COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

数式を枠からはみ出さずに表示するためには, 画面を横に傾けてください(532 ピクセル以上推奨).

関数の極限

$\sin x/x$ の極限

定理≪$\sin x/x$ の極限≫

\[\lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} = 1\] が成り立つ.

証明

 まず, $\lim\limits_{x \to +0}\dfrac{\sin x}{x} = 1$ を示す. $0 < x < \dfrac{\pi}{2}$ の範囲で考えれば十分である. 点 $\mathrm O$ を中心とする半径 $1,$ 中心角 $x$ の扇形 $\mathrm{OAB}$ を考える. 点 $\mathrm B$ から線分 $\mathrm{OA}$ に下した垂線の足を $\mathrm H$ とおき, 点 $\mathrm A$ を通り $\mathrm{HB}$ と平行な直線が直線 $\mathrm{OB}$ と交わる点を $\mathrm T$ とおく. 扇形 $\mathrm{OAB}$ の面積を $S$ とおくと, \[\triangle\mathrm{OAB} < S < \triangle\mathrm{OAT}\] となる. $\mathrm{BH} = \sin x,$ $\mathrm{AT} = \tan x$ であるから, \[\frac{1}{2}\cdot 1\cdot \sin x < \frac{1}{2}\cdot 1^2\cdot x < \frac{1}{2}\cdot 1\cdot\tan x\] となり, \[\sin x < x < \tan x\] となる. 各辺を $\sin x$ で割ると \[ 1 < \frac{x}{\sin x} < \frac{1}{\cos x}\] となるから, 各辺の逆数をとると \[ 1 > \frac{\sin x}{x} > \cos x\] となる. $\lim\limits_{x \to +0}\cos x = 1$ であるから, 挟みうちの原理により \[\lim\limits_{x \to +0}\frac{\sin x}{x} = 1 \quad \cdots [1]\] が成り立つ. よって, \[\lim\limits_{x \to -0}\frac{\sin x}{x} = \lim\limits_{x \to -0}\frac{\sin (-x)}{-x} = \lim\limits_{x \to +0}\frac{\sin x}{x} = 1 \quad \cdots [2]\] が成り立つ. $[1],$ $[2]$ から, 求める等式が得られる.

問題≪ビエタの公式≫

(1)
すべての角 $\theta$ と正の整数 $n$ に対して \[\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^n}\sin\frac{\theta}{2^n} = \frac{1}{2^n}\sin\theta\] が成り立つことを示せ.
(2)
(1) の結果を用いて \[\lim\limits_{n \to \infty}\cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}} = \frac{2}{\pi}\] が成り立つことを示せ.

解答例

(1)
倍角の公式により, \begin{align*} &\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^n}\sin\frac{\theta}{2^n} \\ &= \frac{1}{2}\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^{n-1}}\sin\frac{\theta}{2^{n-1}} \\ &= \cdots \\ &= \frac{1}{2^{n-1}}\cos\frac{\theta}{2}\sin\frac{\theta}{2} \\ &= \frac{1}{2^n}\sin\theta \end{align*} が成り立つ.
(2)
(1) の結果に $\theta = \dfrac{\pi}{2}$ を代入すると, \[ \cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}}\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} = \frac{1}{2^n}\] から \begin{align*} &\cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}} = \frac{1}{2^n}\div\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} \\ &= \frac{2}{\pi}\cdot\frac{\pi}{2^{n+1}}\div\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} \\ &\to \frac{2}{\pi}\cdot 1 = \frac{2}{\pi} \quad (n \to \infty ) \end{align*} となり, 求める結果が得られる.

背景

 (2) の結果は「ビエタの公式」と呼ばれる(Vieta, 1593). 半角の公式 $\cos ^2\dfrac{\theta}{2} = \dfrac{1+\cos\theta}{2}$ により \begin{align*} \cos\frac{\pi}{4} &= \frac{\sqrt 2}{2}, \\ \cos\frac{\pi}{8} &= \sqrt{\frac{1+\dfrac{\sqrt 2}{2}}{2}} = \frac{\sqrt{2+\sqrt 2}}{2}, \\ \cos\frac{\pi}{16} &= \sqrt{\frac{1+\dfrac{\sqrt{2+\sqrt 2}}{2}}{2}} = \frac{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}}{2},\ \cdots \end{align*} であるから, この公式は \[\pi = 2\cdot\frac{2}{\sqrt 2}\cdot\frac{2}{\sqrt{2+\sqrt 2}}\cdot\frac{2}{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}}\cdot\cdots\] という形でも表される. この公式は, $\pi$ を表す式としてはヨーロッパで初めて発見されたものである. それ以前には, $\tan x$ の逆関数 $\mathrm{arctan}\,x$ の展開公式 $\mathrm{arctan}\,x = \sum\limits_{n = 0}^\infty\dfrac{(-1)^n}{2n+1}x^{2n+1}$ がインドのケーララ学派の間で知られていたので, $\pi$ を表す式としては $\pi = 4\sum\limits_{n = 0}^\infty\dfrac{(-1)^n}{2n+1}$ が最も古いと考えられている.