COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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恒等式と等式の証明

恒等式

定理≪ブラーマグプタの恒等式≫

\begin{align*} (x^2+ny^2)(u^2+nv^2) &= (xu+nyv)^2+n(xv-yu)^2 \\ &= (xu-nyv)^2+n(xv+yu)^2 \end{align*} が成り立つ.

問題≪ブラーマグプタの恒等式とペル方程式≫

(1)
$(xu+dyv)^2-d(xv+yu)^2 = (x^2-dy^2)(u^2-dv^2)$ が成り立つことを示せ.
(2)
$u^2-2v^2 = 1$ の正の整数解を $1$ つ求めよ.
(3)
$x^2-2y^2 = -1$ は無限に多くの整数解を持つことを示せ.

解答例

(1)
左辺を展開して整理すると, \begin{align*} &(xu+dyv)^2-d(xv+yu)^2 \\ &= (x^2u^2+2dxyuv+d^2y^2v^2) \\ &\qquad -(dx^2v^2+2dxyuv+dy^2u^2) \\ &= x^2u^2-dx^2v^2-dy^2u^2+d^2y^2v^2 \\ &= (x^2-dy^2)(u^2-dv^2) \quad \cdots [1] \end{align*} となる.
(2)
$(u,v) = (3,2)$ は \[ u^2-2v^2 = 1 \quad \cdots [2]\] を満たす.
(3)
$(x,y) = (1,1)$ は $x^2-2y^2 = -1$ を満たす. また, $[1]$ に $d = 2,$ $(u,v) = (3,2)$ を代入すると, $[2]$ から, \[ x^2-2y^2 = (3x+4y)^2-2(2x+3y)^2\] となる. そこで, $x_n,$ $y_n$ $(n \geqq 1)$を \begin{align*} x_1 &= 1, & x_{n+1} &= 3x_n+4y_n, \\ y_1 &= 1, & y_{n+1} &= 2x_n+3y_n \end{align*} で定めると, $(x,y) = (x_n,y_n)$ は $x^2-2y^2 = -1$ の整数解になる. $x_{n+1} > x_n$ に注意すると, これらの解は互いに異なる. ゆえに, $x^2-2y^2 = -1$ は無限に多くの整数解を持つ.

背景

  • (1) の等式は「ブラーマグプタの恒等式」と呼ばれる.
  • 平方数でない正の整数 $d$ に対して,「ペル方程式」$x^2-dy^2 = 1$ は無限に多くの整数解を持つことが知られているが, $x^2-dy^2 = -1$ は無限に多くの整数解を持つこともあれば, 全く整数解を持たないことがある.

比例式

問題≪加比の理・シュケの不等式≫

(A)
実数 $a,$ $b,$ $c,$ $d,$ $x,$ $y$ が $bd \neq 0,$ $\dfrac{a}{b} = \dfrac{c}{d},$ $bx+dy \neq 0$ を満たすとき, $\dfrac{ax+cy}{bx+dy}$ の値を求めよ.
(B)
正の数 $a,$ $b,$ $c,$ $d$ に対して, $\dfrac{a}{b} < \dfrac{c}{d}$ であるとき, \[\frac{a}{b} < \frac{a+c}{b+d} < \frac{c}{d}\] が成り立つことを示せ.

解答例

(A)
$k = \dfrac{a}{b} = \dfrac{c}{d}$ とおくと, \[ a = bk, \quad c = dk\] となるから, \begin{align*} \frac{ax+cy}{bx+dy} &= \frac{bkx+dky}{bx+dy} = \frac{k(bx+dy)}{bx+dy} \\ &= k = \frac{a}{b} = \frac{c}{d} \end{align*} である.
(B)
$\dfrac{a}{b} < \dfrac{c}{d}$ のとき,
$ad < bc$ つまり $ad-bc < 0$
であるから, \begin{align*} \frac{a}{b}-\frac{a+c}{b+d} &= \frac{a(b+d)-(a+c)b}{b(b+d)} = \frac{ad-bc}{b(b+d)} < 0, \\ \frac{a+c}{b+d}-\frac{c}{d} &= \frac{(a+c)d-c(b+d)}{(b+d)d} = \frac{ad-bc}{(b+d)d} < 0 \end{align*} が成り立つ. よって, 求める不等式が成り立つ.

背景

  • 本問の (A) の結果を加比の理と呼ぶ.
  • 中世フランスの数学者シュケ (N. Chuquet)は, (B) の不等式を利用して $\sqrt 6$ の近似値を計算した.