COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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指数関数

指数法則

定義≪累乗根≫

(1)
正の整数 $n,$ 実数 $a$ に対して, $x^n = a$ の複素数解, つまり $n$ 乗すると $a$ になる複素数を $a$ の $n$ 乗根($n$-th root)と呼ぶ. $2$ 乗根, $3$ 乗根, $\cdots,$ をまとめて累乗根(radical root)と呼ぶ.
(2)
正の整数 $n,$ 正の数 $a$ に対して, $x^n = a$ を満たす正の数 $x$ がただ $1$ つ存在する. その正の数を $\sqrt[n]{a}$ で表す.

定理≪指数法則≫

 正の数 $a,$ $b$ と実数 $p,$ $q$ に対して
(1)
$a^pa^q = a^{p+q},$ $\dfrac{a^p}{a^q} = a^{p-q}$
(2)
$(a^p)^q = a^{pq}$ 
(3)
$(ab)^p = a^pb^p,$ $\left(\dfrac{a}{b}\right) ^p = \dfrac{a^p}{b^p}$
が成り立つ.

問題≪シュタイナーの問題に関する累乗根の比較≫

 $\sqrt 2,$ $\sqrt[3]{3},$ $\sqrt[6]{6}$ の大小を比較せよ.

解答例

\begin{align*} (\sqrt 2)^6 &= (2^{\frac{1}{2}})^6 = (2^{\frac{3}{6}})^6 = 2^3 = 8, \\ (\sqrt[3]{3})^6 &= (3^{\frac{1}{3}})^6 = (3^{\frac{2}{6}})^6 = 3^2 = 9, \\ (\sqrt[6]{6})^6 &= 6 \end{align*} であり, $6 < 8 < 9$ であるから, \[\sqrt[6]{6} < \sqrt 2 < \sqrt[3]{3}\] である.

背景

 関数 $y = x^{\frac{1}{x}}\ (x > 0)$ の最大値を求める問題は「シュタイナーの問題」(Steiner's problem)と呼ばれる(こちらを参照.). この関数は自然対数の底 $e = 2.718\cdots$ (数学 III)において最大値をとることが知られている. $2$ と $3$ の間でこの関数の増加と減少が入れ替わっていることが, 本問の結果からも推測できる.

問題≪$2^{\sqrt 2}$ の無理性にまつわる問題≫

 $2^{\sqrt 2},$ $2^{\sqrt 2}\sqrt 2$ の少なくとも一方は無理数であることを示せ.
[2007 佐賀大*]

解答例

 $0$ でない実数 $a$ に対して, $a$ が有理数であるならば $a^{-1}$ は有理数であるから, $a^{-1}$ が無理数であるならば $(a^{-1})^{-1} = a$ は無理数である. よって, $a = 2^{-\sqrt 2},$ $b = 2^{\sqrt 2}\sqrt 2$ の少なくとも一方が無理数であることを示せばよい. \[ ab = 2^{-\sqrt 2}2^{\sqrt 2+\frac{1}{2}} = 2^{-\sqrt 2+(\sqrt 2+\frac{1}{2})} = 2^{\frac{1}{2}} = \sqrt 2\] は無理数であるから, $a,$ $b$ の両方が有理数ということはあり得ない. ゆえに, $a,$ $b$ の少なくとも一方は無理数である.

背景

  • $2^{\sqrt 2}$ のような数が無理数であるかどうかは, 長い間未解決であった. 1934 年にゲルフォント(A. Gel'fond)とシュナイダー(T. Schneider)は次の定理を独立に証明し, その帰結として $2^{\sqrt 2}$ や $\sqrt 2^{\sqrt 2}$ といった実数が無理数であることを示した: $0$ でも $1$ でもない「代数的数」$\alpha$ と, 有理数でない「代数的数」$\beta$ に対して, $\alpha ^\beta$ は「超越数」である. ただし, ある有理数係数多項式 $f(x)$ について $f(x) = 0$ の解として表される数を「代数的数」(algebraic number)と呼び, 代数的数でない実数を「超越数」(transcendence number)と呼ぶ. 「代数的数」の積は「代数的数」であるから, $2^{\sqrt 2}\sqrt 2$ もまた「超越数」であることが分かる. さらに, $(\sqrt 2^{\sqrt 2})^{\sqrt 2}$ は無理数の無理数乗として表される有理数の一例を与える.
  • ちなみに, 上記の定理を使わなくても, 無理数の無理数乗で表される有理数が存在することが, 次のような議論で分かる.
    (i)
    $a = \sqrt 2^{\sqrt 2}$ が有理数である場合(実際は偽). $\sqrt 2$ は無理数であるから, $a$ が求める有理数の一例を与える.
    (ii)
    $a$ が無理数である場合. \[ a^{\sqrt 2} = (\sqrt 2^{\sqrt 2})^{\sqrt 2} = (\sqrt 2)^{\sqrt 2\cdot\sqrt 2} = (\sqrt 2)^2 = 2\] が求める有理数の一例を与える.
    いずれにしても, 無理数の無理数乗で表される有理数が存在する.

問題≪双曲線関数の加法定理≫

 $e$ を正の数として, \[ f(x) = \dfrac{e^x+e^{-x}}{2}, \quad g(x) = \dfrac{e^x-e^{-x}}{2}\] と定める. このとき, すべての実数 $\alpha,$ $\beta$ に対して,
(1)
$f(\alpha +\beta ) = f(\alpha )f(\beta )+g(\alpha )g(\beta )$ 
(2)
$g(\alpha +\beta ) = g(\alpha )f(\beta )+f(\alpha )g(\beta )$ 
が成り立つことを示せ.

解答例

(1)
右辺を変形すると, \begin{align*} &f(\alpha )f(\beta )+g(\alpha )g(\beta ) \\ &= \frac{e^\alpha +e^{-\alpha}}{2}\cdot\frac{e^\beta +e^{-\beta}}{2}+\frac{e^\alpha -e^{-\alpha}}{2}\cdot\frac{e^\beta -e^{-\beta}}{2} \\ &= \frac{e^{\alpha +\beta}+e^{\alpha -\beta}+e^{-\alpha +\beta}+e^{-\alpha -\beta}}{4} \\ &\qquad +\frac{e^{\alpha +\beta}-e^{\alpha -\beta}-e^{-\alpha +\beta}+e^{-\alpha -\beta}}{4} \\ &= \frac{e^{\alpha +\beta}+e^{-\alpha -\beta}}{2} \\ &= f(\alpha +\beta ) \end{align*} となる.
(2)
右辺を変形すると, \begin{align*} &g(\alpha )f(\beta )+f(\alpha )g(\beta ) \\ &= \frac{e^\alpha -e^{-\alpha}}{2}\cdot\frac{e^\beta +e^{-\beta}}{2}+\frac{e^\alpha +e^{-\alpha}}{2}\cdot\frac{e^\beta -e^{-\beta}}{2} \\ &= \frac{e^{\alpha +\beta}+e^{\alpha -\beta}-e^{-\alpha +\beta}-e^{-\alpha -\beta}}{4} \\ &\qquad +\frac{e^{\alpha +\beta}-e^{\alpha -\beta}+e^{-\alpha +\beta}-e^{-\alpha -\beta}}{4} \\ &= \frac{e^{\alpha +\beta}-e^{-\alpha -\beta}}{2} \\ &= g(\alpha +\beta ) \end{align*} となる.

背景

  • $e$ が「自然対数の底」(数学 III)であるとき, 関数 $\cosh x = \dfrac{e^x+e^{-x}}{2},$ $\sinh x = \dfrac{e^x-e^{-x}}{2}$ はそれぞれ「双曲線余弦関数」,「双曲線正弦関数」と呼ばれ, 「双曲線正接関数」 $\tanh x = \dfrac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}$ とあわせて「双曲線関数」(hyperbolic function)と呼ばれる.
  • 三角関数が単位円周 $x^2+y^2 = 1$ を使って定義されるように,「双曲線関数」は双曲線 $x^2-y^2 = 1$ を使って定義され, 三角関数と「双曲線関数」はよく似た性質を持つことが知られている.

問題≪指数不等式と高度合成数≫

 次のことを示せ.
(1)
$1 < a \leqq b,$ $x \geqq y$ のとき, $a^xb^y \leqq a^yb^x$ が成り立つ.
(2)
正の整数 $x$ の正の約数の個数を $d(x)$ で表す. 正の整数 $n$ が, $n$ 未満のすべての正の約数 $m$ に対して $d(m) < d(n)$ を満たすとき, $n$ は \[ n = 2^{e_1}3^{e_2}\cdots p_r{}^{e_r}, \quad e_1 \geqq e_2 \geqq \cdots \geqq e_r\] ($p_r$: $r$ 番目の素数, $e_k$: 正の整数)の形に素因数分解される.

解答例

(1)
$1 < a \leqq b,$ $x-y \geqq 0$ であるから $a^{x-y} \leqq b^{x-y}$ が成り立つ. よって, 両辺に $a^yb^y$ を掛けると $a^xb^y \leqq a^yb^x$ が得られる.
(2)
$n$ の素因数分解が \[ n = q_1{}^{f_1}q_2{}^{f_2}\cdots q_r{}^{f_r}\] ($q_k$: 素数, $q_1 < q_2 < \cdots < q_r,$ $f_k$: 正の整数)であるとして, $f_1,$ $f_2,$ $\cdots,$ $f_r$ を大きい順に並び替えたものを $e_1,$ $e_2,$ $\cdots,$ $e_r$ とする. $n' = 2^{e_1}3^{e_2}\cdots p_r{}^{e_r}$ とおくと, \[ n' \leqq q_1{}^{e_1}q_2{}^{e_2}\cdots q_r{}^{e_r} \leqq n\] となる. 実際, $1 < a \leqq b,$ $x \geqq 0$ $\Longrightarrow$ $a^x \leqq b^x$ により左側の不等式が得られ, $e_k = f_1$ のとき, (1) を $a = q_1,$ $b = q_k,$ $x = e_1,$ $y = e_k$ に適用すると \[ q_1{}^{e_1}\cdots q_k{}^{e_k}\cdots q_r{}^{e_r} \leqq q_1{}^{f_1}\cdots q_k{}^{e_1}\cdots q_r{}^{e_r}\] となるから, この操作を続けると右側の不等式が得られる. さらに, 約数の和の公式により, \begin{align*} d(n') &= (e_1+1)(e_2+1)\cdots (e_r+1) \\ &= (f_1+1)(f_2+1)\cdots (f_r+1) = d(n) \end{align*} が成り立つ. よって, $n$ のとり方により, $n' < n$ となることはない. ゆえに, $n = n'$ であるから, $n$ は \[ n = 2^{e_1}3^{e_2}\cdots p_r{}^{e_r}, \quad e_1 \geqq e_2 \geqq \cdots \geqq e_r\] の形に素因数分解される.

背景

 (2) を満たす正の整数 $n$ を「高度合成数」(highly composite number)と呼ぶ. 「高度合成数」を小さい順に列挙すると $1,$ $2,$ $4,$ $6,$ $12,$ $24,$ $36,$ $48,$ $60,$ $120,$ $180,$ $240,$ $360,$ $\cdots$ となる. 約数が多いと便利なことが多いため, $1$ 日の時間数 $24,$ $1$ 時間の分数 $60,$ $1$ 周の角度 $360$ など,「高度合成数」の多くが度量衡に利用されている.