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真の理解のためのシンプルな数学のノート

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ペル方程式

理論

ペル方程式

定義≪ペル方程式≫

 $d$ を平方数でない正の整数とする. $x^2-dy^2 = 1$ または $x^2-dy^2 = -1$ の形の方程式を ペル方程式(Pell's equation)と呼ぶ. $(\pm 1,0)$ を $x^2-dy^2 = 1$ の自明解(trivial solution)と呼ぶ.

注意

 $d$ が平方数のとき, 整数の範囲で \[ x^2-dy^2 = (x+y\sqrt d)(x-y\sqrt d)\] と因数分解でき, 積が $\pm 1$ であるような整数は $1$ と $-1$ に限るから, $x^2-dy^2 = 1$ の解は $(\pm 1,0)$ に限られ, $x^2-dy^2 = -1$ の解が存在するのは $d = 1$ のときに限られることが分かる. これは $d$ が平方数でないときの解の様子と全く異なるので, $d$ が平方数の場合は除外して考える.

$x^2-dy^2 = 1$ の解の存在

定理≪$x^2-dy^2 = 1$ の解の存在≫

 $d$ を平方数でない正の整数とする. このとき, $x^2-dy^2 = 1$ は無限個の整数解を持つ.

$x^2-dy^2 = -1$ の解の存在

 右辺が $-1$ のペル方程式が整数解を持つか否かは難しい問題であり, 解の存在を簡単に判定できる一般的な方法はまだ知られていないようである. 次のような特殊な場合については, 解の存在・非存在が比較的容易に分かる.

定理≪$x^2-dy^2 = -1$ の解の存在条件≫

 $d$ を平方数でない正の整数とする.
(a)
$d-1$ が平方数のとき, $x^2-dy^2 = -1$ は整数解 $(\pm\sqrt{d-1},\pm 1)$ を持つ.
(b)
$4$ で割った余りが $1$ であるようなすべての素数 $p$ に対して, $x^2-py^2 = -1$ は整数解を持つ.
(c)
$8$ で割った余りが $5$ であるようなすべての素数 $p$ に対して, $x^2-2py^2 = -1$ は整数解を持つ.
(d)
$d$ が $4$ の倍数のとき, $x^2-dy^2 = -1$ は整数解を持たない.
(e)
$4$ で割った余りが $3$ であるようなある素数 $p$ について, $d$ の素因数分解における $p$ の指数が奇数であるとき, $x^2-dy^2 = -1$ は整数解を持たない.

証明

(a)
$(\pm\sqrt{d-1})^2-d(\pm 1)^2 = -1$ から従う.
(b)
$p$ を $4$ で割った余りが $1$ であるような素数とする. $|x^2-py^2| = 1$ が非自明な整数解を持つことは, 上述の定理により保証される. その解のうち, $x+y\sqrt p$ が $1$ より大きい範囲で最小となるもの $(x_1,y_1)$ が $x_1{}^2-py_1{}^2 = 1$ を満たすとして, 矛盾を導く. 偶数の平方を $4$ で割った余りは $0,$ 奇数の平方を $4$ で割った余りは $1$ であることに注意すると, \[ x_1{}^2-1 = py_1{}^2\] の右辺を $4$ で割った余りは $0$ か $1$ であるから, $x_1$ は奇数, $y_1$ は偶数でなければならない. そこで, 両辺を $4$ で割ると, \[\frac{x_1+1}{2}\cdot\frac{x_1-1}{2}= p\left(\frac{y_1}{2}\right) ^2\] が得られる. $p$ は素数であるから, 素因数分解の一意性により, ある正の整数 $\xi,$ $\eta$ に対して \[\left\{\frac{x_1+1}{2},\frac{x_1-1}{2}\right\} = \{\xi ^2,p\eta ^2\}\] が成り立つ. よって, \[ |\xi ^2-p\eta ^2| = \frac{x_1+1}{2}-\frac{x_1-1}{2} = 1\] が成り立つ. また, $y_1 > 0$ から $x_1 > 1$ であるので, $\xi > 1$ であり, $x_1 = 2\xi ^2\pm 1 > \xi$ であることが分かる. $x^2-py^2 = 1$ の解について $y = \sqrt{\dfrac{x^2-1}{p}}$ から \[ x+y\sqrt p = x+\sqrt{x^2-1}\] が成り立つので, \[ x_1+y_1\sqrt p > \xi +\eta\sqrt p\] が成り立つ. これは $x_1+y_1\sqrt p$ の最小性に反する. ゆえに, $x_1{}^2-py_1{}^2 = -1$ が成り立つ.
(c)
$p$ を $8$ で割った余りが $5$ であるような素数とする. 偶数の平方を $8$ で割った余りは $0$ か $4,$ 奇数の平方を $8$ で割った余りは $1$ であることに注意すると, $x^2-2py^2 = 1$ の解 $(x_1,y_1)$ について, \[ x_1{}^2-1 = 2py_1{}^2\] の右辺を $8$ で割った余りは $0$ か $2$ であるから, $x_1$ は奇数, $y_1$ は偶数でなければならない. よって, \[\frac{x_1+1}{2}\cdot\frac{x_1-1}{2}= 2p\left(\frac{y_1}{2}\right) ^2\] から, ある正の整数 $\xi,$ $\eta$ に対して \[\left\{\frac{x_1+1}{2},\frac{x_1-1}{2}\right\} = \{\xi ^2,2p\eta ^2\},\{ 2\xi ^2,p\eta ^2\}\] となるが, 後者の場合は起こらない. 実際, 後者の場合が起こるとすると, $x_1$ の $2$ 通りの表示を比較することで \[ 2\xi ^2 = p\eta ^2\pm 1\] が得られる. 左辺を $8$ で割った余りは $0$ か $2$ であり, 右辺を $8$ で割った余りは $1,$ $6,$ $5$ (符号が $+$ のとき), または $7,$ $4,$ $3$ (符号が $-$ のとき)であるから, これは起こらない. よって, (b) と同様の議論により, 求める主張が示される.
(d)
すべて整数 $x$ に対して $x^2+1$ を $4$ で割った余りは $1$ か $2$ であることから従う.
(e)
整数 $x,$ $y$ が $x^2-dy^2 = -1$ を満たすとき, $dy^2 = x^2+1$ は平方数の和として表される. よって, $2$ 平方和定理により, $4$ で割った余りが $3$ であるようなすべての素数 $p$ について, $dy^2$ したがって $d$ の素因数分解における $p$ の指数は偶数である. この理由で対偶が成り立つから, 求める主張が成り立つ.

解の構造定理

定理≪ペル方程式の解の構造定理≫

 $d$ を平方数でない正の整数とする.
(a)
$(x_1,y_1)$ が $x^2-dy^2 = 1$ の整数解であるとき, すべての正の整数 $n$ に対して \[ (x_1+y_1\sqrt d)^n = x_n+y_n\sqrt d\] により定まる整数の組 $(x_n,y_n)$ も $x^2-dy^2 = 1$ の解である. さらに, $x^2-dy^2 = 1$ の整数解のうち $x+y\sqrt d$ の値が $1$ より大きい範囲で最小になるものを $(x_1,y_1)$ とすると, 上記のようにして定まる整数の組は $x^2-dy^2 = 1$ のすべての正の整数解を与える.
(b)
$x^2-dy^2 = -1$ が整数解 $(x_1,y_1)$ を持つとき, すべての正の整数 $n$ に対して \[ (x_1+y_1\sqrt d)^{2n-1} = x_n+y_n\sqrt d\] により定まる整数の組 $(x_n,y_n)$ も $x^2-dy^2 = -1$ の解である. さらに, $x^2-dy^2 = -1$ の整数解のうち $x+y\sqrt d$ の値が $1$ より大きい範囲で最小になるものを $(x_1,y_1)$ とすると, 上記のようにして定まる整数の組は $x^2-dy^2 = -1$ のすべての正の整数解を与える.

補題≪共役の乗法性≫

 $d$ を平方数でない正の整数とする. $a,$ $b$ が整数のとき, \[\widetilde{a+b\sqrt d} = a-b\sqrt d\] と定める. $a_1,$ $b_1,$ $a_2,$ $b_2$ が整数のとき, $\alpha _k = a_k+b_k\sqrt d\ (k = 1,2)$ について $\widetilde{\alpha _1\alpha _2} = \widetilde{\alpha _1}\cdot\widetilde{\alpha _2}$ が成り立つ.

補題の証明

 $\alpha _1\alpha _2 = (a_1a_2+b_1b_2d)+(a_1b_2+b_1a_2)\sqrt d$ から, \begin{align*} &\widetilde{\alpha _1}\cdot\widetilde{\alpha _2} = (a_1-b_1\sqrt d)(a_2-b_2\sqrt d) \\ &= (a_1a_2+b_1b_2d)-(a_1b_2+b_1a_2)\sqrt d = \widetilde{\alpha _1\alpha _2} \end{align*} が成り立つ.

定理の証明

(a)
補題により, \begin{align*} x_n{}^2-dy_n{}^2 &= (x_n+y_n\sqrt d)(x_n-y_n\sqrt d) \\ &= (x_1+y_1\sqrt d)^n(x_1-y_1\sqrt d)^n \\ &= (x_1{}^2-dy_1{}^2)^n = 1^n = 1 \end{align*} が成り立つ. さらに, $(x,y)$ を $x^2-dy^2 = 1$ の正の整数解とする. このとき, $x_1+y_1\sqrt d$ の最小性により, \[ (x_1+y_1\sqrt d)^n \leqq x+y\sqrt d < (x_1+y_1\sqrt d)^{n+1}\] を満たす正の整数 $n$ が存在する. 両辺を $(x_1+y_1\sqrt d)^n$ で割ると, \[ 1 \leqq \frac{x+y\sqrt d}{(x_1+y_1\sqrt d)^n} < x_1+y_1\sqrt d\] となる. \[ (x_1+y_1\sqrt d)(x_1-y_1\sqrt d) = 1 \quad \cdots [1]\] と帰納法から \begin{align*} \frac{x+y\sqrt d}{(x_1+y_1\sqrt d)^n} &= (x+y\sqrt d)(x_1-y_1\sqrt d)^n \\ &= x'+y'\sqrt d \end{align*} を満たす整数 $x',$ $y'$ が存在することが分かる. 補題により \[ (x_1-y_1\sqrt d)^n(x-y\sqrt d) = x'-y'\sqrt d\] が成り立つので, 辺々を掛け合わせると \[ x'^2-dy'^2 = (x_1{}^2-dy_1{}^2)(x^2-dy^2)^n = 1\] が成り立つ. よって, $x_1+y_1\sqrt d$ の最小性により, $x'+y'\sqrt d = 1$ が成り立つ. これから $x+y\sqrt d = (x_1+y_1\sqrt d)^n$ が得られる.
(b)
補題により, \begin{align*} x_n{}^2-dy_n{}^2 &= (x_n+y_n\sqrt d)(x_n-y_n\sqrt d) \\ &= (x_1+y_1\sqrt d)^{2n-1}(x_1-y_1\sqrt d)^{2n-1} \\ &= (x_1{}^2-dy_1{}^2)^{2n-1} = (-1)^{2n-1} = -1 \end{align*} が成り立つ. さらに, $(x,y)$ を $x^2-dy^2 = -1$ の正の整数解とする. このとき, $x_1+y_1\sqrt d$ の最小性により, \[ (x_1+y_1\sqrt d)^{2n-1} \leqq x+y\sqrt d < (x_1+y_1\sqrt d)^{2n+1}\] を満たす正の整数 $n$ が存在する. 両辺を $(x_1+y_1\sqrt d)^{2n-1}$ で割ると, \[ 1 \leqq \frac{x+y\sqrt d}{(x_1+y_1\sqrt d)^{2n-1}} < (x_1{}^2+y_1{}^2d)+2x_1y_1\sqrt d\] となる. \[ (x_1+y_1\sqrt d)(x_1-y_1\sqrt d) = 1 \quad \cdots [1]\] と帰納法から \begin{align*} \frac{x+y\sqrt d}{(x_1+y_1\sqrt d)^{2n-1}} &= (x+y\sqrt d)(x_1-y_1\sqrt d)^{2n-1} \\ &= x'+y'\sqrt d \end{align*} を満たす整数 $x',$ $y'$ が存在することが分かる. 補題により \[ (x_1-y_1\sqrt d)^{2n-1}(x-y\sqrt d) = x'-y'\sqrt d\] が成り立つので, 辺々を掛け合わせると \[ x'^2-dy'^2 = (x_1{}^2-dy_1{}^2)(x^2-dy^2)^{2n-1} = 1\] が成り立つ. よって, $(x,y) = (x_1{}^2+y_1{}^2d,2x_1y_1)$ は $x+y\sqrt d$ が $1$ より大きい範囲で最小となるような $x^2-dy^2 = 1$ の解であることに注意すると, $x'+y'\sqrt d = 1$ が成り立つ. これから $x+y\sqrt d = (x_1+y_1\sqrt d)^{2n-1}$ が得られる.

応用

定理≪ペル方程式の平方根の近似計算への応用≫

 $d$ を平方数でない正の整数とする. $x^2-dy^2 = 1$ の正の整数解について, $x+y\sqrt d$ の値が小さい順に $(x_n,y_n)$ とおくと, $x_n/y_n$ は $\sqrt d$ に収束する.

問題

問題≪平方三角数とペル方程式≫

(1)
$l$ 行 $l$ 列の正方形の形に並べられていた石を崩した後, $1$ 段目に $1$ 個, $\cdots,$ $k$ 段目に $k$ 個, $\cdots$ と $m$ 段目まで並べていくと, 石を余すことなく正三角形の形に並べられたとする. このとき, $(x,y) = (2m+1,2l)$ は $x^2-2y^2 = 1$ の解であることを示せ.
(2)
$(x,y)$ を $x^2-2y^2 = 1$ の正の整数解とする. このとき, $x$ は $3$ 以上の奇数であり, $y$ は偶数であることを示せ. さらに, $l = \dfrac{y}{2},$ $m = \dfrac{x-1}{2}$ とおくとき, $l$ 行 $l$ 列の正方形の形に並べられた石は, 上記のように $m$ 段の正三角形の形にも並べられることを示せ.
(3)
$\alpha = x+y\sqrt 2$ ($x,$ $y$: 整数)の形に表される各実数 $\alpha$ に対して, $\tilde\alpha = x-y\sqrt 2$ と定める. $\alpha = x+y\sqrt 2,$ $\alpha ' = x'+y'\sqrt 2$ ($x,$ $y,$ $x',$ $y'$: 整数)のとき, $\widetilde{\alpha\alpha '} = \widetilde\alpha\widetilde{\alpha '}$ が成り立つことを示せ.
(4)
$x^2-2y^2 = 1$ の正の整数解 $(x,y)$ を用いて $x+y\sqrt 2$ の形に表される $1$ より大きい実数の最小値を $\varepsilon$ とおく. $\varepsilon$ の値を求めよ. また, $n$ を正の整数とするとき, \[\varepsilon ^n = x_n+y_n\sqrt 2 \quad \cdots [\ast ]\] により定まる整数の組 $(x_n,\ y_n)$ は, $x^2-2y^2 = 1$ の解であることを示せ. また, $x_n,$ $y_n$ を $n$ の式で表せ.
(5)
$(x,y)$ を $x^2-2y^2 = 1$ の正の整数解とする. このとき, $(x,y)$ はある正の整数 $n$ に対して上記の解 $(x_n,y_n)$ に一致することを示せ.
(6)
(1) のような石の個数を平方三角数と呼ぶ. 小さい方から数えて $n$ 番目の平方三角数を $n$ の式で表せ.

解答例

(1)
石の個数に関する条件により \[ l^2 = \sum_{k = 1}^mk = \frac{1}{2}m(m+1)\] が成り立つから, \begin{align*} &(2m+1)^2-2(2l)^2 = (2m+1)^2-8l^2 \\ &= (2m+1)^2-8\cdot\frac{1}{2}m(m+1) \\ &= (4m^2+4m+1)-(4m^2+4m) = 1 \end{align*} が成り立つ.
(2)
$x^2 = 2y^2+1$ は奇数だから, $x$ は奇数であり, $x = 2m+1$ ($m$: 非負整数)とおける. $x = 1$ とすると $-2y^2 = 0$ となり $y = 0$ となってしまうので, $x \geqq 3$ である. また, $y = 2k+1$ ($k$: 整数)とすると \[ x^2-2y^2 = 4(m^2+m-2k^2-2k)-1\] を $4$ で割った余りが $3 \neq 1$ となってしまうので, $y$ は偶数である. そこで, $y = 2l$ とおくと, \[ (2m+1)^2-8l^2 = 1\] から \begin{align*} l^2 &= \frac{(2m+1)^2-1}{8} = \frac{4m^2+4m}{8} \\ &= \frac{1}{2}m(m+1) = \sum_{k = 1}^mk \end{align*} となるので, $l,$ $m$ は題意を満たす.
(3)
$\alpha\alpha ' = (xx'+2yy')+(xy'+yx')\sqrt 2$ から, \begin{align*} \widetilde\alpha\widetilde{\alpha '} &= (x-y\sqrt 2)(x'-y'\sqrt 2) \\ &= (xx'+2yy')-(xy'+yx')\sqrt 2 = \widetilde{\alpha\alpha '} \end{align*} が成り立つ.
(4)
$x+y\sqrt 2$ は $x,$ $y$ に関してそれぞれ単調増加であり, $1^2-2\cdot 1^2 \neq 1,$ $1^2-2\cdot 2^2 \neq 1,$ $2^2-2\cdot 1^2 \neq 1,$ $2^2-2\cdot 2^2 \neq 1,$ $3^2-2\cdot 2^2 = 1$ であるから, \[\varepsilon = 3+2\sqrt 2\] である. よって, (3) の結果から \begin{align*} x_n{}^2-2y_n{}^2 &= (x_n+y_n\sqrt 2)(x_n-y_n\sqrt 2) \\ &= \varepsilon ^n\widetilde{\varepsilon ^n} = \varepsilon ^n\tilde\varepsilon ^n = (\varepsilon\tilde\varepsilon )^n \\ &= \{ (3+2\sqrt 2)(3-2\sqrt 2)\} ^n = 1^n = 1 \end{align*} が成り立つ. $[\ast ]$ の両辺の $\widetilde{\ \ }$ をとると, (3) の結果から \[ x_n-y_n\sqrt 2 = \tilde\varepsilon ^n \quad \cdots [\ast ]'\] となる. よって, $[\ast ],$ $[\ast ]'$ から \[ x_n = \frac{\varepsilon ^n+\tilde\varepsilon ^n}{2}, \quad y_n = \frac{\varepsilon ^n-\tilde\varepsilon ^n}{2\sqrt 2}\] が得られる.
(5)
$\varepsilon$ の最小性により, \[\varepsilon ^n \leqq x+y\sqrt 2 < \varepsilon ^{n+1}\] を満たす正の整数 $n$ が存在する. 両辺に $\varepsilon ^{-n}$ を掛けると, \[ 1 \leqq (x+y\sqrt 2)\varepsilon ^{-n} < \varepsilon\] となる. $\varepsilon ^{-1} = \dfrac{3-2\sqrt 2}{(3+2\sqrt 2)(3-2\sqrt 2)} = 3-2\sqrt 2$ であるので, 帰納法から \[ (x+y\sqrt 2)\varepsilon ^{-n} = x'+y'\sqrt 2\] を満たす整数 $x',$ $y'$ が存在することが分かる. (2) の結果から \[ (x-y\sqrt 2)\tilde\varepsilon ^{-n} = x'-y'\sqrt 2\] が成り立つので, 辺々を掛け合わせると \[ x'^2-2y'^2 = (x^2-2y^2)(\varepsilon\tilde\varepsilon )^{-n} = 1\] となる. よって, $\varepsilon$ の最小性により $x'+y'\sqrt 2 = 1$ が成り立つ. これから \[ x+y\sqrt 2 = \varepsilon ^n = x_n+y_n\sqrt 2\] となり, \[ (y-y_n)\sqrt 2 = x_n-x\] となるので, $\sqrt 2$ が無理数であることから $(x,y) = (x_n,y_n)$ となる.
(6)
(1) と (2) から平方三角数 $l^2$ と $x^2-2y^2 = 1$ の正の整数解 $(x,y)$ は $y = 2l$ により $1$ 対 $1$ に対応するから, 上記の結果により, $n$ 番目の平方三角数は \[\frac{y_n{}^2}{4} = \frac{\{ (3+2\sqrt 2)^n-(3-2\sqrt 2)^n\} ^2}{32}\] と表せる.

問題≪あるペル方程式の解の非存在≫

 $x^2-3y^2 = -1$ の整数解は存在しないことを示せ.

解答例

 $x,$ $y$ を整数とする.
(i)
$x = 3d$ ($d$: 整数)のとき. \[ x^2-3y^2 = (3d)^2-3y^2 = 3(3d^2-y^2)\] は $3$ で割り切れるから, $x^2-3y^2 \neq 1$ である.
(ii)
$x = 3d\pm 1$ ($d$: 整数)のとき. \[ x^2-3y^2 = (3d\pm 1)^2-3y^2 = 3(3d^2\pm 2d-y^2)+1\] を $3$ で割った余りは $1$ であり, $-1$ を $3$ で割った余りは $2$ であるから, $x^2-3y^2 \neq 1$ である.
(i), (ii) から, $x^2-3y^2 = -1$ は整数解を持たない.

問題≪ペル方程式の平方根の近似計算への応用≫

 数列 $\{ a_n\},$ $\{ b_n\}$ を \[ a_1 = 3, \quad b_1 = 2, \quad a_{n+1} = 2a_n{}^2-1, \quad b_{n+1} = 2a_nb_n\] で定めるとき, 極限 $\lim\limits_{n \to \infty}\dfrac{a_n}{b_n}$ の値を求めよ.

解答例

 準備中.

問題≪ブラーマグプタの三角形の一般形≫

 $3$ 辺の長さが $b-1,$ $b,$ $b+1$ である三角形の面積 $S$ が整数であるとする. このとき, $b$ は偶数であり, $x = \dfrac{b}{2}$ とおくと, ある正の整数 $y$ について $x^2-3y^2 = 1$ となることを示せ. 次の「ヘロンの公式」と呼ばれる公式は, 証明なしに用いて良い: $3$ 辺の長さが $a,$ $b,$ $c$ である三角形の面積 $S$ は, $s = \dfrac{a+b+c}{2}$ とおくと, \[ S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}\] で与えられる.

解答例

 「ヘロンの公式」により, \begin{align*} S &= \sqrt{\frac{3b}{2}\left(\frac{3b}{2}-b+1\right)\left(\frac{3b}{2}-b\right)\left(\frac{3b}{2}-b-1\right)} \\ &= \frac{\sqrt{3b(b+2)b(b-2)}}{4} \\ &= \frac{b\sqrt{3(b^2-4)}}{4} \end{align*} $b$ が奇数であるとすると, $b^2-4$ も奇数となり, 右辺の分子は奇数となってしまい, $S$ が整数であることに反する. よって, $b$ は偶数である. そこで, $x = \dfrac{b}{2}$ とおくと, \[ S = \frac{2x\sqrt{3(4x^2-4)}}{4} = x\sqrt{3(x^2-1)}\] となる. これは整数なので, ある正の整数 $y$ に対して $x^2-1 = 3y^2$ つまり $x^2-3y^2 = 1$ となる.

解説≪ブラーマグプタの三角形≫

 $3$ 辺の長さと面積が整数であるような三角形を「ヘロンの三角形」と呼び, そのうち $3$ 辺の長さが連続する整数であるものを「ブラーマグプタの三角形」と呼ぶ. 「ペル方程式」$x^2-3y^2 = 1$ のすべての正の整数解は \[ (x,y) = \left(\frac{(2\!+\!\sqrt 3)^n\!+\!(2\!-\!\sqrt 3)^n}{2},\frac{(2\!+\!\sqrt 3)^n\!-\!(2\!-\!\sqrt 3)^n}{2\sqrt 3}\right)\] で与えられるから, すべての「ブラーマグプタの三角形」の $2$ 番目に長い辺の長さ $b$ は \[ b = 2x = (2+\sqrt 3)^n+(2-\sqrt 3)^n \quad \cdots [1]\] で与えられる.
 これを一般化して, $3$ 辺の長さが $b-d,$ $b,$ $b+d$ ($d$ は正の整数)である「ヘロンの三角形」を考えてみよう. 上と同様の議論により, $b$ は偶数であり, $x = \dfrac{b}{2}$ とおくと, 面積 \[ x\sqrt{3(x^2-d^2)}\] が整数であることから, ある整数 $y$ について \[ x^2-3y^2 = d^2 \quad \cdots [2]\] となることが分かる. \[ X^2-3Y^2 = 1\] の整数解 $(X,Y)$ に対して, $(dX,dY)$ は $[\ast ]$ の解となるから, $b$ の値の例として \[ b = \left( (2+\sqrt 3)^n+(2-\sqrt 3)^n\right) d\] ($n$ は正の整数)がとれる. しかし, $b$ の値はこれで尽くされているだろうか. $x,$ $y$ が $d$ と互いに素であるような $[2]$ の整数解 $(x,y)$ が存在する可能性がある. そのような解の存在を仮定すると, $x^2 \equiv 3y^2 \pmod{d^2}$ から合同式 \[ t^2 \equiv 3 \pmod{d^2} \quad\cdots [3]\] の解が存在することになる. $d$ が偶数のとき, $d$ が $3$ の倍数のとき, $d = 5,$ $7$ のときは, $[3]$ が解を持たないことから, $b$ は $[1]$ の形のものに限られる. しかし, $d = 11$ のときは \[ 13^2-3\cdot 4^2 = 11^2\] から, $b = 26$ も条件を満たす.