有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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平面上の点

平面上の点

定理《$2$ 点間の距離の公式》

 座標平面上の $2$ 点 $(x_1,y_1),$ $(x_2,y_2)$ の間の距離 $d$ は, \[ d = \sqrt{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2}\] である. 

問題《距離の公式による中線定理の証明》

 $\triangle\mathrm{ABC}$ において, 辺 $\mathrm{BC}$ の中線を $\mathrm M$ とおく. \[\mathrm{AB}^2+\mathrm{AC}^2 = 2(\mathrm{AM}^2+\mathrm{BM}^2) = 2(\mathrm{AM}^2+\mathrm{CM}^2)\] が成り立つことを, $2$ 点間の距離の公式を使って示せ.
基本定理$2019/03/28$$2022/08/25$

解答例

 点 $\mathrm M$ を原点, 半直線 $\mathrm{MC}$ を $x$ 軸の $0$ 以上の部分として, $x$ 軸, $y$ 軸を定める.
$\mathrm A(p,q),$ $\mathrm C(r,0)$ とおくと, $\mathrm B(-r,0)$ となるから, \[\begin{aligned} \mathrm{AB}^2+\mathrm{AC}^2 &= \{ (p+r)^2+q^2\} +\{ (p-r)^2+q^2\} \\ &= 2\{ (p^2+q^2)+r^2\} \\ &= 2(\mathrm{AM}^2+\mathrm{BM}^2) = 2(\mathrm{AM}^2+\mathrm{CM}^2) \end{aligned}\] が成り立つ.

参考

  • 本問の結果は,「中線定理」(parallelogram law) として知られており, 「スチュワートの定理」(こちらを参照) の特別な場合である.
  • 「中線定理」の別証明については, 余弦定理による証明 (こちら) と, ベクトルによる証明 (こちら), 複素数による証明 (こちら) も参照されたい.

問題《シュタインハウスの問題》

 $xy$ 平面において $x$ 座標, $y$ 座標が整数である点を「格子点」と呼ぶ. 点 $\mathrm C\left(\sqrt 2,\dfrac{1}{3}\right)$ からそれぞれの「格子点」までの距離はすべて異なることを示せ. $\sqrt 2$ が無理数であることは証明なしに使ってよい.
(参考: $1977$ 香川大)
標準素朴$2016/12/10$$2022/05/24$

解答例

 $\mathrm P(x,y),$ $\mathrm P'(x',y')$ を「格子点」とし, $\mathrm{CP} = \mathrm{CP}'$ として, $\mathrm P = \mathrm P'$ を示す. このとき, $\mathrm{CP}^2 = \mathrm{CP}'{}^2$ から, \[ (x-\sqrt 2)^2+\left( y-\frac{1}{3}\right) ^2 = (x'-\sqrt 2)^2+\left( y'-\frac{1}{3}\right) ^2\] が成り立つ. 両辺を展開して整理すると, \[ 2(x-x')\sqrt 2 = x^2-x'{}^2+y^2-y'{}^2-\frac{2}{3}(y-y')\] となる. $\sqrt 2$ が無理数で $x,$ $x'$ が整数であるから, 左辺は $0$ か無理数である. 一方, $x,$ $y,$ $x',$ $y'$ は整数であるから, 右辺は有理数である. よって, $x-x' = 0$ つまり $x = x'$ である. このとき, \[ 0 = y^2-y'{}^2-\frac{2}{3}(y-y') = \left( y+y'-\frac{2}{3}\right) (y-y')\] となる. $y+y'$ が整数であることから $y+y'-\dfrac{2}{3} \neq 0$ であり, $y-y' = 0$ から $y = y'$ が得られる. よって, $\mathrm P = \mathrm P'$ である.
 ゆえに, 点 $\mathrm C$ からそれぞれの「格子点」までの距離はすべて異なる.

参考

  • すべての正の整数 $n$ に対して, ちょうど $n$ 個の「格子点」を含むような円は存在するかという「シュタインハウスの問題」は, $1957$ 年にシュタインハウス (H. Steinhaus) によって提起され, 上記の命題を示すことでシェルピンスキー (W. Sierpinski) によって肯定的に解決された. つまり, 点 $\mathrm C$ を中心とする円の半径を大きくしていくと, 円に含まれる「格子点」は $1$ 個ずつ増えていく.
  • これとは別に, ちょうど $n$ 個の「格子点」を通る円周は存在するかという問題も, $1958$ 年にシンゼル (A. Schinzel) によって肯定的に解決されている.
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