COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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微分法の方程式・不等式への応用

不等式への応用

 不等式 $f(x) \leqq g(x)$ を示すには, 関数 $h(x) = g(x)-f(x)$ の最小値が $0$ 以上であることを示せばよい. $h(x) \geqq 0$ を示すには, $h(x)$ の増減を調べる方法が有用である.

問題≪指数関数の近似と相加・相乗平均の不等式≫

(1)
すべての実数 $x$ に対して, 不等式 $x \leqq e^{x-1}$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
(2)
正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ が $x_1+\cdots +x_n = n$ を満たすとき, $x_1\cdots x_n \leqq 1$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
(3)
正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ に対して $a = \dfrac{x_1+\cdots +x_n}{n}$ とおくとき, \[ x_1\cdots x_n \leqq a^n\] が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
[2008 横浜市立大*]

解答例

(1)
$f(x) = e^{x-1}-x$ とおく. このとき, $f'(x) = e^{x-1}-1$ から, \[ f'(x) \leqq 0 \iff x \leqq 1, \quad f'(x) \geqq 0 \iff x \geqq 1\] である. よって, $f(x)$ は $x = 1$ で極小かつ最小となるので, $f(x) \geqq f(1) = 0$ から $e^{x-1}-x \geqq 0$ つまり $x \leqq e^{x-1}$ が成り立ち, 等号成立は $x = 1$ の場合に限る.
(2)
(1) から, \[ x_1\cdots x_n \leqq e^{x_1-1}\cdots e^{x_n-1} = e^{x_1+\cdots +x_n-n} = e^0 = 1\] が成り立ち, 等号成立は $x_1 = \cdots = x_n = 1$ の場合に限る.
(3)
$a = \dfrac{x_1+\cdots +x_n}{n}$ から $\dfrac{x_1}{a}+\cdots +\dfrac{x_n}{a} = n$ であるので, (2) から
$\dfrac{x_1}{a}\cdots\dfrac{x_n}{a} \leqq 1$ つまり $x_1\cdots x_n \leqq a^n$
が成り立ち, 等号成立は $\dfrac{x_1}{a} = \cdots = \dfrac{x_n}{a} = 1,$ つまり $x_1 = \cdots = x_n$ の場合に限る.

問題≪円に内接する $n$ 角形の面積の最大値≫

(1)
$n$ を $2$ 以上の整数とし, $t_1,$ $\cdots,$ $t_n \geqq 0,$ $t_1+\cdots +t_n = 1$ とする. $x_1,$ $\cdots,$ $x_n \in (0,\pi )$ のとき, \[\sin\left(\sum_{k = 1}^nt_kx_k\right) \geqq \sum_{k = 1}^nt_k\sin x_k\] が成り立つことを示せ. また, 等号成立は $x_1 = \cdots = x_n$ のときに限ることを示せ.
(2)
$3$ 以上の整数 $n$ に対して, 単位円に内接する $n$ 角形のうち面積 $S$ が最大になるものは正 $n$ 角形であることを示せ.

解答例

(1)
(i)
$n = 2$ のとき. $x_2$ を定数とみなして, $x_1$ の関数 \begin{align*} f(x_1) &= \sin (t_1x_1+t_2x_2) \\ &\qquad -t_1\sin x_1-t_2\sin x_2\ (0 < x_1 < \pi ) \end{align*} を考える. \[ f'(x_1) = t_1\cos (t_1x_1+t_2x_2)-t_1\cos x_1\] であり, $\cos x$ ($0 < x < \pi $)は単調減少であるから, $t_1x_1+t_2x_2 \leqq x_1$ つまり $x_1 \leqq x_2$ のとき $f'(x_1) \leqq 0$ であり, $t_1x_1+t_2x_2 \geqq x_1$ つまり $x_1 \geqq x_2$ のとき $f'(x_1) \geqq 0$ である. よって, $f(x_1) \geqq f(x_2) = 0$ であるから, \begin{align*} &\sin (t_1x_1+t_2x_2) \\ &\qquad \geqq t_1\sin x_1+t_2\sin x_2\ (0 < x_1 < \pi ) \end{align*} が成り立ち, 等号成立は $x_1 = x_2$ のときに限る.
(ii)
$n = m$ ($m$: $2$ 以上の整数)のとき, 不等式と等号成立条件が成り立つとする. $n = m+1$ の場合に, $s = t_1+\cdots +t_m$ とおく. $s = 0$ のとき, $t_1 = \cdots = t_m = 0$ であるから, 不等式の両辺は等しい. $s > 0$ のとき, \[ u_k = \frac{t_k}{s} \quad (1 \leqq k \leqq m)\] とおくと, (i) の結果と帰納法の仮定から \begin{align*} &\sin\left(\sum_{k = 1}^{m+1}t_kx_k\right) \\ &= \sin\left(\sum_{k = 1}^mt_kx_k+t_{m+1}x_{m+1}\right) \\ &= \sin\left( s\sum_{k = 1}^mu_kx_k+t_{m+1}x_{m+1}\right) \\ &\geqq s\sin\left(\sum_{k = 1}^mu_kx_k\right) +t_{m+1}\sin x_{m+1} \\ &\geqq s\sum_{k = 1}^mu_k\sin x_k+t_{m+1}\sin x_{m+1} \\ &= \sum_{k = 1}^mt_k\sin x_k+t_{m+1}\sin x_{m+1} \\ &= \sum_{k = 1}^{m+1}t_k\sin x_k \end{align*} となる. よって, $n = m+1$ のとき不等式が成り立ち, 等号成立は, $\sum\limits_{k = 1}^mu_kx_k = x_{m+1},$ $x_1 = \cdots = x_m,$ つまり $x_1 = \cdots = x_m = x_{m+1}$ のときに限る.
(i), (ii) から, $2$ 以上のすべての整数 $n$ に対して不等式, 等号成立条件が成り立つ.
(2)
$n$ 角形 $\mathrm P_1\cdots\mathrm P_n$ が単位円 $\mathrm O$ に内接するとする. このとき, $\mathrm P_{n+1} = \mathrm P_1$ として, $\theta _k = \angle\mathrm P_k\mathrm{OP}_{k+1}$ とおくと, \begin{align*} S &= \sum_{k = 1}^n\triangle\mathrm{OP}_k\mathrm P_{k+1} \\ &= \sum_{k = 1}^n\frac{1}{2}\sin\theta _k \\ &= \frac{n}{2}\sum_{k = 1}^n\frac{\sin\theta _k}{n} \\ &\leqq \frac{n}{2}\sin\left(\sum_{k = 1}^n\frac{\theta _k}{n}\right) \end{align*} となる. 等号成立は $\theta _1 = \cdots = \theta _n$ であるときに限るから, 単位円に内接する $n$ 角形のうち面積 $S$ が最大になるものは正 $n$ 角形である.