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真の理解のためのシンプルな数学のノート

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等差数列

等差数列

定義≪等差数列≫

 隣り合う $2$ 項の差が一定である, すなわちある定数 $d$ について
$a_{n+1}-a_n = d$ つまり $a_{n+1} = a_n+d$
を満たす数列 $\{ a_n\}$ を等差数列(arithmetic sequence, progression)と呼び, $d$ をその公差(common difference)と呼ぶ.

定理≪等差数列の一般項≫

 初項 $a,$ 公差 $d$ の等差数列 $\{ a_n\}$ の一般項は \[ a_n = a+(n-1)d\] である.

問題≪等差素数列の性質≫

(A)
公差が正であり, 各項が素数であるような項数 $n$ の等差数列の初項 $p$ は $n$ 以上であることを示せ.
(B)
公差が $0$ でなく, 各項が素数であるような等差数列の項数は有限であることを示せ.

解答例

(A)
公差を $d$ とおくと, $p+pd = p(1+d)$ は素数でないから, \[ p+(n-1)d < p+pd\] が成り立つ. よって, $n-1 < p$ つまり $p \geqq n$ が成り立つ.
(B)
(i)
初項が $p (\geqq 2),$ 公差 $d (> 0),$ 項数が無限の等差数列において, $n-1$ が $p$ の倍数となるような番号 $n$ について \[ p+(n-1)d = p\left( 1+\frac{n-1}{p}\right)\] は合成数である.
(ii)
公差が負のとき, 項数が無限の等差数列は負の数を含むから, 題意の等差数列の項数は有限である.
(i), (ii) から, 題意が示された.

背景

 各項が相異なる素数であるような, 項数 $2$ 以上の等差数列を「等差素数列」(prime arithmetic progression)と呼ぶ.

定理≪等差中項≫

 $3$ 数 $a,$ $b,$ $c$ がこの順に等差数列をなすとき, \[ 2b = a+c\] が成り立つ.

問題≪公差 $2$ の等差素数列≫

 各項が素数であるような公差 $2,$ 項数 $3$ 以上の等差数列は $(3,5,7)$ に限ることを示せ. ただし, 項数が有限の数列は, $(3,5,7)$ のように, 初項から末項まで順に列記したものをかっこ $(\ )$ でくくって表すものとする.
[2004 早稲田大*]

解答例

 各項が素数であるような公差 $2$ の等差数列において, 連続する $3$ 項は, ある整数 $p$ を用いて $p,$ $p+2,$ $p+4$ の形に表される素数である.
(i)
$p$ が $3$ の倍数のとき, $p$ と $3$ は素数であるから, $p = 3$ となる. このとき, $p+2 = 5$ と $p+4 = 7$ も素数である.
(ii)
$p$ を $3$ で割った余りが $1$ であるとき, $p+2$ は $3$ の倍数であり, $p+2$ と $3$ は素数であるから, $p+2 = 3$ となる. このとき, $p = 1$ である. これは, $p$ が素数であることに反する.
(iii)
$p$ を $3$ で割った余りが $2$ であるとき, $p+4$ は $3$ の倍数であり, $p+4$ と $3$ は素数であるから, $p+4 = 3$ となる. このとき, $p = -1$ である. これは, $p$ が素数であることに反する.
(i)~(iii)から, $p = 3$ の場合にのみ条件が成り立つ.
 ゆえに, 題意を満たす等差数列は, 連続する $3$ 項が $3,$ $5,$ $7$ に一致することから, 項数 $3$ の数列 $(3,5,7)$ に限る.

別解

 各項が素数であるような公差 $2$ の等差数列において, 連続する $3$ 項は, ある整数 $p$ を用いて $p-2,$ $p,$ $p+2$ の形に表される素数である. \begin{align*} (p-2)p(p+2) &= p^3-4p = (p^3-p)-3p \\ &= (p-1)p(p+1)-3p \end{align*} であり, 連続 $3$ 整数の積 $(p-1)p(p+1)$ は $3$ で割り切れるから, $(p-2)p(p+2)$ は $3$ で割り切れる. このことと $p-2,$ $p,$ $p+2$ と $3$ は素数であることから, $p-2 = 3,$ $p = 3,$ $p+2 = 3$ のいずれかが成り立つ.
(i)
$p-2 = 3$ つまり $p = 5$ のとき, $p$ と $p+2 = 7$ も素数である.
(ii)
$p = 3$ のとき, $p-2 = 1$ は素数でない. これは, $p-2$ が素数であることに反する.
(iii)
$p+2 = 3$ のとき, $p = 1$ は素数でない. これは, $p$ が素数であることに反する.
よって, $p = 5$ の場合にのみ条件が成り立つ.
 ゆえに, 題意を満たす等差数列は, 連続する $3$ 項が $3,$ $5,$ $7$ に一致することから, 項数 $3$ の数列 $(3,5,7)$ に限る.

背景

  • 前問で示したように,「等差素数列」の項数は有限である. 一方で, 各正の整数 $n$ に対して, 項数 $n$ の「等差素数列」が存在するという「グリーン=タオの定理」(Green–Tao theorem)が証明されている($2004$ 年). この定理の証明は構成的でないため, 具体的に項数の大きい「等差素数列」を見つけるのは難しい. 実際に「等差素数列」であると確認された数列の項数の世界記録は $26$ である($2010$ 年).
  • 公差が $1$ で項数が最大の「等差素数列」は, 明らかに $(2,3)$ である. 本問では, この次に非自明な, 公差が $2$ で項数が最大の「等差素数列」を決定した.
  • $(p,p+2)$ の形に表される $2$ 個の素数の組を「双子素数」(twin prime)と呼び, $(p,p+2,p+6)$ または $(p,p+4,p+6)$ の形に表される $3$ 個の素数の組を「三つ子素数」(prime triplet)と呼ぶ. $(p,p+2,p+4)$ の形の素数の組を「三つ子素数」と呼ばないのは, この形の素数の組が $(3,5,7)$ に限るからである.「双子素数」と「三つ子素数」が無限に存在するかどうかは未解決である($2019$ 年 $3$ 月現在).
  • 問題≪$3$ 辺の長さが等差数列をなす直角三角形≫

     $3$ 辺の長さが等差数列をなすような直角三角形の $3$ 辺の長さの比を求めよ.

    解答例

     題意の直角三角形の辺の長さを $a-d,$ $a,$ $a+d\ (a > d > 0)$ とおく. このとき, 三平方の定理により \begin{align*} (a-d)^2+a^2 &= (a+d)^2 \\ a^2-2ad+d^2+a^2 &= a^2+2ad+d^2 \\ a^2 &= 4ad \end{align*} が成り立つから, 両辺を $a(> 0)$ で割ると \[ a = 4d\] となる. ゆえに, 題意の直角三角形の $3$ 辺の長さの比は \[ (a-d):a:(a+d) = 3d:4d:5d = 3:4:5\] である.