COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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無限級数

無限等比級数

定理≪無限等比級数の収束・発散≫

 $a,$ $r$ を実数とし, $\{ a_n\}$ を初項 $a,$ 公比 $r$ の無限等比数列とする.
(1)
$a \neq 0,$ $|r| < 1$ ならば, \[\sum_{n = 1}^\infty a_n = \frac{a}{1-r}\] が成り立つ.
(2)
$a \neq 0,$ $|r| \geqq 1$ のとき, $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty a_n$ は発散する.
(3)
$a = 0$ のとき, $\displaystyle\sum_{n = 1}^\infty a_n = 0$ である.

証明

 等比数列の和の公式により, \[\sum_{k = 1}^nar^{n-1} = \begin{cases} \dfrac{a(1-r^n)}{1-r} & (r \neq 1), \\ na & (r = 1) \end{cases}\] が成り立つ. $\{ r^n\}$ は, $|r| < 1$ のとき $0$ に収束し, $r > 1$ のとき発散し, $r \leqq -1$ のとき振動する. これから, 求める結果が得られる.

問題≪黄金長方形にまつわる無限等比級数≫

 $\varphi = \dfrac{1+\sqrt 5}{2}$ のとき, 無限等比級数 $\displaystyle\sum_{n = 0}^\infty (\varphi -1)^{2n}$ の和を求めよ.

解答例

 $1 < \sqrt 5 < 3$ から $0 < -1+\sqrt 5 < 2$ であり, \[ 0 < \varphi -1 = \dfrac{-1+\sqrt 5}{2} < 1, \quad 0 < (\varphi -1)^2 < 1\] であるので, 無限等比級数 $\displaystyle\sum_{n = 0}^\infty (\varphi -1)^{2n}$ は収束して, 求める和は \begin{align*} \sum_{n = 0}^\infty (\varphi -1)^{2n} &= \frac{1}{1-(\varphi -1)^2} = \frac{1}{2\varphi -\varphi ^2} \\ &= \frac{1}{2\varphi -(\varphi +1)} \quad (\because\varphi ^2 -\varphi -1 = 0) \\ &= \frac{1}{\varphi -1} = \frac{2}{\sqrt 5-1} = \frac{2(\sqrt 5+1)}{(\sqrt 5-1)(\sqrt 5+1)} \\ &= \frac{2(\sqrt 5+1)}{4} = \frac{1+\sqrt 5}{2} = \varphi \end{align*} である.

背景

 短辺の長さが $1,$ 長辺の長さが $\varphi = \dfrac{1+\sqrt 5}{2}$ の長方形 $R$ の端から $1$ 辺の長さが $1$ の正方形を取り除くと, 短辺の長さが $\varphi -1,$ 長辺の長さが $1$ の長方形 $R'$ が得られるが,
$\varphi ^2-\varphi -1 = 0$ つまり $1:\varphi = (\varphi -1):1$
から, $R$ と $R'$ は $1:(\varphi -1)$ の比で相似である.
さらに, 残りの長方形の端から正方形を取り除くという操作を無限に繰り返すことによって, 長方形 $R$ のすべての部分を取りつくすことができる. 辺の長さの比が $1:\varphi$ の長方形を「黄金長方形」(golden rectangle)と呼ぶ.

問題≪コッホ雪片≫

 $1$ 辺の長さが $1$ の正三角形を $K_0$ として, 次のような規則で多角形 $K_n$ $(n \geqq 0)$ を順次定めていく. 多角形 $K_n$ の各辺において, 辺を $3$ 等分する $2$ 点を頂点とするような正三角形を $K_n$ の外側に貼りあわせ, できた多角形を $K_{n+1}$ とする.
(1)
多角形 $K_n$ の周の長さを $L_n$ とおく. 極限 $\lim\limits_{n \to \infty}L_n$ を求めよ.
(2)
多角形 $K_n$ の面積を $S_n$ とおく. 極限 $\lim\limits_{n \to \infty}S_n$ を求めよ.
[2010 北海道大*]

解答例

(1)
$K_n$ から $K_{n+1}$ を作るとき, $K_n$ の各辺はその $\dfrac{1}{3}$ 倍の長さの辺 $4$ 本になるから, $L_{n+1} = \dfrac{4}{3}L_n$ が成り立つ.
よって, \[ L_n = \left(\frac{4}{3}\right) ^nL_0 = 3\cdot\left(\frac{4}{3}\right) ^n\] から, $\lim\limits_{n \to \infty}L_n = \infty$ である.
(2)
$K_n$ から $K_{n+1}$ を作るとき, $1$ 辺の長さが $\dfrac{1}{3^{n+1}}$ の正三角形 $3\cdot 4^n$ 個が貼りあわせられるから, \[ S_{n+1}-S_n = 3\cdot 4^n\times \left(\frac{1}{3^{n+1}}\right)^2\cdot\frac{\sqrt 3}{4} = \frac{\sqrt 3}{12}\left(\frac{4}{9}\right) ^n\] が成り立つ. よって, 求める極限は, \begin{align*} \lim\limits_{n \to \infty}S_n &= \lim\limits_{n \to \infty}S_{n+1} \\ &= \lim\limits_{n \to \infty}\left\{ S_0+\sum_{k = 0}^n(S_{k+1}-S_k)\right\} \\ &= S_0+\sum_{n = 0}^\infty (S_{n+1}-S_n) \\ &= \frac{\sqrt 3}{4}+\frac{\sqrt 3}{12}\sum_{n = 0}^\infty\left(\frac{4}{9}\right) ^n \\ &= \frac{\sqrt 3}{4}+\frac{\sqrt 3}{12}\cdot\frac{1}{1-\dfrac{4}{9}} \\ &= \frac{2\sqrt 3}{5} \end{align*} である.

背景

  • 本問の操作を無限に繰り返して得られる図形を「コッホ雪片」(Koch snowflake)と呼ぶ.
    この図形は, 一部が全体と相似になるという興味深い性質を持つ.
  • 「コッホ雪片」は「フラクタル図形」(fractal)と呼ばれる図形の一種である.
  • 正三角形から各辺の中点を結ぶ正三角形を切り取り, 新たにできたすべての小三角形から同様に正三角形を切り取るという操作を無限に続けると,「シェルピンスキーのギャスケット」(Sierpinski gasket)と呼ばれる図形が得られる.