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真の理解のためのシンプルな数学のノート

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定積分の不等式

定積分の不等式

問題≪積分の平均値の定理≫

 $a \leqq x \leqq b$ で定義された関数 $f(x)$ が連続であるとき, \[\int_a^bf(x)dx = (b-a)f(c), \quad a < c < b\] を満たす実数 $c$ が少なくとも $1$ つ存在することを示せ.
[1999 京都大*]

解答例

(i)
$f(x)$ が定数関数のとき. $f(x) = k$ とおくと, $a < c < b$ なる任意の実数 $c$ に対して \[\int_a^bf(x)dx = (b-a)f(c) = (b-a)k\] が成り立つ.
(ii)
$f(x)$ が定数関数でないとき. $f(x)$ は $a \leqq x \leqq b$ における連続関数だから, 最大値 $M,$ 最小値 $m$ をもつ. \[ m \leqq f(x) \leqq M\] であり, 等号は常に成り立たないから, 両辺を $a$ から $b$ まで積分すると, \begin{align*} \int_a^b mdx < &\int_a^bf(x)dx < \int_a^bMdx \\ m(b-a) < &\int_a^bf(x)dx < M(b-a) \\ m < &\frac{1}{b-a}\int_a^bf(x)dx < M \end{align*} が得られる. よって, 中間値の定理により, 最大値, 最小値を与える $x$ の値の間に \[ f(c) = \frac{1}{b-a}\int_a^bf(x)dx\] すなわち \[\int_a^bf(x)dx = (b-a)f(c)\] を満たす実数 $c$ が存在する.

問題≪マーダヴァ=ライプニッツ級数≫

 各正の整数 $n$ に対して関数 $f_n(x)$ を \[ f_n(x) = \frac{1}{1+x^2}-\sum_{k = 1}^n(-1)^{k-1}x^{2(k-1)}\] により定める.
(1)
$f_n(x) = \dfrac{(-1)^nx^{2n}}{1+x^2}$ を示せ.
(2)
$\displaystyle\lim\limits_{n \to \infty}\int_0^1f_n(x)dx = 0$ を示せ.
(3)
$\displaystyle\sum\limits_{n = 1}^\infty\dfrac{(-1)^{n-1}}{2n-1} = \dfrac{\pi}{4}$ を示せ.

解答例

(1)
等比数列の和の公式により, \[ f_n(x) = \frac{1}{1+x^2}-\frac{1-(-x^2)^n}{1+x^2} = \frac{(-1)^nx^{2n}}{1+x^2}\] が成り立つ.
(2)
積分の単調性により, \begin{align*} \left|\int_0^1f_n(x)dx\right| &\leqq \int_0^1|f_n(x)|dx \\ &\leqq \int_0^1x^{2n}dx = \frac{1}{2n+1} \end{align*} が成り立つ. よって, 挟みうちの原理により, \[\lim_{n \to \infty}\int_0^1f_n(x)dx = 0\] である.
(3)
$x = \tan\theta$ と置換すると, \begin{align*} \int_0^1f_n(x)dx &= \int_0^{\frac{\pi}{4}}d\theta -\sum_{k = 1}^n(-1)^{k-1}\int_0^1x^{2(k-1)}dx \\ &= \frac{\pi}{4}-\sum_{k = 1}^n\frac{(-1)^{k-1}}{2k-1} \end{align*} 両辺の極限を取ると, (2) の結果から \[ 0 = \frac{\pi}{4}-\sum_{n = 1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}{2n-1}\] となるので, 求める結果が得られる.

背景

  • \[\frac{1}{1}-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots = \frac{\pi}{4}\] と, 奇数の逆数に交互に符号をつけてすべて足し合わせると円周率が出てくることは, 非常に神秘的である. この無限級数を「マーダヴァ=ライプニッツ級数」(Mādhava–Leibniz series)と呼ぶ. この無限級数は, 収束が遅いため円周率の近似値の計算には実用的でないが, 円周率を表す無限級数としては世界で初めて発見されたものである(マーダヴァ, 15世紀).
  • (3)の等式は, 「グレゴリー=ライプニッツ級数」(Gregory–Leibniz series)と呼ばれる, $\tan x\ \left( -\dfrac{\pi}{2} < x < \dfrac{\pi}{2}\right)$ の逆関数 $\arctan x$ の「マクローリン展開」 \[\arctan x = \sum\limits_{n = 0}^\infty\frac{(-1)^n}{2n+1}x^{2n+1} \quad \cdots [\ast ]\] に $x = \dfrac{\pi}{4}$ を代入すると得られる. $[\ast ]$ と「マチンの公式」 \[\frac{\pi}{4} = 4\arctan\frac{1}{5}-\arctan\frac{1}{239}\] (こちらを参照)を組合せると, 比較的速く円周率に収束する無限級数が得られる.

問題≪定積分に関するヤングの不等式≫

 区間 $[0,c)$ で連続, $(0,c)$ で微分可能な単調増加関数 $f(x)$ が $f(0) = 0$ を満たすとして, $g(x)$ を $f(x)$ の逆関数とする. また, $0 < a < c,$ $0 < b < f(c)$ とする.
(1)
関数 $h(a) = ab-\displaystyle\int_0^af(x)dx$ は $a = g(b)$ において最大値をとることを示せ.
(2)
部分積分法, 置換積分法を用いて $\displaystyle\int_0^{g(b)}f(x)dx$ を変形することにより, $h(g(b)) = \displaystyle\int_0^bg(x)dx$ が成り立つことを示せ.
(3)
$\displaystyle\int_0^af(x)dx+\int_0^bg(x)dx \geqq ab$ が成り立つことを示せ.
(4)
$p,$ $q$ を $\dfrac{1}{p}+\dfrac{1}{q} = 1$ なる正の数とする. 関数 $f(x) = x^{p-1}$ に (3) の結果を適用することにより, $\dfrac{a^p}{p}+\dfrac{b^q}{q} \geqq ab$ が成り立つことを示せ.

解答例

(1)
\[ h'(a) = b-f(a) = f(g(b))-f(a)\] であり, $f(x)$ は単調増加であるから, \begin{align*} h'(a) \geqq 0 &\iff a \leqq g(b), \\ h'(a) \leqq 0 &\iff a \geqq g(b) \end{align*} である. よって, $h(a)$ は $a = g(b)$ において極大かつ最大の値 \[ h(g(b)) = bg(b)-\int_0^{g(b)}f(x)dx \quad \cdots [1]\] をとる.
(2)
$f(x) = x'f(x)$ であり, $y = f(x)$ とおくと $x = g(y)$ となるから, \begin{align*} \int_0^{g(b)}f(x)dx &= \int_0^{g(b)}x'f(x)dx \\ &= [xf(x)]_0^{g(b)}-\int_0^{g(b)}xf'(x)dx \\ &= g(b)f(g(b))-\int_0^bg(y)dy \\ &= bg(b)-\int_0^bg(x)dx \quad \cdots [2] \end{align*} である. よって, $[1],$ $[2]$ から \[ h(g(b)) = \int_0^bg(x)dx \quad \cdots [3]\] が成り立つ.
(3)
(1) で示したことから $h(a) \leqq h(g(b))$ であるので, $[3]$ から \begin{align*} &ab-\int_0^af(x)dx \leqq \int_0^bg(x)dx \\ &\int_0^af(x)dx+\int_0^bg(x)dx \geqq ab \end{align*} が得られる.
(4)
$\dfrac{1}{p}+\dfrac{1}{q} = 1$ から, \[ p-1 = \frac{1}{1-\dfrac{1}{q}}-1 = \frac{q}{q-1}-1 = \frac{1}{q-1}\] が成り立つ. よって, $y = x^{p-1}$ とおくと, $x = y^{\frac{1}{p-1}} = y^{q-1}$ となるので, $f(x) = x^{p-1}$ の逆関数は $g(x) = y^{q-1}$ である. よって, (3) の結果により, \begin{align*} ab &\leqq \int_0^ax^{p-1}dx+\int_0^bx^{q-1}dx \\ &= \left[\frac{x^p}{p}\right] _0^a+\left[\frac{x^q}{q}\right] _0^b \\ &= \frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q} \end{align*} が得られる.

背景

 (3) は, (4) の「ヤングの不等式」(Young's inequality)の一般化であり, 「定積分に関するヤングの不等式」として知られている. この不等式が成り立つことは, 直感的には, 次の図からわかる.

問題≪簡易版スターリングの公式≫

 次のことを示せ. ただし, $\lim\limits_{x \to \infty}\dfrac{\log x}{x} = 0$ であることは, 証明なしに使ってよい.
(1)
$f(x) \geqq 0\ (x \geqq 1)$ なる単調増加関数 $f(x)$ に対して, \[\int_1^n\!f(x)dx \!\leqq\! f(1)\!+\!\cdots\!+\!f(n) \leqq \int_1^n\!f(x)dx+f(n)\] が成り立つ.
(2)
$\lim\limits_{n \to \infty}\dfrac{\log n!-n\log n+n}{n} = 0$ が成り立つ.

解答例

(1)
$f(x)$ を $f(x) \geqq 0\ (x \geqq 1)$ なる単調増加関数とすると,
$f(k) \leqq \displaystyle\int_k^{k+1}f(x)dx \leqq f(k+1)$ ($k$: 正の整数)
となるから, $n > 1$ のとき, $1 \leqq k \leqq n-1$ なる $k$ について辺々を加えると \[ f(1)\!+\!\cdots\!+\!f(n-1) \!\leqq\! \int_1^n\!f(x)dx \!\leqq\! f(2)\!+\!\cdots\!+\!f(n)\] となり, \[\int_1^nf(x)dx \!\leqq\! f(1)\!+\!\cdots\!+\!f(n) \!\leqq\! \int_1^nf(x)dx\!+\!f(n)\] が得られる. これは $n = 1$ のときにも成り立つ.
(2)
$f(x) = \log x$ に(1) の結果を適用すると, \begin{align*} \int_1^n\log xdx &= \big[ x\log x\big] _1^n-\int_1^nx\cdot\frac{1}{x}dx \\ &= n\log n-n+1 \end{align*} であるので, \[ n\log n-n+1 \leqq \log n! \leqq n\log n-n+1+\log n\] から \[ 1 \leqq \log n!-n\log n+n \leqq 1+\log n\] が得られる. よって, \[\frac{1}{n} \leqq \frac{\log n!-n\log n+n}{n} \leqq \frac{1}{n}+\frac{\log n}{n}\] であり, $\lim\limits_{x \to \infty}\dfrac{\log x}{x} = 0$ であるから, \[\lim\limits_{n \to \infty}\frac{\log n!-n\log n+n}{n} = 0\] が成り立つ.

背景

 本問で示した公式は「スターリングの公式」(Stirling's formula)と呼ばれる. これを精密化した公式は, 二項分布は正規分布によって近似できるという「ド・モアブル=ラプラスの定理」(de Moivre–Laplace theorem)の証明に利用されるなど, 重要な応用をもつ.

問題≪汎調和級数の収束域≫

 $s > 0$ とする. 無限級数 $A = \displaystyle\sum_{n = 1}^\infty\frac{1}{n^s}$ は, $s > 1$ のとき収束し, $0 < s \leqq 1$ のとき発散することを, 次の定理を使って示したい.
(定理) 各項が正の無限級数 $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty a_n$ は, ある定数 $M$ について
   $\displaystyle\sum_{k = 1}^na_k \leqq M$ $(n \geqq 1)$ を満たすとき, 収束する.
各正の整数 $n$ に対して, $A_n = \displaystyle\sum_{k = 1}^n\frac{1}{k^s},$ $I_n = \displaystyle\int_1^n\frac{dx}{x^s}$ とおく.
(1)
正の整数 $k$ に対して, $\displaystyle\frac{1}{(k+1)^s} \leqq \int_k^{k+1}\frac{dx}{x^s} \leqq \frac{1}{k^s}$ を示せ.
(2)
$A_n \leqq 1+I_n\ (n > 1),$ $A_n \geqq I_{n+1}$ を示せ.
(3)
極限 $\lim\limits_{n \to \infty}I_n$ を求めよ.
(4)
$s > 1$ のとき, $A$ は収束することを示せ.
(5)
$0 < s \leqq 1$ のとき, $A$ は $\infty$ に発散することを示せ.
[信州大*]

解答例

(1)
$f(x) = \dfrac{1}{x^s}\ (x > 0)$ とおく. このとき, $s > 0$ から, $f'(x) = -\dfrac{s}{x^{s+1}} < 0$ が成り立つ. よって, $f(x)$ は単調減少であるから, $k \leqq x \leqq k+1$ において $f(k+1) \leqq f(x) \leqq f(k)$ つまり \[\frac{1}{(k+1)^s} \leqq \frac{1}{x^s} \leqq \frac{1}{k^s}\] が成り立つ. $k$ から $k+1$ までの定積分をとると, 定積分の単調性により \[\frac{1}{(k+1)^s} \leqq \int_k^{k+1}\frac{dx}{x^s} \leqq \frac{1}{k^s} \quad\cdots [1]\] が得られる.
(2)
$n > 1$ のとき, $1 \leqq k \leqq n-1$ なる $k$ について $[1]$ の左側の辺々を加えると
$\displaystyle\sum_{k = 1}^{n-1}\frac{1}{(k+1)^s} \leqq \int_1^n\frac{dx}{x^s}$ つまり $\displaystyle\sum_{k = 2}^n\frac{1}{k^s} \leqq I_n$
となるから, 両辺に $1$ を加えると \[ A_n \leqq 1+I_n \quad \cdots [2]\] が得られる. また, $1 \leqq k \leqq n$ なる $k$ について $[1]$ の右側の辺々を加えると
$\displaystyle\int_1^{n+1}\frac{dx}{x^s} \leqq \sum_{k = 1}^n\frac{1}{k^s}$ つまり $I_{n+1} \leqq A_n\ \cdots [3]$
が得られる.
(3)
(i)
$s = 1$ のとき, $n \to \infty$ とすると \[ I_n = \int_1^n\frac{dx}{x} = \big[\log x\big] _1^n = \log n \to \infty\] となる.
(ii)
$s \neq 1$ のとき, $n \to \infty$ とすると \begin{align*} I_n &= \int_1^n\frac{dx}{x^s} = \left[\frac{-1}{(s-1)x^{s-1}}\right] _1^n \\ &= \frac{1}{s-1}\left( 1-\frac{1}{n^{s-1}}\right) \\ &\to \begin{cases} \infty & (0 < s < 1), \\ \dfrac{1}{s-1} & (s > 1) \end{cases} \end{align*} となる.
よって, $0 < s \leqq 1$ のとき $\displaystyle\lim\limits_{n \to \infty}I_n = \infty,$ $s > 1$ のとき $\displaystyle\lim\limits_{n \to \infty}I_n = \frac{1}{s-1}$ である.
(4)
$s > 1$ とする. このとき, $[2]$ の右辺は $1+\dfrac{1}{s-1}$ に収束するから, $A_n \leqq 1+\dfrac{1}{s-1}$ が成り立つ. よって, (定理)から, 各項が正の無限級数 $A = \displaystyle\sum_{n = 1}^\infty\frac{1}{n^s}$ は収束する.
(5)
$0 < s \leqq 1$ のとき, $[3]$ の左辺は $\infty$ に発散するから, 追い出しの原理により, $A = \displaystyle\lim\limits_{n \to \infty}A_n$ は $\infty$ に発散する.

背景

  • 無限級数 $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty a_n$ が収束するとき $\displaystyle\lim\limits_{n \to \infty}a_n = 0$ が成り立つが, この逆は必ずしも成り立たない. その反例を与える代表的な無限級数として,「調和級数」$\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty\frac{1}{n}$ がある. この無限級数が $\infty$ に発散することは, \begin{align*} \sum_{n = 1}^{2^m}\frac{1}{n} &= 1+\sum_{k = 1}^m\sum_{n = 2^{k-1}+1}^{2^k}\frac{1}{n} \\ &> 1+\sum_{k = 1}^m2^{k-1}\cdot\frac{1}{2^k} = 1+\sum_{k = 1}^m\frac{1}{2} \\ &= 1+\frac{m}{2} \end{align*} の右辺が $\infty$ に発散することからわかる. 本問では,「汎調和級数」$\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty\frac{1}{n^s}$ が収束するような実数 $s$ の範囲を, $x^{-s}$ の定積分の極限との比較により決定した.
  • (定理)について一般に, 各項が一定値以下であるような単調増加数列は収束することが知られている. よって, 各項が正の無限級数,「正項級数」については, 部分和が単調増加数列をなすことから, 収束するか $\infty$ に発散するかのいずれかが起こる. ここで,「正項級数」の収束判定法についてまとめておく.
    (1)
    比較判定法: 各項が正である無限級数 $A = \displaystyle\sum_{n = 1}^\infty a_n,$ $B = \displaystyle\sum_{n = 1}^\infty b_n$ に対して, $a_n \leqq b_n\ (n \geqq 1)$ であるとき, $B$ が収束する $\Longrightarrow$ $A$ は収束する.
    (2)
    積分判定法: $x \geqq 1$ において $f(x) \geqq 0$ を満たす連続な単調減少関数 $f(x)$ に対して, $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty f(n)$ が収束する $\iff$ $\displaystyle\lim\limits_{n \to \infty}\int_1^nf(x)dx$ が収束する.