COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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微分法の公式(数学 III)

微分係数・導関数

問題≪コーシーの関数方程式≫

(A)
実数全体で定義された実数値関数 $f(x)$ が, すべての実数 $x_1,$ $x_2$ に対して \[ f(x_1+x_2) = f(x_1)+f(x_2) \quad \cdots [*]\] を満たすとする.
(1)
$f(0)$ の値を求めよ.
(2)
すべての実数 $x$ に対して $f(-x) = -f(x)$ が成り立つことを示せ.
(3)
$f(x)$ が $x = 0$ で微分可能で $f'(0) = a$ ($a$ は定数)であるとき, $f(x)$ は実数全体で微分可能であることを示し, $f(x)$ の導関数 $f'(x)$ を求めよ.
(B)
すべての実数 $x_1,$ $x_2,$ $x$ に対して \[ g(x_1+x_2) = g(x_1)g(x_2),\] $g(x) > 0$ を満たし, $g'(0) = 1$ であるような実数値関数 $g(x)$ (定義域は実数全体)について, $g'(x) = g(x)$ が成り立つことを示せ.
(C)
すべての正の数 $X_1,$ $X_2$ に対して \[ h(X_1X_2) = h(X_1)+h(X_2)\] を満たし, $h'(1) = 1$ であるような実数値関数 $h(X)$ (定義域は $X > 0$)について, $h(X)$ の導関数 $h'(X)$ を求めよ.

解答例

(A)
(1)
$[*]$ において $x_1 = x_2 = 0$ を代入すると $f(0) = f(0)+f(0)$ となるから, $f(0) = 0$ である.
(2)
$[*]$ において $x_1 = x,$ $x_2 = -x$ を代入すると $f(0) = f(x)+f(-x)$ となるから, $f(-x) = -f(x)$ が成り立つ.
(3)
実数 $x,$ $h\ (h \neq 0)$ に対して $f(x+h) = f(x)+f(h)$ であるから, \begin{align*} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} &= \frac{f(h)}{h} = \frac{f(0+h)-f(0)}{h} \\ &\to f'(0) = a \quad (h \to 0) \end{align*} が成り立つ. よって, $f(x)$ は実数全体で微分可能であり, $f'(x) = a$ である.
(B)
$g(0) = g(0)g(0),$ $g(x) > 0$ であるから, $g(0) = 1$ である. 仮定から, 関数 $f(x) = \log g(x)$ は, すべての実数 $x_1,$ $x_2$ に対して \begin{align*} f(x_1+x_2) &= \log g(x_1+x_2) = \log g(x_1)g(x_2) \\ &= \log g(x_1)+\log g(x_2) = f(x_1)+f(x_2) \end{align*} を満たす. さらに, 合成関数の微分法により, \[ f'(0) = \dfrac{g'(0)}{g(0)} = \dfrac{1}{1} = 1\] である. よって, (A) の結果から $f'(x) = 1$ であるので,
$\dfrac{g'(x)}{g(x)} = 1$ つまり $g'(x) = g(x)$
が成り立つ.
(C)
$h(1) = h(1)+h(1)$ であるから, $h(1) = 0$ である. 仮定から, 関数 $f(x) = h(e^x)$ は, すべての実数 $x_1,$ $x_2$ に対して \begin{align*} f(x_1+x_2) &= h(e^{x_1+x_2}) = h(e^{x_1}e^{x_2}) \\ &= h(e^{x_1})+h(e^{x_2}) = f(x_1)+f(x_2) \end{align*} を満たす. さらに, 合成関数の微分法により, \[ f'(0) = h'(e^0)e^0 = h'(1) = 1\] である. よって, (A) の結果から $f'(x) = 1$ であり,
$h'(e^x)\cdot e^x = 1$ つまり $h'(e^x) = \dfrac{1}{e^x}$
が成り立つので, $h'(X) = \dfrac{1}{X}$ である.

背景

  • $[*]$ のように, 関数を解とする方程式を「関数方程式」(functional equation)と呼ぶ.
  • $[*]$ は「コーシーの関数方程式」(Cauchy's functional equation)と呼ばれる. 関数 $f(x) = ax$ はこの方程式と, $1$ 点 $x = x_0$ における微分係数 $f'(x_0) = a$ によって定まる. $1$ 点 $x = x_0$ における微分可能性から実数全体における微分可能性が導かれることに注意されたい.
  • $g'(x) = g(x),g(0) = 1$ の解は $g(x) = e^x$ である(こちらを参照). 指数関数 $g(x) = e^x$ は, 指数法則 \[ g(x_1+x_2) = g(x_1)g(x_2)\] と $g(0) = 1$ によって定まる関数であると言える.
  • 対数関数 $h(X) = \log X$ は, 対数法則 \[ h(X_1X_2) = h(X_1)+h(X_2)\] と $h(1) = 0$ によって定まる関数であると言える.

微分法の公式

定理≪積の微分の公式≫

 $x = a$ で微分可能な関数 $f(x),$ $g(x)$ に対して, \[\left.\{ f(x)g(x)\}'\right| _{x=a} = f'(a)g(a)+f(a)g'(a)\] が成り立つ.

問題≪多項式の重根判定法≫

 実数を係数とする多項式 $f(x),$ 実数 $\alpha$ について,
(1)
$f(x)$ の導関数を考えることにより, $\alpha,$ $f(\alpha ),$ $f'(\alpha )$ を用いて $f(x)$ を $(x-\alpha )^2$ で割ったときの余りを表せ.
(2)
$f(x)$ が $(x-\alpha )^2$ で割り切れるための必要十分条件は, $f(\alpha ) = f'(\alpha ) = 0$ であることを示せ.
[早稲田大*]

解答例

(1)
$f(x)$ を $(x-\alpha )^2$ で割ったときの商を $q(x),$ 余りを $ax+b$ ($a,$ $b$: 定数)とおく. このとき, \[ f(x) = (x-\alpha )^2q(x)+ax+b \quad \cdots [1]\] が成り立つ. 両辺を $x$ で微分すると \[ f'(x) = 2(x-\alpha )q(x)+(x-\alpha )^2q'(x)+a \quad \cdots [2]\] となる. $[1],$ $[2]$ に $x = \alpha$ を代入すると, \[ f(\alpha ) = a\alpha +b, \quad f'(\alpha ) = a\] となり, $b = f(\alpha )-a\alpha = f(\alpha )-\alpha f'(\alpha )$ となる.
ゆえに, 求める余りは, $xf'(\alpha )+f(\alpha )-\alpha f'(\alpha )$ である.
(2)
(1) の結果から, \begin{align*} &f(x)\text{ が }(x-\alpha )^2\text{ で割り切れる} \\ &\iff xf'(\alpha )+f(\alpha )-\alpha f'(\alpha ) = 0 \\ &\iff f'(\alpha ) = f(\alpha )-\alpha f'(\alpha ) = 0 \\ &\iff f(\alpha ) = f'(\alpha ) = 0 \end{align*} が成り立つ.

背景

  • 一般に, 実数を係数とする多項式 $f(x)$ が $(x-\alpha )^m$ で割り切れるための必要十分条件は, \[ f(\alpha ) = \cdots = f^{(m-1)}(\alpha ) = 0\] であることが知られている.
  • 係数が有理数であるときにも, 多項式を関数として微分するには実数の範囲で極限の概念を使わなければならないが, その公式 \[\left(\sum_{k = 0}^na_kx^k\right) ' = \sum_{k = 1}^nka_kx^{k-1}\] を「導多項式」(derivative of polynomial)と呼ばれる多項式の「形式的」な微分の定義として採用すれば, 極限の概念の使用を避けて上記のような議論ができることが知られている. また, 複素数に対しても,「導多項式」を使った議論から, 上記の判定法が証明できる.

問題≪微分積分学におけるシュタイナーの問題≫

(1)
関数 $y = x^{\frac{1}{x}}\ (x > 0)$ の最大値を求めよ.
(2)
$m^n = n^m,$ $0 < m < n$ の整数解をすべて求めよ.

解答例

(1)
$y > 0$ に注意して両辺の対数をとると, \[\log y = \frac{1}{x}\log x\] となる. 両辺を $x$ で微分すると \[\frac{y'}{y} = -\frac{1}{x^2}\cdot\log x+\frac{1}{x}\cdot\frac{1}{x} = \frac{1-\log x}{x^2}\] となるから, \[ y' = y\cdot\frac{1-\log x}{x^2} = x^{\frac{1}{x}-2}(1-\log x)\] である. $x^{\frac{1}{x}-2} > 0$ から \[ y' \geqq 0 \iff 1-\log x \geqq 0 \iff 0 < x \leqq e\] であるので, $y$ は $x = e$ で極大かつ最大の値 $e^{\frac{1}{e}}$ をとる.
(2)
整数 $m,$ $n$ が $m^n = n^m,$ $0 < m < n$ を満たすとする.
両辺を $\dfrac{1}{mn}$ 乗すると, 第 $1$ 式は $m^{\frac{1}{m}} = n^{\frac{1}{n}}$ と変形できる.
よって, (1) で調べた関数 $y = x^{\frac{1}{x}}$ の増減と $2 < e < 3$ から, $m = 1,$ $2$ が必要である.
$1^n = n^1$ の解は $n = 1$ に限るから, $m = 1$ は不適である.
したがって, $x^{\frac{1}{x}} = 2^{\frac{1}{2}}$ の正の整数解 $x \neq 2$ を求めればよい.
曲線 $y = x^{\frac{1}{x}}$ と直線 $y = 2^{\frac{1}{2}}$ はちょうど $2$ 点で交わるから, $x^{\frac{1}{x}} = 2^{\frac{1}{2}}$ つまり $2^x = x^2$ は $x = 2$ 以外にただ $1$ つの実数解を持つ.
一方, $2^4 = 4^2 = 16$ であるから, それは $x = 4$ である.
ゆえに, 求める整数解は $(m,n) = (2,4)$ である.

背景

 (1) の問題は「微分積分学におけるシュタイナーの問題」(Steiner's calculus problem)として知られている.