COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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線形空間

理論

線形空間

次元

定義≪線形独立性≫

 $V$ を体 $K$ 上の線形空間とし, $a_1,$ $\cdots,$ $a_n \in V,$ $\varnothing \neq S \subset V$ とする.
(1)
線形関係式 \[ c_1a_1+\cdots +c_na_n = 0 \quad (c_i \in K)\] が成り立つのは \[ c_1 = \cdots = c_n = 0\] の場合に限るとき, ベクトル $a_1,$ $\cdots,$ $a_n$ は $K$ 上線形独立または一次独立(linearly independent)であるという. $S$ に属する任意の有限個のベクトルが線形独立であるとき, 集合 $S$ は $K$ 上線形独立であるという.
(2)
$a_1,$ $\cdots,$ $a_n$ は, $K$ 上線形独立でないとき, $K$ 上線形従属または一次従属(linearly dependent)であるという. これは少なくとも $1$ つが $0$ でないような $c_1,$ $\cdots,$ $c_n \in K$ があって \[ c_1a_1+\cdots +c_na_n = 0\] となることに他ならない.

例≪線形独立性≫

(a)
$\vec a,$ $\vec b$ をユークリッド空間 $\mathbb R^n$ のベクトルとする. このとき,
$\vec a,$ $\vec b$ が $\mathbb R$ 上線形独立 $\iff$ $\vec a$ と $\vec b$ は零でなく平行でない,
つまり
$\vec a,$ $\vec b$ が $\mathbb R$ 上線形従属 $\iff$ $\vec a$ と $\vec b$ は零でないなら平行
が成り立つ. 実際, $\vec a,$ $\vec b \neq 0$ のとき, $c\vec a+d\vec b = \vec 0$ という線形関係式は
$\vec a = -\dfrac{d}{c}\,\vec b$ ($c \neq 0$ のとき), $\vec b = -\dfrac{c}{d}\,\vec a$ ($d \neq 0$ のとき)
という関係を導くからである.
(b)
実数全体を定義域とする実数値関数の成す線形空間において, $1,$ $e^x,$ $e^{2x}$ は線形独立である. 実際, $c_1,$ $c_2,$ $c_3 \in K$ について \[ c_1+c_2e^x+c_3e^{2x} = 0 \quad \cdots [1]\] が成り立つとする. 両辺を微分すると $c_2e^x+2c_3e^{2x} = 0$ となるから, 両辺を $e^x \neq 0$ で割ると \[ c_2+2c_3e^{2x} = 0 \quad \cdots [2]\] となる. さらに両辺を微分すると $4c_3e^{2x} = 0$ となるので, $c_3 = 0$ となる. これを $[2]$ に代入すると $c_2 = 0$ となる. $c_2 = c_3 = 0$ を $[1]$ に代入すると $c_1 = 0$ も得られる.

定義≪基底と次元≫

 $V$ を体 $K$ 上の線形空間とする. $V$ が線形独立な部分集合 $E$ で生成されるとき, $E$ を $V$ の基底(basis)と呼ぶ. これは, $V$ の元が順序を無視した実質的有限和 \[ a = \sum_{e \in E}c_ee \quad (c_e \in K)\] の形に一意的に表されることに他ならない. $E$ が有限集合であるとき, $V$ は有限次元(finite dimensional)であるといい, $E$ の元の個数を $V$ の次元(dimension)と呼ぶ. 以下, 有限次元線形空間の基底としては順序付けられた集合のみを考えることにする.

線形写像

考察≪対角化の線形変換による意味づけ≫

 体 $K$ 上の $n$ 次正方行列 $A$ が相異なる固有値 $\lambda _1,$ $\cdots,$ $\lambda _n$ と対応する固有ベクトル $p_1,$ $\cdots,$ $p_n$ を持つとする. このとき, $K^n$ の基底 $(p_1,\ \cdots,\ p_n)$ に関する線形変換 $K^n\to K^n;x\mapsto Ax$ の表現行列は \[ D = \begin{pmatrix} \lambda _1 & {} & O \\ {} & \ddots & {} \\ O & {} & \lambda _n \end{pmatrix}.\] よって, $K^n$ における標準基底と基底 $(p_1,\ \cdots,\ p_n)$ の変換行列は $P$ であるから, 可換図式 \[\begin{array}{rcl} K^n & \xrightarrow{A} & K^n \\ {}_P\,\downarrow & {} & \downarrow\,{}_P \\ K^n & \xrightarrow[D]{} & K^n \end{array}\] により, \[ A = P^{-1}DP.\] ゆえに, \begin{align*} A^m &= (P^{-1}DP)\cdots (P^{-1}DP) = P^{-1}D^mP \\ &= P^{-1}\begin{pmatrix} \lambda _1{}^m & {} & O \\ {} & \ddots & {} \\ O & {} & \lambda _n{}^m \end{pmatrix}P. \end{align*}

問題

線形空間

問題≪$1,$ $\sqrt d,$ $\sqrt[3]{e}$ の線形独立性≫

 $d,$ $e$ を正の整数とし, $d$ を非平方数, $e$ を非立方数とする. このとき, $1,$ $\sqrt d,$ $\sqrt[3]{e}$ は有理数体 $\mathbb Q$ 上線形独立であることを示し, $\sqrt d+\sqrt[3]{e}$ は無理数であることを示せ.

解答例

 $a,$ $b,$ $c \in \mathbb Q,$ $a+b\sqrt d+c\sqrt[3]{e} = 0$ とする. このとき, \[ -c\sqrt[3]{e} = a+b\sqrt d\] となるから, 両辺を $3$ 乗すると \[ -c^3e = a^3+3a^2b\sqrt d+3ab^2d+b^3d\sqrt d\] となる. 整理すると \[ b(3a^2+b^2d)\sqrt d = -(a^2+3ab^2d+c^3e)\] となるので, $\sqrt d$ が無理数であることから \[ b(3a^2+b^2d) = a^2+3ab^2d+c^3e = 0\] となる. よって, 次の少なくとも一方が成り立つ.
(i)
$b = 0.$ このとき, $c\sqrt[3]{e} = -a$ となるので, $\sqrt[3]{e}$ が無理数であることから $a = c = 0$ となる.
(ii)
$3a^2+b^2d = 0.$ これと $a^2,$ $b^2,$ $d \geqq 0$ から, $a = b = 0$ となり, 仮定より $c = 0$ となる.
よって, いずれの場合にも $a = b = c = 0$ となるから, $1,$ $\sqrt d,$ $\sqrt[3]{e}$ は $\mathbb Q$ 上線形独立である. よって, $a+\sqrt d+\sqrt[3]{e} = 0$ を満たす有理数 $\mathbb Q$ は存在しないから, $\sqrt d+\sqrt[3]{e}$ は無理数である.