COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

数式を枠からはみ出さずに表示するためには, 画面を横に傾けてください(532 ピクセル以上推奨).

数列の極限

無限等比数列の極限

定理≪無限等比数列の極限≫

 $r > -1$ のとき, \[\lim\limits_{n \to \infty}r^n = \begin{cases} \infty & (r > 1), \\ 1 & (r = 1), \\ 0 & (|r| < 1) \end{cases}\] が成り立つ. $r \leqq -1$ のとき, $\{ r^n\}$ は振動する.

定理≪無限等比級数の収束・発散≫

 $a,$ $r$ を実数とし, $\{ a_n\}$ を初項 $a,$ 公比 $r$ の無限等比数列とする.
(1)
$a \neq 0,$ $|r| < 1$ ならば, \[\sum_{n = 1}^\infty a_n = \frac{a}{1-r}\] が成り立つ.
(2)
$a \neq 0,$ $|r| \geqq 1$ のとき, $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty a_n$ は発散する.
(3)
$a = 0$ のとき, $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty a_n = 0$ である.

問題≪縮小関数で定まる数列の極限≫

 数列 $\{ a_n\}$ を $a_1 = \sqrt 2,$ $a_{n+1} = \sqrt{2+a_n}$ で定める.
(1)
$\sqrt 2 \leqq a_n < 2$ が成り立つことを示せ.
(2)
$a_n < a_{n+1}$ が成り立つことを示せ.
(3)
$2-a_{n+1} \leqq \dfrac{1}{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}(2-a_n)$ が成り立つことを示せ.
(4)
極限値 $\lim\limits_{n \to \infty}a_n$ を求めよ.

解答例

(1)
$\sqrt 2 \leqq a_n < 2\ \cdots [1]$ を数学的帰納法で示す.
(i)
$n = 1$ のとき, $a_1 = \sqrt 2$ から, $[1]$ が成り立つ.
(ii)
$n = k$ ($k$: 正の整数)のとき, $[1]$ が成り立つとすると, \[\sqrt{2+\sqrt 2} \leqq \sqrt{2+a_k} < \sqrt{2+2}\] から \[\sqrt 2 \leqq a_{k+1} < 2\] となり, $n = k+1$ のときの $[1]$ が得られる.
(i), (ii) から, すべての正の整数 $n$ に対して $[1]$ が成り立つ.
(2)
$[1]$ から \begin{align*} a_{n+1}-a_n &= \sqrt{2+a_n}-a_n \\ &= \frac{(\sqrt{2+a_n}-a_n)(\sqrt{2+a_n}+a_n)}{\sqrt{2+a_n}+a_n} \\ &= \frac{2+a_n-a_n{}^2}{\sqrt{2+a_n}+a_n} \\ &= \frac{(1+a_n)(2-a_n)}{\sqrt{2+a_n}+a_n} > 0 \end{align*} であるので, \[ a_n < a_{n+1} \quad \cdots [2]\] が成り立つ.
(3)
$[2]$ から $a_1 \leqq \cdots \leqq a_n,$ よって $a_1 \leqq a_n$ であるので, \begin{align*} 2-a_{n+1} &= 2-\sqrt{2+a_n} = \frac{2-a_n}{2+\sqrt{2+a_n}} \\ &\leqq \frac{2-a_n}{2+\sqrt{2+a_1}} \\ &= \frac{1}{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}(2-a_n) \quad \cdots [3] \end{align*} が成り立つ.
(4)
$[3]$ から \[ 0 < 2-a_n \leqq \cdots \leqq \left(\frac{1}{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}\right) ^{n-1}(2-a_1)\] が成り立ち, 右辺は $0$ に収束するから, $\lim\limits_{n \to \infty}(2-a_n) = 0$ つまり $\lim\limits_{n \to \infty}a_n = 2$ である.

背景

  • 関数 $f(x)$ について, すべての実数 $x_1,$ $x_2$ に対して \[ |f(x_2)-f(x_1)| \leqq k|x_2-x_1|\] が成り立つような定数 $k$ が $0 \leqq k < 1$ の範囲に存在するとき, $f(x)$ を「縮小関数」と呼ぶ. このような関数について, 次の「不動点定理」の成り立つことが知られている: $f(x)$ が「縮小関数」であるならば, 方程式 $f(x) = x$ の実数解 $x = \alpha$ がただ $1$ つ存在して, 漸化式 $a_{n+1} = f(a_n)$ と任意の初期条件で定まる数列 $\{ a_n\}$ は $\alpha$ に収束する. ここで, $f(x) = x$ の実数解 $x = \alpha$ は $f(x)$ の「不動点」と呼ばれる.
    $f(x) = \sqrt{2+x}\ (x > 0)$ は縮小関数であり, $\sqrt{2+x} = x$ の解は $x = 2$ であるから, 不動点定理により, 問題の数列 $\{ a_n\}$ は $2$ に収束する.
    この $f(x)$ が「縮小関数」であることは, $0 < x_1 < x_2$ のとき, 平均値の定理により \[\frac{f(x_2)-f(x_1)}{x_2-x_1} = f'(c)\] つまり \[\frac{\sqrt{2+x_2}-\sqrt{2+x_1}}{x_2-x_1} = \frac{1}{2\sqrt{2+c}}\] を満たす実数 $c$ が $x_1 < c < x_2$ の範囲に存在し, よって \begin{align*} |\sqrt{2+x_2}-\sqrt{2+x_1}| &= \frac{1}{2\sqrt{2+c}|x_2-x_1|} \\ &< \frac{1}{2\sqrt 2}|x_2-x_1| \end{align*} が成り立つことから示される.
  • ちなみに, $\cos\dfrac{\pi}{2^{n+1}} = \dfrac{a_n}{2}$ からも, \[\lim\limits_{n \to \infty}a_n = 2\lim\limits_{n \to \infty}\cos\dfrac{\pi}{2^{n+1}} = 2\cos 0 = 2\] であることがわかる. 本問の数列が現れる公式として,「ビエタの公式」 \[\pi = 2\cdot\frac{2}{\sqrt 2}\cdot\frac{2}{\sqrt{2+\sqrt 2}}\cdot\frac{2}{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}}\cdot\cdots\] が有名である(こちらを参照).

問題≪算術幾何平均に関する極限≫

 $a,$ $b$ を $a \geqq b \geqq 0$ なる実数として, 数列 $\{ a_n\},$ $\{ b_n\}$ を \[ a_1 = a, \quad b_1 = b, \quad a_{n+1} = \frac{a_n+b_n}{2}, \quad b_{n+1} = \sqrt{a_nb_n}\] により定める.
(1)
すべての正の整数 $n$ に対して $a_n \geqq b_n$ が成り立つことを示せ.
(2)
すべての正の整数 $n$ に対して $\sqrt{\mathstrut a_n}-\sqrt{\mathstrut b_n} \leqq \sqrt{\mathstrut a_n-b_n}$ が成り立つことを示せ.
(3)
極限値 $\lim\limits_{n \to \infty}(a_n-b_n)$ を求めよ.

解答例

(1)
(i)
$n = 1$ のとき, $a_1 = a \geqq b = b_1$ である.
(ii)
$n > 1$ のとき, 相加・相乗平均の不等式により \[ a_n = \frac{a_{n-1}+b_{n-1}}{2} \geqq \sqrt{a_{n-1}b_{n-1}} = b_n\] である.
よって, すべての正の整数 $n$ に対して $a_n \geqq b_n$ が成り立つ.
(2)
(1) の結果から \begin{align*} &(\sqrt{\mathstrut a_n-b_n})^2-(\sqrt{\mathstrut a_n}-\sqrt{\mathstrut b_n})^2 \\ &= (a_n-b_n)-(a_n-2\sqrt{\mathstrut a_nb_n}+b_n) \\ &= 2\sqrt{\mathstrut a_nb_n}-2b_n \\ &= 2(\sqrt{\mathstrut a_n}-\sqrt{\mathstrut b_n})\sqrt{\mathstrut b_n} \geqq 0 \end{align*} であるので, \[ (\sqrt{\mathstrut a_n}-\sqrt{\mathstrut b_n})^2 \leqq (\sqrt{\mathstrut a_n-b_n})^2\] が成り立つ. よって, $\sqrt{\mathstrut a_n}-\sqrt{\mathstrut b_n} \geqq 0$ であることに注意すると, \[\sqrt{\mathstrut a_n}-\sqrt{\mathstrut b_n} \leqq \sqrt{\mathstrut a_n-b_n}\] が成り立つ.
(3)
(2) の結果から \begin{align*} a_{n+1}-b_{n+1} &= \frac{a_n+b_n}{2}-\sqrt{\mathstrut a_nb_n} \\ &= \frac{(\sqrt{\mathstrut a_n}-\sqrt{\mathstrut b_n})^2}{2} \\ &\leqq \frac{(\sqrt{\mathstrut a_n-b_n})^2}{2} = \frac{a_n-b_n}{2} \end{align*} であるので, 数学的帰納法により \[ 0 \leqq a_n-b_n \leqq \frac{a_1-b_1}{2^{n-1}}\] が成り立つ. 左側の不等号は (1) の結果による. 左辺は $0$ に収束するから, 挟みうちの原理により \[\lim_{n \to \infty}(a_n-b_n) = 0\] が成り立つ.

背景

  • $a_1 \geqq b_1 \geqq 0$ と連立漸化式 \[ a_{n+1} = \dfrac{a_n+b_n}{2}, \quad b_{n+1} = \sqrt{a_nb_n} \quad \cdots [*]\] で定まる数列 $\{ a_n\},$ $\{ b_n\}$ は共通の値に収束することが知られており, その極限値は「算術幾何平均」(arithmetic-geometric mean)と呼ばれる.
     $[*]$ において, $a_n \geqq b_n$ を仮定すると \[ a_n \geqq a_{n+1} = \dfrac{a_n+b_n}{2} \geqq b_{n+1} = \sqrt{a_nb_n} \geqq b_n\] となるから, \[ a_1 \geqq \cdots \geqq a_n \geqq \cdots \geqq b_n \geqq \cdots \geqq b_1\] が成り立つ. よって, $\{ a_n\}$ は $b_1$ 以上の値をとる単調減少数列であり, $\{ b_n\}$ は $a_1$ 以下の値をとる単調増加数列である. 一般に, 常に一定値以上の値をとる単調減少数列, および常に一定値以下の値をとる単調増加数列は収束することが知られているので, $\{ a_n\}$ と $\{ b_n\}$ は収束する. よって, $2a_{n+1} = a_n+b_n$ において両辺の極限をとると, $2\lim\limits_{n \to \infty}a_n = \lim\limits_{n \to \infty}a_n+\lim\limits_{n \to \infty}b_n$ となるので, $\lim\limits_{n \to \infty}a_n = \lim\limits_{n \to \infty}b_n$ が成り立つ.
     本問では, このことを知らないとして, 数列 $\{ a_n-b_n\}$ が $0$ に収束することを示した.
  • 円周率の近似値を計算する方法として,「算術幾何平均」を使った次のような公式が知られている: $[*]$ において $a_1 = 1,$ $b_1 = \dfrac{1}{\sqrt 2}$ とし, 数列 $\{ c_n\}$ を \[ c_1 = \dfrac{1}{4}, \quad c_{n+1} = c_n-2^n(a_n-a_{n+1})^2\] で定めると, $\pi = \lim\limits_{n \to \infty}\dfrac{a_{n+1}{}^2}{c_n}$ が成り立つ.

問題≪コッホ雪片≫

 $1$ 辺の長さが $1$ の正三角形を $K_0$ として, 次のような規則で多角形 $K_n$ $(n \geqq 0)$ を順次定めていく. 多角形 $K_n$ の各辺において, 辺を $3$ 等分する $2$ 点を頂点とするような正三角形を $K_n$ の外側に貼りあわせ, できた多角形を $K_{n+1}$ とする.
(1)
多角形 $K_n$ の周の長さを $L_n$ とおく. 極限 $\lim\limits_{n \to \infty}L_n$ を求めよ.
(2)
多角形 $K_n$ の面積を $S_n$ とおく. 極限 $\lim\limits_{n \to \infty}S_n$ を求めよ.
[2010 北海道大*]

解答例

(1)
$K_n$ から $K_{n+1}$ を作るとき, $K_n$ の各辺はその $\dfrac{1}{3}$ 倍の長さの辺 $4$ 本になるから, $L_{n+1} = \dfrac{4}{3}L_n$ が成り立つ.
よって, \[ L_n = \left(\frac{4}{3}\right) ^nL_0 = 3\cdot\left(\frac{4}{3}\right) ^n\] から, $\lim\limits_{n \to \infty}L_n = \infty$ である.
(2)
$K_n$ から $K_{n+1}$ を作るとき, $1$ 辺の長さが $\dfrac{1}{3^{n+1}}$ の正三角形 $3\cdot 4^n$ 個が貼りあわせられるから, \[ S_{n+1}-S_n = 3\cdot 4^n\times \left(\frac{1}{3^{n+1}}\right)^2\cdot\frac{\sqrt 3}{4} = \frac{\sqrt 3}{12}\left(\frac{4}{9}\right) ^n\] が成り立つ. よって, 求める極限は, \begin{align*} \lim\limits_{n \to \infty}S_n &= \lim\limits_{n \to \infty}S_{n+1} \\ &= \lim\limits_{n \to \infty}\left\{ S_0+\sum_{k = 0}^n(S_{k+1}-S_k)\right\} \\ &= S_0+\sum_{n = 0}^\infty (S_{n+1}-S_n) \\ &= \frac{\sqrt 3}{4}+\frac{\sqrt 3}{12}\sum_{n = 0}^\infty\left(\frac{4}{9}\right) ^n \\ &= \frac{\sqrt 3}{4}+\frac{\sqrt 3}{12}\cdot\frac{1}{1-\dfrac{4}{9}} \\ &= \frac{2\sqrt 3}{5} \end{align*} である.

背景

  • 本問の操作を無限に繰り返して得られる図形を「コッホ雪片」(Koch snowflake)と呼ぶ.
    この図形は, 一部が全体と相似になるという興味深い性質を持つ.
  • 「コッホ雪片」は「フラクタル図形」(fractal)と呼ばれる図形の一種である.