COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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円周率

理論

アルキメデスの開平法

 次の不等式は, 平方根の近似値を得るために, アルキメデスの時代に用いられたと思われるものである.

定理≪アルキメデスの開平法≫

 正の整数 $a,$ $b$ が $b < 2a\pm 1$ を満たすとき, \[ a\pm\frac{b}{2a\pm 1} < \sqrt{a^2\pm b} < a\pm\frac{b}{2a}\] が成り立つ.

証明

 $\sqrt{a^2\pm b} = a\pm c$ とおく. このとき, \[ a^2\pm b = (a\pm c)^2 > a^2\pm 2ac\] から $\pm b > \pm 2ac$ つまり $\pm c < \pm\dfrac{b}{2a}$ となるので, 右側の不等式が得られる. また, $0 < c < 1$ から $c^2 < c$ であることに注意すると, \[ a^2\pm b = (a\pm c)^2 < a^2\pm 2ac+c\] から $\pm b < \pm c(2a\pm 1)$ つまり $\pm\dfrac{b}{2a\pm 1} < \pm c$ となるので, 左側の不等式が得られる.

例≪$\sqrt 3$ の近似値≫

 $3 = 2^2-1$ から, \[ 2-\frac{1}{2\cdot 2-1} < \sqrt 3 < 1-\frac{1}{2\cdot 2}\] つまり \[\frac{5}{3} < \sqrt 3 < \frac{7}{4}\] が成り立つ. よって, $\dfrac{20}{3} < 4\sqrt 3 < 7$ から, $4\sqrt 3 = \sqrt{48}$ に最も近い整数は $7$ であることが見出せる. $48 = 7^2-1$ から, \[ 2-\frac{1}{2\cdot 7-1} < 4\sqrt 3 < 2-\frac{1}{2\cdot 7}\] つまり \[\frac{90}{13} < 4\sqrt 3 < \frac{97}{14}\] が成り立ち, \[\frac{45}{26} < \sqrt 3 < \frac{97}{56}\] が成り立つ. よって, $\dfrac{1260}{13} < 56\sqrt 3 < 97$ から, $56\sqrt 3 = \sqrt{9408}$ に最も近い整数は $97$ であるであることが見出せる. $9408 = 97^2-1$ から, \[ 2-\frac{1}{2\cdot 97-1} < 56\sqrt 3 < 2-\frac{1}{2\cdot 97}\] つまり \[\frac{18720}{193} < 56\sqrt 3 < \frac{18817}{194}\] が成り立ち, \[\frac{2340}{1351} < \sqrt 3 < \frac{18817}{10864}\] が成り立つ. \begin{align*} \frac{2340}{1351} &= 1.7320503\cdots, \\ \frac{18817}{10864} &= 1.7320508\cdots, \\ \end{align*} であるから, $\sqrt 3$ の近似値を小数第 $6$ 位まで求めることができた.
 $\sqrt 3$ の近似値は円周率の近似値の計算に利用された. このことについては, 機会があれば解説したい.

補足≪アルキメデスの開平法の一般化≫

 正の整数 $a,$ $b,$ $n$ が $b < (a+1)^n-a^n$ を満たすとき, \[ a+\frac{b}{(a+1)^n-a^n} < \sqrt[n]{a^n+b} < a+\frac{b}{na^{n-1}}\] が成り立つ.

問題

数学 II: 式と証明

問題≪アルキメデスの開平法≫

(1)
正の整数 $a,$ $b$ が $b < 2a-1$ を満たすとき, \[ a-\frac{b}{2a-1} < \sqrt{a^2-b} < a-\frac{b}{2a}\] が成り立つことを示せ.
(2)
$48 = 7^2-1$ であることを利用して, $\sqrt 3$ の近似値を小数第 $2$ 位まで求めよ.

解答例

(1)
$\sqrt{a^2-b} < a-\dfrac{b}{2a}$ を示すには, $2a\sqrt{a^2-b} < 2a^2-b$ つまり $4a^2(a^2-b) < (2a^2-b)^2$ が成り立つことを示せば良い. これは \begin{align*} &4a^2(a^2-b)-(2a^2-b)^2 \\ &= (4a^4-4a^2b)-(4a^4-4a^2b+b^2) \\ &= b^2 > 0 \end{align*} から成り立つ.
また, $a-\dfrac{b}{2a-1} < \sqrt{a^2-b}$ を示すには, $(2a-1)a-b < (2a-1)\sqrt{a^2-b}$ つまり $((2a-1)a-b)^2 < (2a-1)^2(a^2-b)$ が成り立つことを示せば良い. これは \begin{align*} &(2a-1)^2(a^2-b)-((2a-1)a-b)^2 \\ &= (2a-1)^2(a^2-b) \\ &\qquad -(2a-1)^2a^2+2(2a-1)ab-b^2 \\ &= -4a^2b+4ab-b+4a^2b-2ab-b^2 \\ &= 2ab-b-b^2 \\ &= b(2a-1-b) > 0 \end{align*} から成り立つ.
(2)
こちらを参照.

問題≪ビエタの公式≫

(1)
すべての角 $\theta$ と正の整数 $n$ に対して \[\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^n}\sin\frac{\theta}{2^n} = \frac{1}{2^n}\sin\theta\] が成り立つことを示せ.
(2)
(1) の結果を用いて \[\lim\limits_{n \to \infty}\cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}} = \frac{2}{\pi}\] が成り立つことを示せ.

解答例

(1)
倍角の公式により, \begin{align*} &\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^n}\sin\frac{\theta}{2^n} \\ &= \frac{1}{2}\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^{n-1}}\sin\frac{\theta}{2^{n-1}} \\ &= \cdots \\ &= \frac{1}{2^{n-1}}\cos\frac{\theta}{2}\sin\frac{\theta}{2} \\ &= \frac{1}{2^n}\sin\theta \end{align*} が成り立つ.
(2)
(1) の結果に $\theta = \dfrac{\pi}{2}$ を代入すると, \begin{align*} &\cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}} = \frac{1}{2^n}\div\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} \\ &= \frac{2}{\pi}\cdot\frac{\pi}{2^{n+1}}\div\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} \\ &\to \frac{2}{\pi}\cdot 1 = \frac{2}{\pi} \quad (n \to \infty ) \end{align*} となり, 求める結果が得られる.

補足

 (2) の結果はビエタの公式と呼ばれる(Vieta, 1593). 半角の公式 $\cos\dfrac{\theta}{2} = \sqrt{\dfrac{1+\cos\theta}{2}}$ により \begin{align*} \cos\frac{\pi}{4} &= \frac{\sqrt 2}{2}, \\ \cos\frac{\pi}{8} &= \frac{\sqrt{1+\dfrac{\sqrt 2}{2}}}{2} = \frac{\sqrt{2+\sqrt 2}}{2}, \\ \cos\frac{\pi}{16} &= \frac{\sqrt{1+\dfrac{\sqrt{2+\sqrt 2}}{2}}}{2} = \frac{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}}{2},\ \cdots \end{align*} であるから, この公式は \[\pi = 2\cdot\frac{2}{\sqrt 2}\cdot\frac{2}{\sqrt{2+\sqrt 2}}\cdot\frac{2}{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}}\cdot\cdots\] という形でも表される. この公式は, $\pi$ を表す式としてはヨーロッパで初めて発見されたものである. それ以前には, $\tan x$ の逆関数の展開公式がインドのケーララ学派の間で知られていた.