の少なくとも $2$ つは偶数であることを示せ.
(b)
$d$ が $3$ の倍数であるとき, $a,$ $b,$ $c$ はすべて $3$ の倍数であるか, すべて $3$ で割り切れないのいずれかであることを示せ.
[2000 横浜国立大]

証明

(a)
$(2x)^2 = 4x^2,$ $(2x+1)^2 = 4(x^2+x)+1$ から, 整数の平方を $4$ で割った余りは $0$ か $1$ のいずれかであることに注意する.
(i)
$a,$ $b,$ $c$ のうち $2$ 個が奇数であるとき. $a^2+b^2+c^2 =d^2$ を $4$ で割った余りは $0+1+1 = 2$ である.
(ii)
$a,$ $b,$ $c$ すべてが奇数であるとき. $a^2+b^2+c^2 = d^2$ を $4$ で割った余りは $1+1+1 = 3$ である.
(i), (ii) いずれの場合にも, $d^2$ を $4$ で割った余りが $0$ または $1$ であることに反する. よって, $a,$ $b,$ $c$ の少なくとも $2$ つは偶数である.
(b)
$d$ が $3$ の倍数であるとする. $(3x\pm 1)^2 = 3(3x^2\pm 2x)+1$ から, $3$ の倍数でない整数の平方を $3$ で割った余りは $1$ であることに注意する.
(i)
$a,$ $b,$ $c$ のうち $1$ 個が $3$ の倍数でないとき. $a^2+b^2+c^2 = d^2$ を $3$ で割った余りは $0+0+1 = 1$ である.
(i)
$a,$ $b,$ $c$ のうち $2$ 個が $3$ の倍数でないとき. $a^2+b^2+c^2 = d^2$ を $3$ で割った余りは $0+1+1 = 2$ である.
(i), (ii) いずれの場合にも, $d^2$ が $3$ の倍数であることに反する. よって, $a,$ $b,$ $c$ はすべて $3$ の倍数であるか, すべて $3$ で割り切れないのいずれかである.
最終更新日: 2017 年 3 月 18 日