COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

数式を枠からはみ出さずに表示するためには, 画面を横に傾けてください(532 ピクセル以上推奨).

剰余の定理・因数定理

理論

 本稿では,特に断りのない限り, 多項式の係数, 方程式の解は, ある共通の体(結合法則, 交換法則, 分配法則を満たす四則演算の定義された集合; 例えば複素数全体の集合) $F$ において考察する.

剰余の定理

定理≪剰余の定理(Remainder theorem)≫

 多項式 $f(x)$ を $1$ 次式 $x-\alpha$ で割った余りは, $f(\alpha ).$

証明

 $f(x)$ を $x-\alpha$ で割った商を $q(x),$ 余りを $r$ とおくと, $$f(x) = (x-\alpha )q(x)+r.$$ $x = \alpha$ を代入すると, $$f(\alpha ) = (\alpha -\alpha )q(\alpha )+r = 0\cdot q(\alpha )+r = r.$$

例≪剰余の定理≫

 多項式 $f(x) = x^3+2x^2+3x+4$ について, $$f(-1) = (-1)^3+2(-1)^2+3(-1)+4 = 2$$ より, $f(x)$ を $x+1$ で割った余りは, $2.$
これは, 次の計算からも分かる. $$\begin{array}{rrrrrr} {} & 1 & 2 & 3 & 4 & |\!\underline{\ -1\ } \\ +) & {} & -1 & -1 & -2 & {} \\ \hline {} & 1 & 1 & 2 & |\!\underline{\ 2\ } & {} \end{array}$$

因数定理

定理≪因数定理(Factor theorem)≫

 多項式 $f(x)$ が $1$ 次式 $x-\alpha$ で割り切れる $\iff$ $f(\alpha ) = 0.$

証明

 剰余の定理より, $f(x)$ を $x-\alpha$ で割った余りは, $f(\alpha ).$
ゆえに, $f(x)$ が $x-\alpha$ で割り切れる $\iff$ $f(\alpha ) = 0.$

例≪因数定理を用いた因数分解≫

 多項式 $f(x) = x^3+x^2+x+1$ について, $$f(-1) = (-1)^3+(-1)^2+(-1)+1 = 0$$ より, $f(x)$ は $x+1$ で割り切れる.
実際, $f(x)$ は次のように因数分解できる: \begin{align*} f(x) &= x^2(x+1)+(x+1) \\ &= (x+1)(x^2+1) \cdots (\ast ) \\ &= (x+1)(x+\mathrm i)(x-\mathrm i). \end{align*} $(\ast )$ は, 次の計算からも分かる. $$\begin{array}{rrrrrr} {} & 1 & 1 & 1 & 1 & |\!\underline{\ -1\ } \\ +) & {} & -1 & 0 & -1 & {} \\ \hline {} & 1 & 0 & 1 & |\!\underline{\ 0\ } & {} \end{array}$$

問題

剰余の定理

問題≪$n$ 次式を $2$ 次式で割った余り≫

 $x^n$ を $x^2-5x+6$ で割った余りを求めよ.

解答例

 $x^n$ を $x^2-5x+6 = (x-2)(x-3)$ で割った商を $q(x),$ 余りを $ax+b$ とおくと, \[ x^n = (x-2)(x-3)q(x)+ax+b.\] このとき, \[ 2^n = 2a+b, \quad 3^n = 3a+b.\] これを解くと, \[ a = 3^n-2^n, \quad b = 2^n-2(3^n-2^n) = 3\cdot 2^n-2\cdot 3^n.\] ゆえに, 求める余りは, $(3^n-2^n)x+(3\cdot 2^n-2\cdot 3^n).$

問題≪$2$ 個の $1$ 次式とその積で割った余り≫

 多項式 $f(x)$ の定数項が $1$ で, $x-2$ で割った余りが $3$ であるとき, $f(x)$ を $x^2-2x$ で割った余りを求めよ.

解答例

 多項式 $f(x)$ を $x^2-2x = x(x-2)$ で割ったときの余りは $1$ 次式または定数だから, このときの商を $q(x),$ 余りを $ax+b$ ($a,$ $b$: 定数)とおくと, $$f(x) = x(x-2)q(x)+ax+b \cdots [1].$$ $f(x)$ の定数項が $1$ で, $x-2$ で割った余りが $3$ だから, 剰余の定理より, $$f(0) = 1 \cdots [2],\quad f(2) = 3 \cdots [3].$$ $[1],$ $[2],$ $[3]$ より, \begin{align*} &b = 1,\quad 2a+b = 3. \\ \therefore&a = b = 1. \end{align*} ゆえに, 求める余りは, $x+1.$

問題≪$1$ 次式と $1$ 次式の平方とその積で割った余り≫

 多項式 $f(x)$ を $x-1$ で割った余りが $1$ で, $(x-2)^2$ で割った余りが $2x+1$ であるとき, $f(x)$ を $(x-1)(x-2)^2$ で割った余りを求めよ.

解答例

 多項式 $f(x)$ を $(x-1)(x-2)^2$ で割ったときの余りは $2$ 次以下の多項式または $0$ だから, このときの商を $q(x),$ 余りを $ax^2+bx+c$ ($a,$ $b,$ $c$: 定数)とおくと, $$f(x) = (x-1)(x-2)^2q(x)+ax^2+bx+c.$$ $f(x)$ を $x-1$ で割った余りが $1$ だから, 剰余の定理より, \begin{align*} f(1) &= 1. \\ \therefore a+b+c &= 1 \cdots [1]. \end{align*} また, $(x-1)(x-2)^2q(x)$ は $(x-2)^2$ で割り切れるから, $f(x)$ を $(x-2)^2$ で割った余りは $ax^2+bx+c$ を $(x-2)^2 = x^2-4x+4$ で割った余りに等しく, $(4a+b)x+(c-4a).$
これが $2x+1$ に等しいから, \begin{align*} 4a+b &= 2 \cdots [2], \\ c-4a &= 1 \cdots [3]. \end{align*} $[1],$ $[2],$ $[3]$ を連立して解くと, $$a = -2,\quad b = 10,\quad c = -7.$$ ゆえに, 求める余りは, $-2x^2+10x-7.$

問題≪$x^n$ を $2$ 次式で割った商と余り≫

 $n$ を $2$ 以上の整数とする. $x^n$ を $(x-1)(x-2)$ で割った商を $q(x),$ 余りを $r(x)$ とおく.
(1)
$r(x)$ を求めよ.
(2)
$(x-2)q(x) = (x^{n-1}-2^{n-1})+\cdots +(x-2)$ が成り立つことを示せ.
(3)
\[ x^k\!-\!2^k = (x\!-\!2)(x^{k-1}\!+\!2x^{k-2}\!+\!\cdots\!+\!2^{k-2}x\!+\!2^{k-1})\] を用いて, $q(x)$ の $x^k$ $(0 \leqq k \leqq n-2)$の係数を求めよ.
[旭川医大 2008*]

解答例

(1)
$q(x),$ $r(x)$ の定め方から $r(x) = ax+b$ とおけて, \[ x^n = (x-1)(x-2)q(x)+ax+b\] となる. $x = 1,$ $x = 2$ を代入すると, \[ 1 = a+b, \quad 2^n = 2a+b.\] これを $a,$ $b$ について解くと \[ a = 2^n-1, \quad b = 2-2^n\] となるから, \[ r(x) = (2^n-1)x-2^n+2.\]
(2)
(1) の結果から, \[ x^n = (x-1)(x-2)q(x)+(2^n-1)x-2^n+2.\] よって, \begin{align*} &(x-1)(x-2)q(x) = x^n-(2^n-1)x+2^n-2 \\ &= x^n-1-(2^n-1)x+2^n-1 \\ &= (x-1)(x^{n-1}+\cdots +x+1)-(2^n-1)(x-1) \\ &= (x-1)(x^{n-1}+\cdots +x+1-2^n+1). \end{align*} 両辺を $x-1$ で割ると, \[ (x-2)q(x) = x^{n-1}+\cdots +x+1-2^n+1.\] 一方, \[ 2^{n-1}+\cdots +1 = \frac{2^n-1}{2-1} = 2^n-1\] であるから, \[ (x-2)q(x) = (x^{n-1}-2^{n-1})+\cdots +(x-2)\ \cdots [1].\]
(3)
$[1]$ の右辺にヒントの式を適用すると,
$(x-2)q(x)$
\begin{align*} = (x-2)(x^{n-2}+2x^{n-3}+\cdots +2^{n-3}x+2^{n-2}) \\ +(x-2)(x^{n-3}+\cdots +2^{n-4}x+2^{n-3}) \\ \vdots\ \ \ \\ +(x-2)(x+2) \\ +(x-2). \end{align*} 両辺を $x-2$ で割ると, \begin{align*} q(x) = x^{n-2}+2x^{n-3}+\cdots +2^{n-3}x+2^{n-2} \\ +x^{n-3}+\cdots +2^{n-4}x+2^{n-3} \\ \vdots\ \ \ \\ +x+2 \\ +1. \end{align*} よって, $x^k$ の係数は, \[ 1+2+\cdots +2^{n-k-2} = \frac{2^{n-k-1}-1}{2-1} = 2^{n-k-1}-1.\]

因数定理

問題≪多項式の一致と代入値の一致≫

 $2$ 次多項式 $f(x),$ $g(x)$ に対して, 次の条件は同値であることを示せ:
(i)
$f(x) = g(x).$ 
(ii)
相異なる $3$ つの値 $\alpha _1,$ $\alpha _2,$ $\alpha _3$ に対して, $f(\alpha _i) = g(\alpha _i) \quad (1 \leqq i \leqq 3).$

解答例

(i) $\Longrightarrow$ (ii): 明らか.
(ii) $\Longrightarrow$ (i): (ii) を仮定する.
$h(x) = f(x)-g(x)$ とおくと, $h(x)$ は $2$ 次以下の多項式または $0$ である. このとき, $$h(\alpha _1) = f(\alpha _1)-g(\alpha _1) = 0.$$ 因数定理より, $h(x)$ は $(x-\alpha _1)$ で割り切れるから, $1$ 次多項式または定数 $q(x)$ を用いて $$h(x) = (x-\alpha _1)q(x)$$ と書ける. \begin{align*} &h(\alpha _2) = f(\alpha _2)-g(\alpha _2) = 0. \\ \therefore&(\alpha _2-\alpha _1)q(\alpha _2) = 0. \end{align*} $\alpha _1 \neq \alpha _2$ より, $$q(\alpha _2) = 0.$$ 因数定理より, $q(x)$ は $(x-\alpha _2)$ で割り切れるから, ある定数 $c$ を用いて \begin{align*} q(x) &= c(x-\alpha _2), \\ f(x) &= c(x-\alpha _1)(x-\alpha _2). \end{align*} と書ける. \begin{align*} &h(\alpha _3) = f(\alpha _3)-g(\alpha _3) = 0. \\ \therefore&c(\alpha _3-\alpha _1)(\alpha _3-\alpha _2) = 0. \end{align*} $\alpha _1 \neq \alpha _3,$ $\alpha _2 \neq \alpha _3$ より, \begin{align*} c &= 0. \\ \therefore h(x) &= 0. \\ \therefore f(x) &= g(x). \end{align*}