COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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複素数平面上の変換

反転

問題≪反転による円円対応≫

(A)
$\alpha$ を $0$ でない複素数とする. $2$ 点 $\mathrm O(0),$ $\mathrm A(\alpha )$ を結ぶ線分の垂直二等分線は $\dfrac{z}{\alpha}+\dfrac{\bar z}{\bar \alpha} = 1$ で表されることを示せ.
(B)
複素数平面上の原点 $\mathrm O$ と異なる点 $\mathrm P(z)$ と半直線 $\mathrm{OP}$ 上の点 $\mathrm Q(w)$ が $\mathrm{OP}\cdot\mathrm{OQ} = 1$ を満たすとき, 次の問いに答えよ.
(1)
$w$ を用いて $z$ を表せ.
(2)
点 $\mathrm P$ が円周 $|z-\alpha | = r$ 上を動くとき, 点 $\mathrm Q$ は, $|\alpha | = r$ の場合に原点を通らない直線を描き, $|\alpha| \neq r$ の場合に原点を通らない円を描くことを示せ.

解答例

(A)
複素数平面上の点 $\mathrm P(z)$ に対して \begin{align*} &\text{点 }\mathrm P\text{ が線分 }\mathrm{OA}\text{ の垂直二等分線上} \iff \mathrm{OP} = \mathrm{AP} \\ &\iff |z| = |z-\alpha | \iff |z|^2 = | z-\alpha |^2 \\ &\iff |z|^2 = (z-\alpha )\overline{(z-\alpha )} \\ &\iff |z|^2 = (z-\alpha )(\bar z-\bar\alpha ) \\ &\iff |z|^2 = z\bar z-\bar\alpha z-\alpha\bar z+\alpha\bar\alpha \\ &\iff \bar\alpha z+\alpha\bar z = \alpha\bar\alpha \iff \frac{z}{\alpha}+\frac{\bar z}{\bar\alpha} = 1 \end{align*} であるから, 題意が成り立つ.
(B)
(1)
点 $\mathrm Q$ は半直線 $\mathrm{OP}$ 上にあるから, $0$ 以上のある実数 $k$ に対して $z = kw$ となる. $\mathrm{OP}\cdot\mathrm{OQ} = 1$ から \[ 1 = |z||w| = |kw||w| = k|w|^2\] であるので, $k = \dfrac{1}{|w|^2}$ が成り立つ. よって, \[ z = \frac{1}{|w|^2}w = \frac{w}{w\bar w} = \frac{1}{\bar w} \quad \cdots [1]\] が成り立つ.
(2)
$|z-\alpha | = r$ に $[1]$ を代入すると \[\left|\frac{1}{\bar w}-\alpha\right| = r\] となるから, \begin{align*} r^2 &= \left|\frac{1}{\bar w}-\alpha\right| ^2 = \left(\frac{1}{\bar w}-\alpha\right)\overline{\left(\frac{1}{\bar w}-\alpha\right)} \\ &= \left(\frac{1}{\bar w}-\alpha\right)\left(\frac{1}{w}-\bar\alpha\right) \\ &= \frac{1}{\bar ww}-\frac{\bar\alpha}{\bar w}-\frac{\alpha}{w}+|\alpha |^2 \end{align*} となる. 両辺に $w\bar w$ を掛けて整理すると, \[ (|\alpha |^2-r^2)w\bar w-\bar\alpha w-\alpha\bar w+1 = 0 \quad \cdots [2]\] となる.
(i)
$|\alpha | = r$ の場合. \[ [2] \iff \bar\alpha w+\alpha\bar w = 1\] となるから, (A) の結果により, 点 $\mathrm Q$ の軌跡は $2$ 点 $0,$ $\bar\alpha ^{-1}$ を結ぶ線分の垂直二等分線である. よって, 点 $\mathrm Q$ は原点を通らない直線を描く.
(ii)
$|\alpha | \neq r$ の場合. $d = |\alpha |^2-r^2$ とおくと, \begin{align*} [2] &\!\iff\! w\bar w\!-\!\frac{\bar\alpha}{d}w\!-\!\frac{\alpha}{d}\bar w\!+\!\frac{\alpha\bar\alpha}{d^2} \!=\! \frac{|\alpha |^2}{d^2}\!-\!\frac{1}{d} \\ &\!\iff\! \left( w-\frac{\alpha}{d}\right)\left(\bar w-\frac{\bar\alpha}{d}\right) = \frac{r^2}{d^2} \\ &\!\iff\! \left( w-\frac{\alpha}{d}\right)\overline{\left( w-\frac{\alpha}{d}\right)} = \frac{r^2}{d^2} \\ &\!\iff\! \left| w-\frac{\alpha}{d}\right| ^2 = \frac{r^2}{d^2} \\ &\!\iff\! \left| w-\frac{\alpha}{d}\right| = \frac{r}{|d|} \end{align*} となるから, 点 $\mathrm Q$ の軌跡は点 $\dfrac{\alpha}{|\alpha |^2-r^2}$ を中心とする半径 $\dfrac{r}{||\alpha |^2-r^2|}$ の円である. よって, 点 $\mathrm Q$ は原点を通らない円を描く.

背景

  • 集合 $S$ の要素それぞれに応じて $S$ の要素 $1$ つを定める対応の規則を $S$ 上の「変換」と呼ぶ. 例えば, 実数全体 $R$ を定義域とする実数値関数は $R$ 上の「変換」である. また, 複素数平面における平行移動, 回転移動, 対称移動はすべて複素数平面上の「変換」である. さらに, 複素数平面上の各点を定点からの距離がもとの定数倍になるような点にうつす対応も「相似変換」または「拡大・縮小変換」と呼ばれる「変換」である.
  • 平面上の点 $\mathrm O$ を中心とする半径 $r$ の円周 $C$ について, $\mathrm O$ と異なる点 $\mathrm P$ を $\mathrm{OP}\cdot\mathrm{OQ} = r^2$ なる半直線 $\mathrm{OP}$ 上の点 $\mathrm Q$ に対応させる「変換」を円 $C$ に関する「反転」と呼び, 点 $\mathrm O$ を「反転の中心」, $r$ を「反転の半径」, 円 $C$ を「反転円」と呼ぶ. また, 点 $\mathrm P$ が図形 $F$ 上を動くときの点 $\mathrm Q$ の軌跡を $F$ の「反形」と呼ぶ.
  • 複素数平面上の「反転」$w = \dfrac{1}{\bar z}$ は, 実軸に関する対称移動と「変換」$w = \dfrac{1}{z}$ の「合成変換」である. 前者の「変換」が円を円にうつし, 後者の「変換」が円を円または直線にうつすことから,「反転」$w = \dfrac{1}{\bar z}$ は円を円または直線にうつす.

$1$ 次分数変換

問題≪$1$ 次分数変換による単位円の対応≫

 $\alpha \neq 0,$ $|\alpha | < 1,$ $|\lambda | = 1$ なる複素数 $\alpha,$ $\lambda$ に対して, $w = \lambda\dfrac{z-\alpha}{\bar\alpha z-1}$ は単位円 $|z| \leqq 1$ を単位円 $|w| \leqq 1$ にうつすことを示せ.

解答例

 $w = \lambda\dfrac{z-\alpha}{\bar\alpha z-1}\ \cdots [1]$ とおく. このとき, $(\bar\alpha z-1)w = \lambda (z-\alpha )$ から, $(\bar\alpha w-\lambda )z = w-\alpha\lambda$ となる.
 ここで, 仮に $\bar\alpha w-\lambda = 0$ とすると, $w = \dfrac{\lambda}{\bar\alpha}$ から $\dfrac{\lambda}{\bar\alpha}-\alpha\lambda = \dfrac{\lambda}{\bar\alpha}(1-|\alpha |^2) = 0$ となり, $|\alpha |^2 = 1$ つまり $|\alpha | = 1$ となってしまう.
 よって, $\bar\alpha w-\lambda \neq 0$ であり, $z = \dfrac{w-\alpha\lambda}{\bar\alpha w-\lambda}$ であるから, \begin{align*} &|z| \leqq 1 \iff |z|^2 \leqq 1 \\ &\iff \left|\frac{w-\alpha\lambda}{\bar\alpha w-\lambda}\right| ^2 \leqq 1 \\ &\iff |w-\alpha\lambda |^2 \leqq |\bar\alpha w-\lambda |^2 \\ &\iff (w-\alpha\lambda )(\bar w-\bar\alpha\bar\lambda ) \leqq (\bar\alpha w-\lambda )(\alpha\bar w-\bar\lambda ) \\ &\iff |w|^2-\bar\alpha\bar\lambda w-\alpha\lambda\bar w+|\alpha |^2 \\ &\qquad\quad \leqq |\alpha |^2|w|^2-\bar\alpha\bar\lambda w-\alpha\lambda\bar w+1 \quad (\because |\lambda | = 1) \\ &\iff (1-|\alpha |^2)|w|^2 \leqq 1-|\alpha |^2 \\ &\iff |w|^2 \leqq 1 \quad (\because |\alpha | < 1) \\ &\iff |w| \leqq 1 \end{align*} が成り立つ. ゆえに, $[1]$ は単位円 $|z| \leqq 1$ を単位円 $|w| \leqq 1$ にうつす.

背景

  • $\alpha\delta \neq \beta\gamma,$ $(\gamma,\delta ) \neq (0,0)$ なる複素数 $\alpha,$ $\beta,$ $\gamma,$ $\delta$ を用いて \[ w = \dfrac{\alpha z+\beta}{\gamma z+\delta} \quad \cdots [*]\] の形に表される変換は「$1$ 次分数変換」と呼ばれる.
  • (i)
    $\gamma \neq 0$ のとき, $[*]$ は, \[ w = \frac{\alpha}{\gamma}+\frac{\dfrac{\beta\gamma -\alpha\delta}{\gamma ^2}}{z+\dfrac{\delta}{\gamma}}\] と変形でき, 平行移動,「反転」, 回転移動と相似変換, 平行移動の合成に一致する.
    (ii)
    $\gamma = 0$ のとき, $[*]$ は, \[ w = \frac{\alpha}{\delta}\left( z+\frac{\beta}{\alpha}\right)\] と変形でき, 平行移動, 回転移動と相似変換の合成に一致する.
    平行移動, 回転移動, 相似変換は円を円にうつし, 前問で見たように「反転」は円を円または直線にうつすから, (i), (ii) いずれの場合にも「$1$ 次分数変換」は円を円または直線にうつす. このことは「円円対応」と呼ばれる.

問題≪ケイリー変換≫

 複素数平面上の点 $z$ が実軸の上方を動くとき, 点 $w = \dfrac{z-i}{z+i}$ が動く範囲を求めよ.

解答例

 実軸は $2$ 点 $i,$ $-i$ の垂直二等分線 $|z-i| = |z+i|$ に一致する. よって, $w = \dfrac{z-i}{z+i}$ とおくと, \begin{align*} \text{点 }z\text{ が実軸の上方} &\iff |z-i| < |z+i| \\ &\iff \left|\frac{z-i}{z+i}\right| < 1 \\ &\iff w < 1 \end{align*} となるから, 複素数平面上の点 $z$ が実軸の上方を動くとき, 点 $w$ が動く範囲は単位円の内部である.

背景

 変換 $f(z) = \dfrac{z-i}{z+i}$ は「ケイリー変換」(Cayley transformation)と呼ばれ,「複素解析学」で重要な役割を果たす.

ジューコフスキー変換

問題≪ジューコフスキー変換≫

 $a,$ $r$ を正の数とする. 点 $z$ が原点を中心とする半径 $r$ の円周上を動くとき, 点 $w = z+\dfrac{a^2}{z}$ の軌跡を求めよ.

解答例

 $z = r(\cos\theta +i\sin\theta )\ (r > 0,\ 0 \leqq \theta < 2\pi )$ とおく. このとき, \begin{align*} w &= z+\frac{a^2}{z} = r(\cos\theta +i\sin\theta )+\frac{a^2}{r}(\cos\theta -i\sin\theta ) \\ &= \left( r+\frac{a^2}{r}\right)\cos\theta +i\left( r-\frac{a^2}{r}\right)\sin\theta \\ &= \frac{r^2+a^2}{r}\cos\theta +i\frac{r^2-a^2}{r}\sin\theta \quad \cdots [1] \end{align*} となる.
(i)
$a = r$ のとき. \[ [1] \iff w = 2a\cos\theta\] から $w$ は実数であり, $-1 \leqq \cos\theta \leqq 1$ から $-2a \leqq w \leqq 2a$ であるので, 点 $w$ は $2$ 点 $-2a,$ $2a$ を結ぶ線分を描く.
(ii)
$a \neq r$ のとき. $w = x+yi$ ($x,$ $y$: 実数)とおく. このとき, $[1]$ から \[ x = \frac{r^2+a^2}{r}\cos\theta, \quad y = \frac{r^2-a^2}{r}\sin\theta\] となる. $\cos ^2\theta +\sin ^2\theta = 1$ を使って $\theta$ を消去すると, \[ [1] \iff \frac{x^2}{\left(\dfrac{r^2+a^2}{r}\right) ^2}+\frac{y^2}{\left(\dfrac{r^2-a^2}{r}\right) ^2} = 1\] となる. よって, 点 $w$ は \[\left(\pm\sqrt{\left(\frac{r^2+a^2}{r}\right) ^2-\left(\frac{r^2-a^2}{r}\right) ^2},0\right)\] つまり $(\pm 2a,0)$ を焦点とする長軸の長さ $\dfrac{2(r^2+a^2)}{r},$ 短軸の長さ $\dfrac{2|r^2-a^2|}{r}$ の楕円を描く.

背景

 $w = z+\dfrac{a^2}{z}$ ($a$: 正の定数)の形の関係式によって $z$ を $w$ に対応させる複素数平面上の「変換」を「ジューコフスキー変換」(Joukowski transformation, Zhukovsky —)と呼ぶ. この「変換」は流体力学において翼の揚力に関する理論に応用されており, 飛行機の翼の設計に役立てられている. 例えば, 原点が中心から少しずれた円は「ジューコフスキー変換」$w = z+\dfrac{1}{z}$ によって, 図のような曲線に変換される.