COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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関数の極限

自然対数

問題≪ベルヌーイの不等式とネイピア数の評価≫

 $n$ を $2$ 以上の整数とする. 次のことを示せ.
(1)
$(1+x)^n > 1+nx\ (x > 0)$ が成り立つ.
(2)
$\dfrac{{}_n\mathrm C_k}{n^k} \leqq \dfrac{1}{2^{k-1}}$ $(1 \leqq k \leqq n)$ が成り立つ.
(3)
$2 \leqq e \leqq 3$ である.

解答例

(1)
二項定理により \[ (1+x)^n = 1+nx+\cdots +x^n\] であり, $x > 0$ のとき $\cdots$ 以下の項は $0$ より大きいから, $(1+x)^n > 1+nx\ (x > 0)$ が成り立つ.
(2)
${}_n\mathrm C_k = \dfrac{{}_n\mathrm P_k}{k!}$ であるから, $2^{k-1}{}_n\mathrm P_k \leqq k!n^k$ を示せばよい. これは, \[ 2^{k-1} = 2^{k-1}\cdot 1 \leqq k!, \quad {}_n\mathrm P_k \leqq n^k\] の辺々を掛け合わせることで得られる.
(3)
$n \geqq 2$ のとき, (1) の不等式に $x = \dfrac{1}{n}$ を代入すると, \[\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^n > 1+n\cdot\frac{1}{n} = 2\] となる. また, 二項定理と (2) の不等式により \begin{align*} \left( 1+\frac{1}{n}\right) ^n &= \sum_{k = 0}^n{}_n\mathrm C_k\left(\frac{1}{n}\right) ^k = 1+\sum_{k = 1}^n\frac{{}_n\mathrm C_k}{n^k} \\ &\leqq 1+\sum_{k = 1}^n\frac{1}{2^{k-1}} = 1+\frac{1-\left(\dfrac{1}{2}\right) ^n}{1-\dfrac{1}{2}} \\ &= 3-\frac{1}{2^{n-1}} < 3 \end{align*} が成り立つ. ゆえに, 挟みうちの原理により, \[ 2 \leqq e = \lim\limits_{n \to \infty}\left( 1+\dfrac{1}{n}\right) ^n \leqq 3\] である.

背景

 (1) の不等式は,「ベルヌーイの不等式」(Bernoulli's inequality)として有名である.

$\sin x/x$ の極限

定理≪$\sin x/x$ の極限≫

\[\lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} = 1\] が成り立つ.

証明

 まず, $\lim\limits_{x \to +0}\dfrac{\sin x}{x} = 1$ を示す. $0 < x < \dfrac{\pi}{2}$ の範囲で考えれば十分である. 点 $\mathrm O$ を中心とする半径 $1,$ 中心角 $x$ の扇形 $\mathrm{OAB}$ を考える. 点 $\mathrm B$ から線分 $\mathrm{OA}$ に下した垂線の足を $\mathrm H$ とおき, 点 $\mathrm A$ を通り $\mathrm{HB}$ と平行な直線が直線 $\mathrm{OB}$ と交わる点を $\mathrm T$ とおく. 扇形 $\mathrm{OAB}$ の面積を $S$ とおくと, \[\triangle\mathrm{OAB} < S < \triangle\mathrm{OAT}\] となる. $\mathrm{BH} = \sin x,$ $\mathrm{AT} = \tan x$ であるから, \[\frac{1}{2}\cdot 1\cdot \sin x < \frac{1}{2}\cdot 1^2\cdot x < \frac{1}{2}\cdot 1\cdot\tan x\] となり, \[\sin x < x < \tan x\] となる. 各辺を $\sin x$ で割ると \[ 1 < \frac{x}{\sin x} < \frac{1}{\cos x}\] となるから, 各辺の逆数をとると \[ 1 > \frac{\sin x}{x} > \cos x\] となる. $\lim\limits_{x \to +0}\cos x = 1$ であるから, 挟みうちの原理により \[\lim\limits_{x \to +0}\frac{\sin x}{x} = 1 \quad \cdots [1]\] が成り立つ. よって, \[\lim\limits_{x \to -0}\frac{\sin x}{x} = \lim\limits_{x \to -0}\frac{\sin (-x)}{-x} = \lim\limits_{x \to +0}\frac{\sin x}{x} = 1 \quad \cdots [2]\] が成り立つ. $[1],$ $[2]$ から, 求める等式が得られる.

問題≪ヴィエトの公式≫

(1)
すべての角 $\theta$ と正の整数 $n$ に対して \[\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^n}\sin\frac{\theta}{2^n} = \frac{1}{2^n}\sin\theta\] が成り立つことを示せ.
(2)
(1) の結果を用いて \[\lim\limits_{n \to \infty}\cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}} = \frac{2}{\pi}\] が成り立つことを示せ.

解答例

(1)
倍角の公式により, \begin{align*} &\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^n}\sin\frac{\theta}{2^n} \\ &= \frac{1}{2}\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^{n-1}}\sin\frac{\theta}{2^{n-1}} \\ &= \cdots \\ &= \frac{1}{2^{n-1}}\cos\frac{\theta}{2}\sin\frac{\theta}{2} \\ &= \frac{1}{2^n}\sin\theta \end{align*} が成り立つ.
(2)
(1) の結果に $\theta = \dfrac{\pi}{2}$ を代入すると, \[ \cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}}\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} = \frac{1}{2^n}\] から \begin{align*} &\cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}} = \frac{1}{2^n}\div\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} \\ &= \frac{2}{\pi}\cdot\frac{\pi}{2^{n+1}}\div\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} \\ &\to \frac{2}{\pi}\cdot 1 = \frac{2}{\pi} \quad (n \to \infty ) \end{align*} となり, 求める結果が得られる.

背景

 (2) の結果は「ヴィエトの公式」と呼ばれる(Viète, 1593). 半角の公式 $\cos ^2\dfrac{\theta}{2} = \dfrac{1+\cos\theta}{2}$ により \begin{align*} \cos\frac{\pi}{4} &= \frac{\sqrt 2}{2}, \\ \cos\frac{\pi}{8} &= \sqrt{\frac{1+\dfrac{\sqrt 2}{2}}{2}} = \frac{\sqrt{2+\sqrt 2}}{2}, \\ \cos\frac{\pi}{16} &= \sqrt{\frac{1+\dfrac{\sqrt{2+\sqrt 2}}{2}}{2}} = \frac{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}}{2},\ \cdots \end{align*} であるから, この公式は \[\pi = 2\cdot\frac{2}{\sqrt 2}\cdot\frac{2}{\sqrt{2+\sqrt 2}}\cdot\frac{2}{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}}\cdot\cdots\] という形でも表される. この公式は, $\pi$ を表す式としてはヨーロッパで初めて発見されたものである. それ以前には, $\tan x$ の逆関数 $\mathrm{arctan}\,x$ の展開公式 $\mathrm{arctan}\,x = \sum\limits_{n = 0}^\infty\dfrac{(-1)^n}{2n+1}x^{2n+1}$ がインドのケーララ学派の間で知られていたので, $\pi$ を表す式としては $\pi = 4\sum\limits_{n = 0}^\infty\dfrac{(-1)^n}{2n+1}$ が最も古いと考えられている.