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真の理解のためのシンプルな数学のノート

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高次方程式

 本稿では,特に断りのない限り, 多項式の係数, 方程式の解は, ある共通の体(結合法則, 交換法則, 分配法則を満たす四則演算の定義された集合) $F$ において考察する. 例えば, $F$ が複素数全体の集合 $\mathbb C,$ 実数全体の集合 $\mathbb R,$ または有理数全体の集合 $\mathbb Q$ である場合を念頭に置いて考えれば良い.

理論

解の個数

定理≪$1$ 変数代数方程式の解の個数≫

 $n$ を正整数とする. 任意の $n$ 次多項式 $f(x)$ に対して, 方程式 $f(x) = 0$ の相異なる解の個数は $n$ 個以下である.

証明

 $\alpha _1,$ $\cdots,$ $\alpha _r$ を $f(x) = 0$ の相異なる解とする.
因数定理より, $f(x)$ は $x-\alpha _1,$ $\cdots,$ $x-\alpha _r$ で割り切れる.
よって, $f(x)$ は $(x-\alpha _1)\cdots (x-\alpha _r)$ で割り切れ, ある多項式 $q(x) \neq 0$ を用いて $$f(x) = (x-\alpha _1)\cdots (x-\alpha _r)q(x)$$ と書ける. ゆえに, 両辺の次数を比較すると, $$n = r+\deg q(x) \geqq r.$$

重解

 因数定理を踏まえて, 重解を次のように定義する.

定義≪重解(Multiple root)≫

 $\alpha$ を定数, $m$ を正整数とする. 多項式 $f(x)$ が $(x-\alpha )^m$ で割り切れ, $(x-\alpha )^{m+1}$ で割り切れないとき, $\alpha$ を方程式 $f(x) = 0$ の $m$ 重解(multiple root of degree $m$)と呼び, $m$ を解 $\alpha$ の重複度(multiplicity)と呼ぶ. $m = 1$ のとき $\alpha$ を単解(single root)と呼び, $m \geqq 2$ のとき $\alpha$ を単に重解(multiple root)と呼ぶ.

定理≪因数定理の一般化≫

 最高次の係数が $a$ の $n$ 次多項式 $f(x)$ と相異なる $r$ 個の定数 $\alpha _1,$ $\cdots,$ $\alpha _r$ に対して, 次の条件は同値である:
(i)
$f(x) = 0$ は $r$ 個の解 $\alpha _1,$ $\cdots,$ $\alpha _r$ を持ち, 各正整数 $1 \leqq i \leqq r$ に対して $\alpha _i$ の重複度は $m_i$ で, $$m_1+\cdots +m_r = n.$$
(ii)
$$f(x) = a(x-\alpha _1)^{m_1}\cdots (x-\alpha _r)^{m_r}.$$

証明

(i) $\Longrightarrow$ (ii): (i) を仮定する.
重解の定義より, 各正整数 $1 \leqq i \leqq r$ に対して, $f(x)$ は $(x-\alpha _i)^{m_i}$ で割り切れる.
$\alpha _1,$ $\cdots,$ $\alpha _r$ は相異なるから, $f(x)$ は $p(x) = (x-\alpha )^{m_1}\cdots (x-\alpha _r)^{m_r}$ で割り切れる.
$p(x)$ の次数は $m_1+\cdots +m_r = n$ だから, $f(x)$ を $p(x)$ で割った商 $q$ は定数である.
$f(x) = p(x)q$ において両辺の最高次の係数を比較すると, $q = a.$
(ii) $\Longrightarrow$ (i): 明らか.

共役な解

定義≪最小多項式(Minimum polynomial)≫

 $\alpha$ を定数とする. $f(\alpha ) = 0$ を満たす最高次の係数が $1$ である次数最小の $F$ 係数多項式 $f(x)$ を $\alpha$ の $F$ 上の最小多項式(minimum polynomial)と呼ぶ.

例≪最小多項式≫

(o)
$\alpha \in F$ であるならば, $\alpha$ の $F$ 上の最小多項式は $x-\alpha$ である.
(a)
$a,$ $b$ を $b \neq 0$ なる実数, $i$ を虚数単位とする. $\alpha = a+bi$ の $\mathbb R$ 上の最小多項式は $f(x) = x^2-2ax+a^2+b^2$ である. $f(\alpha ) = 0$ であり, 実数係数 $1$ 次方程式 $x-c = 0$ は虚数 $\alpha$ を解に持たないからである.
(b)
$a,$ $b$ を $b \neq 0$ なる有理数, $n$ を平方数でない整数とする. $\alpha = a+b\sqrt n$ の $\mathbb Q$ 上の最小多項式は $f(x) = x^2-2ax+a^2-nb^2$ である. $f(\alpha ) = 0$ であり, 有理数係数 $1$ 次方程式 $x-c = 0$ は無理数 $\alpha$ を解に持たないからである.
(c)
$\sqrt[3]{2}$ の $\mathbb Q$ 上の最小多項式は $x^3-2$ である. 証明は, こちらの問題を参照.

定義≪共役(Congruence)≫

 $\alpha,$ $\beta$ を定数とする. $\alpha,$ $\beta$ の $F$ 上の最小多項式が一致するとき, $\alpha,$ $\beta$ は $F$ 上共役(congruent)であるという.

例≪共役≫

(a)
$a,$ $b$ を $b \neq 0$ なる実数とするとき, $a+bi,$ $a-bi$ は $\mathbb R$ 上共役である. 実際, $a\pm bi$ の $\mathbb R$ 上の最小多項式は $x^2-2ax+a^2+b^2$ である.
(b)
$a,$ $b$ を $b \neq 0$ なる有理数, $n$ を平方数でない整数とするとき, $a+b\sqrt n,$ $a-b\sqrt n$ は $\mathbb Q$ 上共役である. 実際, $a\pm b\sqrt n$ の $\mathbb Q$ 上の最小多項式は $x^2-2ax+a^2-nb^2$ である.
(c)
$\omega$ を $\omega \neq 1$ なる $1$ の $3$ 乗根とする. $\sqrt[3]{2},$ $\sqrt[3]{2}\omega,$ $\sqrt[3]{2}\omega ^2$ は $\mathbb Q$ 上共役である. 実際, $\sqrt[3]{2}\omega ^k\ (k \in \{ 0,\ 1,\ 2\})$ の最小多項式は $x^3-2$ である.

定理≪共役な解≫

 定数 $\alpha,$ $\beta$ が $F$ 上共役であるならば, 任意の $F$ 係数多項式 $f(x)$ に対して, \[ f(\alpha ) = 0 \iff f(\beta ) = 0.\]

証明

 $\alpha,$ $\beta$ の $F$ 上の最小多項式を $p(x)$ とおくと, その定義から
$f(\alpha ) = 0$
$\iff$ $p(x)$ は $f(x)$ を割り切る
$\iff$ $f(\beta ) = 0.$

例≪共役な解≫

(a)
$b \neq 0$ なる任意の実数 $a,$ $b$ と実数係数多項式 $f(x)$ に対して, \[ f(a+bi) = 0 \iff f(a-bi) = 0.\]
(b)
$b \neq 0$ なる任意の有理数 $a,$ $b,$ 平方数でない整数 $n$ と有理数係数多項式 $f(x)$ に対して, \[ f(a+b\sqrt n) = 0 \iff f(a-b\sqrt n) = 0.\]
(c)
任意の有理数係数多項式 $f(x)$ に対して, \[ f(\sqrt[3]{2}) = 0 \iff f(\sqrt[3]{2}\omega ) = 0 \iff f(\sqrt[3]{2}\omega ^2) = 0.\]

問題

因数定理の応用

問題≪高次方程式≫

 次の方程式を解け:
(a)
$x^3-8x^2+37x-50 = 0.$ 
(b)
$x^4-2x^3+x^2+2x-2 = 0.$ 

解答例

(a)
$f(x) = x^3-8x^2+37x-50$ とおくと, $$f(2) = 0$$ より, $f(x)$ は $x-2$ で割り切れる. $$\begin{array}{rrrrrr} {} & 1 & -8 & 37 & -50 & |\!\underline{\ 2\ } \\ +) & {} & 2 & -12 & 50 & {} \\ \hline {} & 1 & -6 & 25 & |\!\underline{\ 0\ } & {} \end{array}$$ 上記の計算より, $$f(x) = (x-2)(x^2-6x+25).$$ よって, $f(x) = 0$ より,
$x-2 = 0$ または $x^2-6x+25 = 0.$
$\therefore x = 2$ または $3\pm 4\mathrm i.$
(b)
$f(x) = x^4-2x^3+x^2+2x-2$ とおくと, $$f(1) = 0$$ より, $f(x)$ は $x-1$ で割り切れる. $$\begin{array}{rrrrrrr} {} & 1 & -2 & 1 & 2 & -2 & |\!\underline{\ 1\ } \\ +) & {} & 1 & -1 & 0 & 2 & {} \\ \hline {} & 1 & -1 & 0 & 2 & |\!\underline{\ 0\ } & {} \end{array}$$ 上記の計算より, $$f(x) = (x-1)(x^3-x^2+2).$$ さらに, $g(x) = x^3-x^2+2$ とおくと, $$g(-1) = 0$$ より, $g(x)$ は $x+1$ で割り切れる. $$\begin{array}{rrrrrr} {} & 1 & -1 & 0 & 2 & |\!\underline{\ -1\ } \\ +) & {} & -1 & 2 & -2 & {} \\ \hline {} & 1 & -2 & 2 & |\!\underline{\ 0\ } & {} \end{array}$$ 上記の計算より, \begin{align*} g(x) &= (x+1)(x^2-2x+2). \\ \therefore f(x) &= (x-1)(x+1)(x^2-2x+2). \end{align*} よって, $f(x) = 0$ より,
$x-1 = 0$ または $x+1 = 0$ または $x^2-2x+2 = 0.$
$\therefore x = \pm 1$ または $1\pm\mathrm i.$

問題≪特殊な高次方程式≫

 方程式 $(x+1)x(x-1) = 3!$ を解け.

解答例

\[ 3\cdot 2\cdot 1 = 3!\] から, 方程式は $x = 2$ を解に持つ. 方程式を変形すると, \[ x^3-x-6 = 0.\] 左辺を $x-2$ で割ると, \[ x^2+2x+3 = 0.\] これを解くと, \[ x = -1\pm\sqrt 2i.\] ゆえに, 求める解は, $x = 2,$ $-1\pm\sqrt 2i.$

問題≪立方数の判定法≫

 定数 $a,$ $b$ について, 次が成り立つことを示せ.
$a = b^3$ $\iff$ $x^3-a$ は $x-b$ で割り切れる.

解答例

 $x^3-a$ を $x-b$ で割った余りは $b^3-a.$ \[\begin{array}{rrrrlr} {} & 1 & 0 & 0 & -a & |\!\underline{\ b\ } \\ +) & {} & b & b^2 & b^3 & {} \\ \hline {} & 1 & b & b^2 & |\!\underline{\ b^3-a\ } & {} \end{array}\] よって,
$a = b^3$ $\iff$ $b^3-a = 0$ $\iff$ $x^3-a$ は $x-b$ で割り切れる.

問題≪$3$ 次方程式の解の公式に関する立方根の和≫

 $\sqrt[3]{2+\sqrt 5}+\sqrt[3]{2-\sqrt 5}$ は整数である. その値を求めよ.

解答例

 $\alpha = \sqrt[3]{2+\sqrt 5},$ $\beta = \sqrt[3]{2-\sqrt 5}$ とおく. このとき, \begin{align*} &\alpha ^3+\beta ^3 = (2+\sqrt 5)+(2-\sqrt 5) = 4, \\ &\alpha\beta = \sqrt[3]{(2+\sqrt 5)(2-\sqrt 5)} = \sqrt[3]{2^2-5} = \sqrt[3]{-1} = -1, \\ \end{align*} $(\alpha +\beta )^3-3\alpha\beta (\alpha +\beta ) = \alpha ^3+\beta ^3$ にこれらの値を代入すると, \[ (\alpha +\beta )^3+3(\alpha +\beta ) = 4.\] よって, $\alpha +\beta$ は \[ x^3+3x-4 = 0 \quad \cdots [1]\] の解である. $1^3+3\cdot 1-4 = 0$ だから, $x^3+3x+4$ は $x-1$ で割り切れる. よって, 割り算の結果から $[1]$ は \[ (x-1)(x^2+x+4) = 0\] と同値であり, $\alpha +\beta$ はこの実数解である. $x^2+x+4 = 0$ は虚数解しか持たないから, 求める値は $1.$

問題≪最大公約多項式の決定≫

 次の多項式が共通の $2$ 次多項式で割り切れるとき, 定数 $a,$ $b$ の値とその $2$ 次多項式を求めよ. \begin{align*} f(x) &= x^3+ax^2+20x+b, \\ g(x) &= x^3-5x^2+8x-4. \end{align*}

解答例

\begin{align*} g(1) &= 1-5+8-4 = 0, \\ g(2) &= 8-20+16-4 = 0 \end{align*} より, $g(x)$ は $x-1,$ $x-2$ で割り切れる. \[\begin{array}{rrrrrr} {} & 1 & -5 & 8 & -4 & |\!\underline{\ 1\ } \\ +) & {} & 1 & -4 & 4 & {} \\ \hline {} & 1 & -4 & 4 & |\!\underline{\ 0\ } & |\!\underline{\ 2\ } \\ +) & {} & 2 & -4 & {} & {} \\ \hline {} & 1 & -2 & |\!\underline{\ 0\ } & {} & {} \end{array}\] 上記の計算より, \[ g(x) = (x-1)(x-2)^2.\] よって, 条件より, $f(x)$ は $(x-1)(x-2)$ または $(x-2)^2$ で割り切れる.
(i)
$f(x)$ が $(x-1)(x-2)$ で割り切れるとき. $f(1) = f(2) = 0$ より, \[ a+b+21 = 4a+b+48 = 0\] だから, \[ a = -9, \quad b = -12.\]
(ii)
$f(x)$ が $(x-2)^2$ で割り切れるとき. $f(x)$ は $x-2$ で割り切れ, その商も $x-2$ で割り切れる. 割り算の結果より, \[ 4a+b+48 = 0, \quad 4a+32 = 0\] だから, \[ a = -8, \quad b = -16.\]
(i), (ii) より, $f(x),$ $g(x)$ は, $(a,\ b) = (-9,\ -12)$ のとき $(x-1)(x-2)$ で割り切れ, $(a,\ b) = (-8,\ -16)$ のとき $(x-2)^2$ で割り切れる.

問題≪公約多項式であるための必要条件≫

 $f(x) = x^3+ax^2+bx+c$ と $g(x) = x^3+bx^2+ax+c$ が $1$ 次以上の共通の多項式で割り切れるとき, 定数 $a,$ $b,$ $c$ はどのような関係にあるか.

解答例

\[ f(x)-g(x) = (a-b)x^2+(b-a)x = (a-b)x(x-1)\] よって, $f(x),$ $g(x)$ を割り切る可能性のある多項式は, $x,$ $x-1$ と $a = b$ のときの $f(x),$ $g(x)$ 自身に限る.
(i)
$x$ が $f(x),$ $g(x)$ を割り切るとき, $f(0) = g(0) = 0$ より, $c = 0.$
(ii)
$x-1$ が $f(x),$ $g(x)$ を割り切るとき, $f(1) = g(1) = 0$ より, $a+b+c+1 = 0.$
ゆえに, 求める条件は, $a = b$ または $c = 0$ または $a+b+c+1 = 0.$

解の個数

問題≪$3$ 次方程式の重解≫

 $3$ 次方程式 $x^3+ax^2-4b = 0$ が $2$ 重解を持ち, $2$ を解とするとき, 定数 $a,$ $b$ の値を求めよ.

解答例

 $f(x) = x^3+ax^2-4b$ とおく.
$f(2) = 0$ より, \begin{align*} 8+4a-4b &= 0. \\ \therefore b &= a+2. \end{align*} このとき, \begin{align*} f(x) &= x^3+ax^2-4a-8 \\ &= a(x^2-4)+(x^3-8) \\ &= a(x-2)(x+2)+(x-2)(x^2+2x+4) \\ &= (x-2)(x^2+(a+2)x+(2a+4)). \end{align*} $g(x) = x^2+(a+2)x+(2a+4)$ とおく.
(i)
$g(x) = 0$ の解の一方が $x = 2$ のとき, $g(2) = 0$ より, \begin{align*} 4a+12 &= 0. \\ \therefore a &= -3. \end{align*} このとき, $g(x) = 0$ の解の他方は, 解と係数の関係より $$x = -(a+2)-2 = 1$$ で, $x \neq 2$ を満たす.
(ii)
$g(x) = 0$ が重解を持つとき, その判別式 $$(a+2)^2-4\cdot 1\cdot (2a+4) = (a+2)(a-6)$$ は $0$ だから,
$a = -2$ または $6.$
このとき, $g(x) = 0$ の重解は
$x = -\dfrac{a+2}{2\cdot 1} = 0$ または $4$
で, $x \neq 2$ を満たす.
ゆえに, 求める定数の値は,
$(a,\ b) = (-3,\ 1)$ または $(-2,\ 0)$ または $(6,\ 8).$

共役な解

問題≪$\sqrt 2$ と $-\sqrt 2$ の共役性≫

 次が成り立つことを示せ.
(1)
任意の有理数 $a,$ $b$ に対して, \[ a+b\sqrt 2 = 0 \iff a = b = 0.\]
(2)
任意の有理数係数多項式 $f(x)$ に対して, \[ f(\sqrt 2) = 0 \iff f(-\sqrt 2) = 0.\]

解答例

(1)
$a = b = 0$ $\Longrightarrow$ $a+b\sqrt 2 = 0$ は明らか.
逆に, $a+b\sqrt 2 = 0$ を仮定する.
仮に $b \neq 0$ であるとすると, \[\sqrt 2 = -\frac{a}{b}\] となり, $\sqrt 2$ が無理数であることに反する.
よって, $b = 0.$ このとき, $a = 0.$
ゆえに, $a+b\sqrt 2 = 0$ $\Longrightarrow$ $a = b = 0.$
(2)
$f(x) = a_{2m-1}x^{2m-1}+\cdots +a_1x+a_0$ であるとし, \begin{align*} a &= a_{2m-2}2^{m-1}+\cdots +a_0, \\ b &= a_{2m-1}2^{m-1}+\cdots +a_1 \end{align*} とおく. このとき, \[ f(\sqrt 2) = a+b\sqrt 2, \quad f(-\sqrt 2) = a-b\sqrt 2.\] よって, \begin{align*} &f(\sqrt 2) = 0 \iff a+b\sqrt 2 = 0 \\ &\iff a = b = 0 \iff a = -b = 0 \\ &\iff a-b\sqrt 2 = 0 \iff f(-\sqrt 2) = 0. \end{align*} 題意が示された.

問題≪$1+\sqrt 2$ の共役解≫

 $3$ 次方程式 $x^3-3x^2+ax+b = 0$ が $1+\sqrt 2$ を解とするとき, 有理数の定数 $a,$ $b$ の値と他の解を求めよ.

解答例

 $f(x) = x^3-3x^2+ax+b$ とおく.
$f(1+\sqrt 2) = 0$ より, $$(1+\sqrt 2)^3-3(1+\sqrt 2)^2+a(1+\sqrt 2)+b = 0.$$ $\sqrt 2$ について整理すると, $$(a+b-2)+(a-1)\sqrt 2 = 0.$$ $a+b-2,$ $a-1$ は有理数だから, \begin{align*} &a+b-2 = a-1 = 0. \\ \therefore&a = b = 1. \end{align*} このとき, \begin{align*} f(x) = 0 &\iff x^3-3x^2+x+1 = 0 \\ &\iff (x-1)(x^2-2x-1) = 0. \end{align*} よって, $f(x) = 0$ の他の解は, $$1,\ 1-\sqrt 2.$$

別解

 有理数係数の方程式が $1+\sqrt 2$ を解とするとき, $1-\sqrt 2$ も解である. $$(1+\sqrt 2)+(1-\sqrt 2) = 2,\quad (1+\sqrt 2)(1-\sqrt 2) = -1$$ より, $1\pm\sqrt 2$ を解とする $2$ 次方程式の $1$ つは, $$x^2-2x-1 = 0.$$ よって, $x^3-3x^2+ax+b$ を $x^2-2x-1$ で割ると余りは $0$ だから, \begin{align*} &a-1 = b-1 = 0. \\ \therefore&a = b = 1. \end{align*} このとき, 与式は $(x-1)(x^2-2x-1) = 0$ となるから, 他の解は, $$1,\, 1-\sqrt 2.$$

問題≪虚数単位の最小多項式≫

 $i$ を虚数単位とする.
(1)
実数係数多項式 $f(x)$ が $f(i) = 0$ を満たすとする. このとき, $f(x)$ は $x^2+1$ で割り切れることを示せ.
(2)
$x^2+1$ は (1) の条件を満たす次数最小の実数係数多項式であることを示せ.

解答例

(1)
$f(x)$ を $x^2+1$ で割ったときの商を $q(x),$ 余りを $ax+b$ ($a,$ $b$: 実数)とおく. このとき, 仮定と $i^2+1 = 0$ により \[ 0 = f(i) = (i^2+1)q(i)+ai+b = ai+b\] となるから, \[ a = b = 0.\] ゆえに, $f(x)$ は $x^2+1$ で割り切れる.
(2)
実数係数多項式 $f(x)$ は, $f(i) = 0$ を満たすならば, (1) により実数係数多項式 $q(x)$ を用いて $f(x) = (x^2+1)q(x)$ と表せるから, 次数が $2$ 次以上である. これは, $x^2+1$ が (1) の条件を満たす次数最小の実数係数多項式であることを示している.

解説≪最小多項式≫

  • $x^2+1$ は $i$ の「実数体」上の最小多項式と呼ばれる.
  • (1) は, $f(i) = 0$ を満たす実数係数多項式 $f(x)$ は必ず $f(-i) = 0$ を満たすということである.
  • $f(x) = x^2+1$ は $f(-i) = 0$ を満たす次数最小の有理数係数多項式でもある.

問題≪$\sqrt[3]{2}$ の最小多項式≫

(1)
$\alpha = \sqrt[3]{2}$ は無理数であることを示せ.
(2)
有理数係数多項式 $f(x)$ が $f(\alpha ) = 0$ を満たすとする. このとき, $f(x)$ は $x^3-2$ で割り切れることを示せ.
(3)
$x^3-2$ は (2) の条件を満たす次数最小の有理数係数多項式であることを示せ.

解答例

(1)
略.
(2)
$f(x)$ を $x^3-2$ で割ったときの商を $q(x),$ 余りを $ax^2+bx+c$ ($a,$ $b,$ $c$: 有理数)とおく. このとき, 仮定により \[ 0 = f(\alpha ) = (\alpha ^3-2)q(\alpha )+a\alpha ^2+b\alpha +c\] となるから, $\alpha ^3-2 = 0$ により \[ a\alpha ^2+b\alpha +c = 0 \quad \cdots [1].\] 両辺に $\alpha$ を掛けると, \[ b\alpha ^2+c\alpha +2a = 0 \quad \cdots [2].\] $[1]\times b-[2]\times a$ から, \[ (b^2-ac)\alpha +bc-2a^2 = 0.\] $b^2-ac,$ $bc-2a^2$ は有理数であり, (1) により $\alpha$ は無理数であるから, \[ b^2-ac = 0 \quad \cdots [3], \qquad 2a^2-bc = 0 \quad \cdots [4].\] $[4]$ の両辺に $a$ を掛けて $[3]$ を代入すると, \[ 0 = 2a^3-abc = 2a^3-b^3.\] $\sqrt[3]{2}$ の無理数性から $a = b = 0$ でなければならない. このとき, $[1]$ から, $c = 0.$ ゆえに, $f(x)$ は $x^3-2$ で割り切れる.
(3)
有理数係数多項式 $f(x)$ は, $f(\alpha ) = 0$ を満たすならば, (2) により有理数係数多項式 $q(x)$ を用いて \[ f(x) = (x^3-2)q(x)\] と表せるから, 次数が $3$ 次以上である. これは, $x^3-2$ が (2) の条件を満たす次数最小の有理数係数多項式であることを示している.

別解: $[3],$ $[4]$ の直後に背理法の仮定を立てる

仮に $a \neq 0$ であるとすると, $[3]$ から $c = \dfrac{b^2}{a}$ となり, $[4]$ に代入して整理すると \[ 2 = \left(\dfrac{b}{a}\right) ^3\] となるから, $\alpha$ が無理数であることに反する. よって, $a = 0.$ これを $[1]$ に代入すると, \[ b\alpha +c = 0.\] $b,$ $c$ は有理数であり, $\alpha$ は無理数であるから, $b = c = 0.$ ゆえに, $f(x)$ は $x^3-2$ で割り切れる.

その他

問題≪$1$ の虚数立方根≫

 方程式 $x^3 = 1$ の虚数解の $1$ つを $\omega$ とおく. $n$ を整数とするとき, 次の式の値を求めよ:
(1)
$\omega ^n.$ 
(2)
$\omega ^2+\omega + 1.$ 
(3)
$\omega ^{2n}+\omega ^n+1.$ 

解答例

(1)
(i)
$n = 3q$ ($q$: 整数)のとき, \begin{align*} \omega ^n &= \omega ^{3q} = (\omega ^3)^q \\ &= 1^q = 1. \end{align*}
(ii)
$n = 3q+1$ ($q$: 整数)のとき, \begin{align*} \omega ^n &= \omega ^{3q+1} = \omega ^{3q}\cdot\omega \\ &= 1\cdot\omega = \omega. \end{align*}
(iii)
$n = 3q+2$ ($q$: 整数)のとき, \begin{align*} \omega ^n &= \omega ^{3q+2} = \omega ^{3q}\cdot\omega ^2 \\ &= 1\cdot\omega ^2 = \omega ^2. \end{align*}
(2)
$\omega ^3 = 1$ より, \begin{align*} \omega ^3-1 &= 0. \\ \therefore (\omega -1)(\omega ^2+\omega + 1) &= 0. \end{align*} よって, $\omega -1 = 0$ または $\omega ^2+\omega +1 = 0$ となるが, $\omega$ は虚数だから $\omega \neq 1$ より, $$\omega ^2+\omega +1 = 0.$$
(3)
(i)
$n = 3q$ ($q$: 整数)のとき, \begin{align*} \omega ^{2n}+\omega ^n+1 &= (\omega ^n)^2+\omega ^n+1 \\ &= 1^2+1+1 \\ &= 3. \end{align*}
(ii)
$n = 3q+1$ ($q$: 整数)のとき, \begin{align*} \omega ^{2n}+\omega ^n+1 &= (\omega ^n)^2+\omega ^n+1 \\ &= \omega ^2+\omega +1 \\ &= 0. \end{align*}
(iii)
$n = 3q+2$ ($q$: 整数)のとき, \begin{align*} \omega ^{2n}+\omega ^n+1 &= (\omega ^n)^2+\omega ^n+1 \\ &= (\omega ^2)^2+\omega ^2 +1 \\ &= \omega +\omega ^2 +1 \\ &= 0. \end{align*}

問題≪虚数単位の立方根≫

 $\mathrm i$ を虚数単位とする. 方程式 $z^3 = \mathrm i$ の解を求めよ.

解答例

$z = x+y\mathrm i$ ($x,$ $y$: 実数)とおくと, \begin{align*} z^3 &= (x+y\mathrm i)^3 \\ &= x^3+3x^2y\mathrm i+3xy^2\mathrm i^2+y^3\mathrm i^3 \\ &= (x^3-3xy^2)+(3x^2y-y^3)\mathrm i. \end{align*} $z^3 = \mathrm i$ より, $$\left\{\begin{array}{l} x^3-3xy^2 = 0 \cdots [1], \\ 3x^2y-y^3 = 1 \cdots [2]. \end{array}\right.$$ $[1]$ より, \begin{align*} x(x^2-3y^2) &= 0. \\ \therefore x(x+\sqrt 3y)(x-\sqrt 3y) &= 0. \end{align*} よって, $x = 0$ または $x = \pm\sqrt 3y.$
(i)
$x = 0$ のとき. $[2]$ より, $-y^3 = 1$ だから, \begin{align*} y^3+1 &= 0. \\ \therefore (y+1)(y^2-y+1) &= 0. \end{align*} $y^2-y+1 = 0$ は判別式が $(-1)^2-4\cdot 1\cdot 1 = -3 < 0$ で実数解を持たず, $y$ は実数だから, $$y = -1.$$
(ii)
$x = \pm\sqrt 3y \cdots [1]'$ のとき. $[2]$ より $8y^3 = 1$ だから, \begin{align*} 8y^3-1 &= 0. \\ \therefore (2y-1)(4y^2+2y+1) &= 0. \end{align*} $4y^2+2y+1 = 0$ は判別式が $2^2-4\cdot 4\cdot 1 = -12 < 0$ で実数解を持たず, $y$ は実数だから, $$y = \frac{1}{2}.$$ このとき, $[1]'$ より, $$x = \pm\dfrac{\sqrt 3}{2}.$$
ゆえに, $z^3 = \mathrm i$ の解は, $$-\mathrm i,\ \pm\dfrac{\sqrt 3}{2}+\dfrac{1}{2}\mathrm i.$$

問題≪あるべき根の和の無理性≫

 $a = \sqrt 2+\sqrt[3]{2}$ は無理数であることを示せ.

解答例

 $\sqrt[3]{2} = a-\sqrt 2$ より \begin{align*} 2 &= (a-\sqrt 2)^3 = a^3-3a^2\sqrt 2+6a-2\sqrt 2 \\ &= (a^3+6)-(3a^2+2)\sqrt 2 \end{align*} となり, \[\sqrt 2 = \frac{a^3+6a-2}{3a^2+2}\] となるから, $\sqrt 2$ の無理数性より, $a$ は有理数ではあり得ない. ゆえに, $a$ は無理数である.

問題≪相反 $4$ 次方程式≫

(A)
$\alpha$ を $\alpha \neq 1$ なる $1$ の $5$ 乗根とする.
(1)
$\alpha ^2+\alpha +1+\alpha ^{-1}+\alpha ^{-2} = 0$ であることを示せ.
(2)
(1) を使って, $t = \alpha +\bar\alpha$ は $t^2+t-1 = 0$ を満たすことを示せ.
(3)
(2) を使って, $\cos 72^\circ$ の値を求めよ. [金沢大]
(B)
方程式 $x^4+3x^3+2x^2+3x+1 = 0\ \cdots [\ast ]$ について,
(1)
$[\ast ]$ を $t = x+\dfrac{1}{x}$ の方程式として表せ.
(2)
$[\ast ]$ を解け.

解答例

(A)
準備中.
(B)
(1)
$x \neq 0$ に注意して $[\ast ]$ の両辺を $x^2$ で割ると, \begin{align*} x^2+3x+2+\frac{3}{x}+\frac{1}{x^2} &= 0 \\ \left( x^2+2+\frac{1}{x^2}\right)+3\left( x+\frac{1}{x}\right) &= 0 \\ \left( x+\frac{1}{x}\right) ^2+3\left( x+\frac{1}{x}\right) &= 0 \end{align*} となる. よって, $t = x+\dfrac{1}{x}$ とおくと, \[ t^2+3t = 0 \quad \cdots [\ast ]'\] となる.
(2)
$[\ast ]'$ つまり $t(t+3) = 0$ より, $t = 0$ または $t+3 = 0$ である.
(i)
$t = 0$ のとき, $x+\dfrac{1}{x} = 0$ の両辺に $x \neq 0$ を掛けると $x^2+1 = 0$ となるから, $x = \pm\mathrm i$ である.
(ii)
$t+3 = 0$ のとき, $x+\dfrac{1}{x}+3 = 0$ の両辺に $x \neq 0$ を掛けると, $x^2+3x+1 = 0$ となるから, $x = \dfrac{-3\pm\sqrt 5}{2}$ である.
(i), (ii) より, $[\ast ]$ の解は, $x = \dfrac{-3\pm\sqrt 5}{2},$ $\pm\mathrm i$ である.

問題≪実係数高次方程式の解の評価≫

(1)
実数 $x,$ $y$ に対して $|x+y| \leqq |x|+|y|$ が成り立つことを示せ.
(2)
$a,$ $b,$ $c$ を実数とし, その絶対値の最大値を $M$ とおく. 方程式 $x^3+ax^2+bx+c = 0$ の実数解 $\alpha$ は $|\alpha | \leqq M+1$ を満たすことを背理法で示せ.

解答例

(1)
こちらを参照.
(2)
$\alpha$ を方程式 $x^3+ax^2+bx+c = 0$ の実数解とする.
(i)
$\alpha = 0$ のとき. $M \geqq 0$ より, $|\alpha | < M+1.$
(ii)
$\alpha \neq 0$ のとき. \[\alpha ^3+a\alpha ^2+b\alpha +c = 0\] より \[ \alpha +a+\frac{b}{\alpha}+\frac{c}{\alpha ^2} = 0.\] 仮に, $|\alpha | > M+1$ が成り立つとすると, \[\frac{1}{|\alpha |} < \frac{1}{M+1} \quad \cdots [\ast ]\] だから, \begin{align*} &|\alpha | = \left| a+\frac{b}{\alpha}+\frac{c}{\alpha ^2}\right| \\ &\leqq |a|+\left|\frac{b}{\alpha}+\frac{c}{\alpha ^2}\right| \quad (\because (1)) \\ &\leqq |a|+\left|\frac{b}{\alpha}\right| +\left|\frac{c}{\alpha ^2}\right| \quad (\because (1)) \\ &= |a|+\frac{|b|}{|\alpha |}+\frac{|c|}{|\alpha |^2} \\ &\leqq M\left( 1+\frac{1}{|\alpha |}+\frac{1}{|\alpha |^2}\right)\ (\because |a|, |b|, |c| \leqq M) \\ &< M\left( 1+\frac{1}{M+1}+\frac{1}{(M+1)^2}\right) \quad (\because [\ast ]) \\ &= \frac{M^3+3M^2+3M}{(M+1)^2} \\ &< M+1\ (\because M^3+3M^2+3M < (M+1)^3). \end{align*} となって, 矛盾が生じる.
ゆえに, $|\alpha | \leqq M+1.$ (終)

解説

 この結果は, 複素数解の絶対値(数学 III)に対しても成り立つ. $0 < a < b < c < d$ のとき, 方程式 $ax^3+bx^2+cx+d = 0$ の複素数解の絶対値は $1$ より大きいというのが有名な掛谷の定理である.

問題≪$3$ 次方程式の解の巡回≫

 $8x^3-6x+1 = 0\ \cdots [\ast ]$ について, 次の問いに答えよ.
(1)
$[\ast ]$ は $\dfrac{1}{2} < x < 1$ の範囲にただ $1$ つの実数解をもつことを示せ.
(2)
(1) の解を $\alpha$ とおき, $\beta = 2\alpha ^2-1,$ $\gamma = \beta ^2-1$ とおく. このとき, $\gamma < \beta < \alpha$ であることを示せ.
(3)
$\beta,$ $\gamma$ は $[\ast ]$ の解であることを示せ.

解答例

 準備中.

付録

高次方程式の解法の探求の歴史

 この記事では, 有理数を係数とする $1$ 変数代数方程式 \[ a_nx^n+\cdots +a_1x+a_0 = 0\] の解法の探求の歴史について述べる. 代数方程式とは, 多項式で表される方程式のことである.
 $2$ 次方程式の解の公式はかなり古くから知られており, 628 年にインドの数学者ブラーマグプタ(Brahmagupta)が出版した数学書にはその公式が数式なしで与えられている.
 それでは, $3$ 次以上の方程式については, 一般的な解法は存在するだろうか. これは非常に素朴な疑問であるが, その完全な答えが得られるまでにはさらに大きな数学の発展が必要であった.
 $3$ 次方程式の解法の発見の歴史については諸説あるが, 現在有力とされている説を紹介する. 初めに $3$ 次方程式の解法を発見したのは, 16 世紀にイタリアの大学で数学を教えていたデル・フェッロ(S. del Ferro)であるとされている. 当時は, 互いに問題を出し合って一定期間内により多くの問題を解いた者を勝者とする, 金銭を賭けた計算勝負が数学者の間で流行していた. そのため, 次の勝負に備えて多くの問題を予め解き, 発見した事実をすぐに公表しないという数学者が多かった. デル・フェッロもその解法を発表しないまま弟子たちに託して死んだが, 弟子は計算勝負にその解法を使っていた. $3$ 次方程式の解法があるという噂を聞いたタルタリア(Tartaglia; 本名: ニコロ・フォンタナ, N. Fontana)は, 紆余曲折を経ながらも解法(次節を参照)を再発見した. タルタリアも解法を公にしようとしなかったが, 秘密にすることを条件としてカルダノに $3$ 次方程式の解法を伝授した. 数年後, デル・フェッロの未発表の論文を目にし, それがタルタリアの発見よりも前に書かれていたことを知ったカルダノは, タルタリアとの約束は無効であると判断し, 1545 年にその解法を『アルス・マグナ』(Ars Magna)に発表した. この $3$ 次方程式の解法は, この数学書によって世に広まったため, カルダノの解法と呼ばれることが多いが, 本来はデル・フェッロとフォンタナの解法と呼ばれるべきである.
 ちなみに, この解法ではすべての解が実数となる場合, 途中の計算で負の数の平方根を使う必要がある. しかし, 当時は虚数はおろか負の数もあまり受け入れられていなかった. 虚数を使わない方法ですべての解を得るために多くの努力がなされたが, 1572 年にラファエル・ボンベリ(Rafael Bombelli)によって有限回の四則演算と実数の累乗根をとる操作だけでは解を書き下すことのできない $3$ 次方程式の例が発見された.
 $4$ 次方程式の解法(次節を参照)は, カルダノの弟子であるフェラーリ(L. Ferrari)によって発見された. この公式もカルダノにより『アルス・マグナ』に発表された. その後 $4$ 次方程式の解法は詳しく研究され, 現在ではデカルト(R. Descartes), オイラー(L. Euler), ラグランジュ(J.-L. Lagrange)による解法も知られている.
 17 世紀前半にアルベール・ジラール(Albert Girard)によって予想され, ダランベール(J. d'Alembert), オイラー, ラグランジュ, ラプラス(P.-S. Laplace)らが証明に挑んだ, 高次方程式の解の存在を保証する次の定理は, 1799 年にガウス(F. Gauss)によって完全な証明が与えられた.

定理≪代数学の基本定理≫

 $1$ 次以上の任意の複素係数 $1$ 変数代数方程式は複素数解を持つ.
 さらに, 因数定理と合わせると, 任意の複素係数 $n$ 次方程式は重複度を込めてちょうど $n$ 個の複素数解を持つことが分かる. しかし, この定理でいう解は必ずしも「代数的」ではないことに注意が必要である. 次の意味で $5$ 次方程式の解の公式は存在しないことが, ルフィニ(P. Ruffini)の証明の欠陥を解決することで, 1824 年にアーベル(N. Abel)によって証明された.

定理≪アーベル・ルフィニの定理≫

 一般に, $5$ 次以上の有理数係数代数方程式は「代数的」に解くことができない. すなわち, 四則演算と累乗根をとる操作だけでは解くことのできない有理数係数高次方程式が存在する.
 20 歳という若さのうちに決闘で死んだことで有名なフランスの数学者ガロア(E. Galois)は, 方程式の解の対称性に着目することで, この定理の証明を大幅に簡略化し, 代数的な解の表示を持つ方程式の特徴付けを与えた. このガロアのアイデアは, 現代代数学で重要な役割を果たすガロア理論へと発展し, 幾何学へも応用されるようになった. また, ガロアが対称性を表す概念として発見した群は, 現代物理学を記述する言語としても用いられている.

$3$ 次方程式の解法

定理≪$3$ 次方程式の解法≫

 $a,$ $b,$ $c,$ $d$ を $a \neq 0$ なる複素数とする. $3$ 次方程式 \[ ax^3+bx^2+cx+d = 0 \quad \cdots [\ast ]\] の解は次の方法で求められる.
(0)
$[\ast ]$ の両辺を $a$ で割り, 方程式 \[ x^3+\ell x^2+mx+n = 0 \quad \cdots [0]\] を得る. ただし, \[\ell = \frac{b}{a},\ m = \frac{c}{a},\ n = \frac{d}{a}.\]
(1)
$[0]$ に変数変換 $X = x+\dfrac{\ell}{3}$ を行い, 方程式 \[ X^3+3pX+2q = 0 \quad \cdots [1]\] を得る. ただし, \[ 3p = -\frac{\ell ^2}{3}+m,\ 2q = \frac{2\ell ^3}{27}-\frac{\ell m}{3}+n.\] この変形は, しばしば立方完成と呼ばれる.
(2)
$[1]$ の解は, \[ X = \omega ^k\sqrt[3]{\lambda}+\omega ^{3-k}\sqrt[3]{\mu}\ (k \in \{ 0,\ 1,\ 2\}) \quad \cdots [2].\] ただし, \begin{align*} \lambda &= -q+\sqrt{q^2+p^3},\ \mu = -q-\sqrt{q^2+p^3}, \\ \omega &= \frac{-1+\sqrt{-3}}{2},\ \omega ^2 = \frac{-1-\sqrt{-3}}{2} \end{align*}
(3)
$x = X-\dfrac{\ell}{3}$ より, $[\ast ]$ の解を求める.

証明

(1)
\[\left( x+\frac{\ell}{3}\right) ^3 = x^3+\ell x^2+\dfrac{\ell ^2}{3}x+\frac{\ell ^3}{27}\] だから, $X = x+\dfrac{\ell}{3}$ とおくことにより, すなわち $x = X-\dfrac{\ell}{3}$ を代入することにより, $[\ast ]$ の $2$ 次の項を消去できる. 計算の詳細は略.
(2)
$X = u+v$ とおくと, $(u+v)^3 = u^3+v^3+3uv(u+v)$ より, \[ [1] \iff u^3+v^3+3(uv+p)(u+v)+2q = 0.\] よって, \[ u^3+v^3+2q = uv+p = 0 \quad \cdots [1]'\] が成り立てば, $[1]$ の解が求まる. \[ [1]' \iff u^3+v^3 = -2q,\ u^3v^3 = -p^3\] より, $2$ 次方程式 \[ t^2+2qt-p^3 = 0\] の解として \[ u^3 = -q+\sqrt{q^2+p^3} = \lambda,\ v^3 = -q-\sqrt{q^2+p^3} = \mu\] ととると, $u^3v^3 = -p^3$ から $[1]'$ を満たす $u,$ $v$ は \[ (u,\ v) = (\omega ^k\sqrt[3]{\lambda},\ \omega ^{3-k}\sqrt[3]{\mu}) \quad (k \in \{ 0,\ 1,\ 2\})\] の $3$ 通りに定まる. よって, $[1]$ の解は, $[2]$ の $3$ 個である.

例≪$3$ 次方程式の解法≫

 $3$ 次方程式 \[ x^3-6x^2-3x+18 = 0 \quad \cdots [\ast ]\] の解をすべて上記の方法で求める. $[\ast ]$ の解を $x$ とする.
(1)
$[\ast ]$ に $x = X+2$ を代入して整理すると, $2$ 次の項を消去できて \[ X^3-15X-4 = 0 \quad \cdots [1]\] となる. (この式は, $(x-2)^3 = x^3-6x^2+12x-8$ より \[ (x-2)^3-12x+8-3x+18 = 0\] となるから, $X = x-2$ とおいて整理しても得られる.)
(2)
$p = -5,$ $q = -2$ とおくと \[ -q\pm\sqrt{p^3+q^2} = 2\pm 11\mathrm i\] となるから, \[ (2\pm\mathrm i)^3 = 2\pm 11\mathrm i\] より, この立方根の $1$ つは $2\pm\mathrm i.$ よって, $[1]$ の解は \begin{align*} &X = (2+\mathrm i)+(2-\mathrm i) = 4, \\ &\frac{-1\pm\sqrt 3\mathrm i}{2}(2+\mathrm i)+\frac{-1\mp\sqrt 3\mathrm i}{2}(2-\mathrm i) = -2\pm\sqrt 3. \end{align*}
(3)
$x = X+2$ より, $[\ast ]$ の解は \[ x = 6,\ \pm\sqrt 3.\]

$4$ 次方程式の解法

定理≪$4$ 次方程式の解法≫

 $a,$ $b,$ $c,$ $d,$ $e$ を $a \neq 0$ なる複素数とする. $3$ 次方程式 \[ ax^4+bx^3+cx^2+dx+e = 0 \quad \cdots [\ast ]\] の解は次の方法で求められる.
(0)
$[\ast ]$ の両辺を $a$ で割り, 方程式 \[ x^4+kx^3+\ell x^2+mx+n = 0 \quad \cdots [0]\] を得る. ただし, \[ k = \frac{b}{a},\ \ell = \frac{c}{a},\ m = \frac{d}{a},\ n = \frac{e}{a}\]
(1)
$[0]$ に変数変換 $X = x+\dfrac{k}{4}$ を行い, 方程式 \[ X^4+pX^2+qX+r = 0 \quad \cdots [1]\] を得る. ただし, \begin{align*} p &= \ell -\frac{2k^2}{8},\ q = \frac{k^3}{8}-\frac{k\ell}{2}+m, \\ r &= -\frac{3k^4}{256}+\frac{k^2\ell}{16}-\frac{km}{4}+n. \end{align*} $q = 0$ の場合, $[1]$ は複 $2$ 次方程式となるので, 以下 $q \neq 0$ の場合を考える.
(2)
$3$ 次方程式 \[ t^3-\frac{p}{2}t^2-rt+\frac{4pr-q^2}{8} = 0 \quad \cdots [2]\] の解の $1$ つ $t$ を求めると, $[1]$ は複 $2$ 次方程式 \[\left( X^2+t\right) ^2 = (2t-p)\left( X-\frac{q}{2(2t-p)}\right) ^2 \quad \cdots [3]\] と同値になる. $[2]$ は $[1]$ の分解方程式と呼ばれる.
(3)
$[3]$ を解く.
(4)
$x = X-\dfrac{k}{4}$ より, $[\ast ]$ の解を求める.

証明

(1)
\[\left( x+\frac{k}{4}\right) ^4 = x^4+kx^3+\dfrac{3k^2}{8}x^2+\dfrac{k^3}{16}x+\dfrac{k^4}{128}\] だから, $X = x+\dfrac{k}{4}$ とおくことにより, すなわち $x = X-\dfrac{k}{4}$ を代入することにより, $[\ast ]$ の $3$ 次の項を消去できる. 計算の詳細は略.
(2)
各定数 $t$ に対して, \[ (X^2+t)^2 = X^4+2tX^2+t^2\] より, $[1]$ は \[ (X+t)^2 = (2t-p)X^2-qX+(t^2-r) \quad \cdots [1]'\] と同値である. $[1]'$ の右辺 $\varphi (X)$ が $X$ に関する完全平方式となるように $t$ の値を選べば, $\varphi (X) = 0$ は重解 $X = \dfrac{q}{2(2t-p)}$ を持ち, \[\varphi (X) = (2t-p)\left( X-\frac{q}{2(2t-p)}\right)^2\] と因数分解されるから, $[1]$ と同値な複 $2$ 次方程式 $[3]$ が得られる. このような $t$ の条件は, $\varphi (X) = 0$ の判別式が $0$ となる条件で, \[ q^2-4(2t-p)(t^2-r) = 0\] すなわち $[2]$ により与えられる.

例≪$4$ 次方程式の解法≫

 $4$ 次方程式 \[ x^4-4x^3+6x^2+12x-27 = 0 \quad \cdots [\ast ]\] の解をすべて上記の方法で求める. $[\ast ]$ の解を $x$ とする.
(1)
$[\ast ]$ に $x = X+1$ を代入して整理すると, $3$ 次の項が消去できて \[ X^4+16X-12 = 0 \quad \cdots [1]\] となる. ($2$ 次の項が消えたのは偶然である.)
(2)
$[1]$ の分解方程式 \[ t^3+12t-32 = 0 \quad \cdots [2]\] は $t = 2$ を解に持つ.
(3)
分解方程式の定め方から, \begin{align*} [1] &\iff (X^2+2)^2 = 4(X-2)^2 \\ &\iff X^2+2 = \pm 2(X-2) \\ &\iff (X^2+2X-2)(X^2-2X+6) = 0 \\ &\iff X = -1\pm\sqrt 3,\ 1\pm\sqrt 5\mathrm i. \end{align*}
(4)
$x = X+1$ より, $[\ast ]$ の解は \[ x = \pm\sqrt 3,\ 2\pm\sqrt 5\mathrm i.\]