COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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三角関数の加法定理

三角関数の加法定理

定理≪三角関数の加法定理≫

 すべての角 $\alpha,$ $\beta$ に対して \begin{align*} \cos (\alpha\pm\beta ) &= \cos\alpha\cos\beta\mp\sin\alpha\sin\beta, \\ \sin (\alpha\pm\beta ) &= \sin\alpha\cos\beta\pm\cos\alpha\sin\beta \end{align*} が成り立つ. また, $\alpha,$ $\beta,$ $\alpha\pm\beta$ が $\dfrac{\pi}{2}$ の倍数でないとき, \[\tan (\alpha\pm\beta ) = \frac{\tan\alpha\pm\tan\beta}{1\mp\tan\alpha\tan\beta}\] が成り立つ.

証明

 こちらを参照.

問題≪加法定理のさまざまな証明≫

(A)
単位円周上の動点 $\mathrm A,$ $\mathrm B$ に対して, 動径 $\mathrm{OA},$ $\mathrm{OB}$ の表す角が $\alpha,$ $\beta$ であるとする. このとき, $\triangle\mathrm{OAB}$ に余弦定理を適用することで \[\cos (\alpha -\beta ) = \cos\alpha\cos\beta +\sin\alpha\sin\beta\] が成り立つことを示せ.
(B)
$\triangle\mathrm{ABC}$ において, $\alpha = \angle\mathrm A,$ $\beta = \angle\mathrm B$ とおく. このとき, 正弦定理と第 $1$ 余弦定理 \[\mathrm{AB} = \mathrm{BC}\cos\beta +\mathrm{CA}\cos\alpha\] を使って \[\sin (\alpha +\beta ) = \sin\alpha\cos\beta +\cos\alpha\sin\beta\] が成り立つことを示せ.
(C)
$\alpha,$ $\beta$ が鋭角の場合に, 円に内接する四角形 $\mathrm{ABCD}$ を, $\mathrm{AC}$ が直径となり, $\angle\mathrm{ACB} = \alpha,$ $\angle\mathrm{ACD} = \beta,$ $\mathrm{AC} = 1$ となるようにとる. このとき, 正弦定理とトレミーの定理 \[\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD} = \mathrm{AB}\cdot\mathrm{CD}+\mathrm{BC}\cdot\mathrm{DA}\] を使って \[\sin (\alpha +\beta ) = \sin\alpha\cos\beta +\cos\alpha\sin\beta\] が成り立つことを示せ.

解答例

(A)
$\mathrm{OA},$ $\mathrm{OB}$ のなす角を $\theta$ とおく.
このとき, ある整数 $n$ に対して $\alpha -\beta = \theta +2n\pi$ であり, $\mathrm A(\cos\alpha,\sin\alpha ),$ $\mathrm B(\cos\beta,\sin\beta )$ であるから, \begin{align*} &\cos (\alpha -\beta ) = \cos\theta = \frac{\mathrm{OA}^2+\mathrm{OB}^2-\mathrm{AB}^2}{2\mathrm{OA}\cdot\mathrm{OB}} \\ &= \frac{1^2+1^2-\{ (\cos\alpha -\cos \beta )^2+(\sin\alpha -\sin\beta )^2\}}{2\cdot 1\cdot 1} \\ &= \frac{2-(1+1-2\cos\alpha\cos\beta -2\sin\alpha\sin\beta )}{2} \\ &= \cos\alpha\cos\beta +\sin\alpha\sin\beta \end{align*} が成り立つ.
(B)
$\triangle\mathrm{ABC}$ の外接円の半径を $R$ とおく. このとき, \[\sin\angle\mathrm C = \sin (\pi -\alpha -\beta ) = \sin (\alpha +\beta )\] であるから, 正弦定理により \[\mathrm{BC} = 2R\sin\alpha,\ \mathrm{CA} = 2R\sin\beta,\ \mathrm{AB} = 2R\sin (\alpha\!+\!\beta )\] となる. これらを第 $1$ 余弦定理の式 \[\mathrm{AB} = \mathrm{BC}\cos\beta +\mathrm{CA}\cos\alpha\] に代入すると, \[ 2R\sin (\alpha +\beta ) = 2R\sin\alpha\cos\beta +2R\sin\beta\cos\alpha\] から \[\sin (\alpha +\beta ) = \sin\alpha\cos\beta +\cos\alpha\sin\beta\] が得られる.
(C)
正弦定理により \[\mathrm{BD} = \sin (\alpha +\beta )\] であり, $\triangle\mathrm{ABC},$ $\triangle\mathrm{ADC}$ は直角三角形であるから \[\mathrm{AB} = \sin\alpha,\ \mathrm{BC} = \cos\alpha,\ \mathrm{CD} = \cos\beta,\ \mathrm{DA} = \sin\beta\] が成り立つ.
これらをトレミーの定理の式 \[\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD} = \mathrm{AB}\cdot\mathrm{CD}+\mathrm{BC}\cdot\mathrm{DA}\] に代入すると, \[\sin (\alpha +\beta ) = \sin\alpha\cos\beta +\cos\alpha\sin\beta\] が得られる.

問題≪正弦定理 $\Longrightarrow$ 第一余弦定理≫

 「加比の理」$\dfrac{p}{q} = \dfrac{r}{s} = k \Longrightarrow \dfrac{px+ry}{qx+sy} = k$ (証明はこちら)と加法定理を用いて, 正弦定理から $\triangle\mathrm{ABC}$ において \[\mathrm{AB} = \mathrm{BC}\cos\angle\mathrm B+\mathrm{CA}\cos\angle\mathrm A\] (第一余弦定理)が成り立つことを示せ.

解答例

 $\triangle\mathrm{ABC}$ において, $a = \mathrm{BC},$ $b = \mathrm{CA},$ $c = \mathrm{AB},$ $A = \angle\mathrm A,$ $B = \angle\mathrm B,$ $C = \angle\mathrm C$ とおく. このとき, 正弦定理 \[\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C}\] から, \begin{align*} \frac{c}{\sin C} &= \frac{a\cos B+b\cos A}{\sin A\cos B+\cos A\sin B} \quad (\because\text{加比の理}) \\ &= \frac{a\cos B+b\cos A}{\sin (A+B)} \quad (\because\text{加法定理})\\ &= \frac{a\cos B+b\cos A}{\sin C} \quad (\because A+B+C = \pi ) \end{align*} が得られる. よって, $c = a\cos B+b\cos A$ が成り立つ.

背景

 加法定理のもとで, 正弦定理, 余弦定理(第一余弦定理, 第二余弦定理)は同値である(こちらこちらを参照). ここで, 加法定理は三角関数 $\sin\theta$ の内在的性質であるから, 正弦定理と余弦定理は本質的に同等な定理と捉えるべきである.

問題≪レギオモンタヌスの問題≫

 水平面上の点 $\mathrm O$ の真上に相異なる $2$ 点 $\mathrm A,$ $\mathrm B$ をとる. $\angle\mathrm{APB}$ が最大となるような水平面上の点 $\mathrm P$ に対して, $a = \mathrm{OA},$ $b = \mathrm{OB}$ を用いて距離 $\mathrm{OP}$ を表せ.

解答例

 $\theta = \angle\mathrm{APB},$ $x = \mathrm{OP},$ $\alpha = \angle\mathrm{OPA},$ $\beta = \angle\mathrm{OPB}$ とおく.
このとき, $0 < \theta < \dfrac{\pi}{2}$ であるから
$\theta$ が最大 $\iff$ $\tan\theta$ が最大
が成り立ち, \[\theta = |\alpha -\beta |, \quad \tan\alpha = \frac{a}{x}, \quad \tan\beta = \frac{b}{x}\] となるから, 加法定理により \begin{align*} \tan\theta &= \tan |\alpha -\beta | = \frac{|\tan\alpha -\tan\beta |}{1+\tan\alpha\tan\beta} \\ &= \frac{\left|\dfrac{a}{x}-\dfrac{b}{x}\right|}{1+\dfrac{a}{x}\cdot\dfrac{b}{x}} = \frac{|a-b|}{x+\dfrac{ab}{x}} \end{align*} となる. よって,
$\theta$ が最大 $\iff$ $x+\dfrac{ab}{x}$ が最小
が成り立つ. 相加・相乗平均の不等式により $x+\dfrac{ab}{x}$ は $x = \dfrac{ab}{x},$ $x^2 = ab,$ つまり $x = \sqrt{ab}$ のときに限り最小値をとるから, 求める距離は \[\mathrm{OP} = \sqrt{ab}\] である.

背景

 本問は, 中世ドイツの天文学者・数学者のレギオモンタヌス(Regiomontanus)によって考え出された(1471 年). 本問に結果から, 高い建物の窓や, 高い位置に掲げられた絵画を見上げるとき, どの位置に立つのが最も好ましいのかが分かる.
 方べきの定理を使った別解については, こちらを参照されたい.

問題≪オノの不等式≫

 $\triangle\mathrm{ABC}$ において, $a = \mathrm{BC},$ $b = \mathrm{CA},$ $c = \mathrm{AB},$ $A = \angle\mathrm A,$ $B = \angle\mathrm B,$ $C = \angle\mathrm C,$ $S = \triangle\mathrm{ABC}$ とおく. 次のことを示せ. ただし, $x,$ $y,$ $z \geqq 0$ のとき $x+y+z \geqq 3\sqrt[3]{xyz}$ が成り立つことは, 証明なしに用いてよい.
(1)
$\tan A\tan B\tan C \!=\! \tan A\!+\!\tan B\!+\!\tan C$ が成り立つ.
(2)
$\triangle\mathrm{ABC}$ が鋭角三角形のとき, \[ (4S)^6 \!\geqq\! 27(b^2\!+\!c^2\!-\!a^2)^2\!(c^2\!+\!a^2\!-\!b^2)^2\!(a^2\!+\!b^2\!-\!c^2)^2\] が成り立つ.

解答例

(1)
$A+B+C = \pi$ であるから, 加法定理により \begin{align*} \tan C &= \tan (\pi -A-B) = -\tan (A+B) \\ &= -\frac{\tan A+\tan B}{1-\tan A\tan B} \end{align*} が成り立つ. 分母を払って整理すると, \begin{align*} (\tan A\tan B-1)\tan C &= \tan A+\tan B \\ \tan A\tan B\tan C &= \tan A+\tan B+\tan C \end{align*} が得られる.
(2)
$\triangle\mathrm{ABC}$ は鋭角三角形だから $A,$ $B,$ $C \neq \dfrac{\pi}{2}$ であることに注意すると, 余弦定理, 三角形の面積の公式により, \begin{align*} &(4S)^6 \!\geqq\! 27(b^2\!+\!c^2\!-\!a^2)^2\!(c^2\!+\!a^2\!-\!b^2)^2\!(a^2\!+\!b^2\!-\!c^2)^2 \\ &\iff \frac{4S^2}{b^2c^2}\frac{4S^2}{c^2a^2}\frac{4S^2}{a^2b^2} \\ &\quad \geqq 27\frac{(b^2\!+\!c^2\!-\!a^2)^2}{4b^2c^2}\frac{(c^2\!+\!a^2\!-\!b^2)^2}{4c^2a^2}\frac{(a^2\!+\!b^2\!-\!c^2)^2}{4a^2b^2} \\ &\iff \sin ^2A\sin ^2B\sin ^2C \geqq 27\cos ^2A\cos ^2B\cos ^2C \\ &\iff \tan ^2A\tan ^2B\tan ^2C \geqq 27 \quad \cdots [1] \end{align*} である. ここで, $\tan A,$ $\tan B,$ $\tan C > 0$ であることに注意すると, (1) の結果と相加・相乗平均の不等式により, \begin{align*} &\tan A+\tan B+\tan C \geqq 3\sqrt[3]{\tan A\tan B\tan C} \\ &\iff \tan A\tan B\tan C \geqq 3\sqrt[3]{\tan A\tan B\tan C} \\ &\iff \tan ^3A\tan ^3B\tan ^3C \geqq 27\tan A\tan B\tan C \\ &\iff [1] \end{align*} が成り立つから, 求める不等式が得られる.

背景

 (2) の結果は「オノの不等式」(Ono's inequality)として知られている. 鈍角三角形については成り立たない.

問題≪すべての角の正接が整数であるような三角形≫

 $\triangle\mathrm{ABC}$ において, $A = \angle\mathrm A,$ $B = \angle\mathrm B,$ $C = \angle\mathrm C$ とおく. $\tan A,$ $\tan B,$ $\tan C$ がすべて整数であるとき, それらの値を求めよ.
[1984 一橋大]

解答例

 $\triangle\mathrm{ABC}$ において, $\tan A,$ $\tan B,$ $\tan C$ が整数であるとする. また, $A \leqq B \leqq C$ であるとする. このとき, \[ 3A \leqq A+B+C = \pi\] から, $0 < A \leqq \dfrac{\pi}{3}$ である. よって, \[ 0 < \tan A \leqq \sqrt 3\] であり, $\tan A$ は整数だから, \[\tan A = 1\] である. また, $A = \pi -(B+C)$ から, \[ 1 = -\tan (B+C) = -\frac{\tan B+\tan C}{1-\tan B\tan C}\] が成り立つ. よって, \begin{align*} \tan B\tan C-\tan B-\tan C-1 &= 0 \\ (\tan B-1)(\tan C-1) &= 2 \end{align*} となる. $\tan B,$ $\tan C$ が整数であること, $\dfrac{\pi}{4} = A \leqq B \leqq C$ から $B,$ $C$ は鋭角であって $\tan B \leqq \tan C$ であることに注意すると, \[\tan B = 2, \quad \tan C = 3\] である. $A \leqq B \leqq C$ という条件を忘れると, 求める値は \[\{\tan A,\ \tan B,\ \tan C\} = \{ 1,\ 2,\ 3\}\] である.