COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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ガウス記号

ガウス記号

定義≪ガウス記号≫

 各実数 $a$ に対して, $a$ を超えない最大の整数を $[a]$ で表す. この記号 $[\ ]$ をガウス記号と呼ぶ. ただし, この記法と呼称が通用するのは, 日本やドイツなど一部の地域に限られる. 英語では, これを $\lfloor a\rfloor$ で表して, 関数 $\lfloor\ \rfloor$ を floor function と呼ぶ.

定理≪ガウス記号の性質≫

 すべての実数 $a$ に対して, \[ [a] \leqq a < [a]+1\] が成り立つ.

問題≪レイリーの定理≫

 各実数 $a$ に対して, $a$ を超えない最大の整数を $[a]$ で表す. $x,$ $y$ を $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y} = 1$ なる正の数とする.
(A)
$x,$ $y$ が有理数であるとする. このとき, ある正の整数 $m,$ $n$ に対して $[mx] = [ny]$ が成り立つことを示せ.
(B)
正の整数 $m,$ $n,$ $k$ に対して $[mx] = [ny] = k$ が成り立つとする. このとき, 次のことを示せ.
(1)
$\dfrac{[mx]}{x} \leqq m < \dfrac{[mx]+1}{x}$ が成り立つ.
(2)
$m+n = k$ が成り立つ.
(3)
$x,$ $y$ は有理数である.
(C)
実数 $k$ が $[mx],$ $[ny]$ ($m,$ $n$: 正の整数)の形に表されないとする. このとき, $k$ は整数でないことを示せ.
[2016 京都府立大*],[慶應義塾大*]

解答例

(A)
$x = \dfrac{a}{b},$ $y = \dfrac{c}{d}$ ($a,$ $b,$ $c,$ $d$: 正の整数)とおく. このとき, $m = bc,$ $n = ad$ とすれば, \[ [mx] = [ny] = ac\] が成り立つ.
(B)
(1)
\[ [a] \leqq a < [a]+1\] に $a = mx$ を代入すると, $[mx] = k$ から \[ k \leqq mx < k+1\] となる. よって, \[\frac{k}{x} \leqq m < \frac{k+1}{x} \quad \cdots [1]\] が成り立つ.
(2)
(1) と同様に, \[\frac{k}{y} \leqq n < \frac{k+1}{y} \quad \cdots [2]\] が成り立つ. $[1],$ $[2]$ の辺々を加えると, \[ k\left(\frac{1}{x}\!+\!\frac{1}{y}\right) \!\leqq\! m\!+\!n \!<\! (k\!+\!1)\left(\frac{1}{x}\!+\!\frac{1}{y}\right) \quad \cdots [3]\] が得られる. よって, $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y} = 1$ から, \[ k \leqq m+n < k+1 \quad \cdots [4]\] が成り立つ. $m,$ $n,$ $k$ は整数であるから, $m+n = k$ である.
(3)
$[4]$ すなわち $[3]$ で等号が成り立ち, $[3]$ で等号が成り立つのは $[1],$ $[2]$ で等号が成り立つときに限るから,
$\dfrac{k}{x} = m,$ $\dfrac{k}{y} = n,$ つまり $x = \dfrac{k}{m},$ $y = \dfrac{k}{n}$
が成り立つ. ゆえに, $x,$ $y$ は有理数である.
(C)
仮定から, \begin{align*} mx < k, \quad &k+1 < (m+1)x, \\ ny < k, \quad &k+1 < (n+1)y \end{align*} を満たす整数 $m,$ $n$ が存在する.
(例えば, $x = \dfrac{1+\sqrt 5}{2},$ $y = \dfrac{3+\sqrt 5}{2},$ のとき, $k = 3.5,$ $k+1 = 4.5$ は, ともに $2x$ と $3x,$ $y$ と $2y$ の間にある.)
これらの不等式から \begin{align*} &m+n < \frac{k}{x}+\frac{k}{y} = k, \\ &k+1 = \frac{k+1}{x}+\frac{k+1}{y} < (m+1)+(n+1) \end{align*} が得られる. よって, \[ m+n < k < m+n+1\] が成り立つから, $k$ は整数でない.

背景

  • (A)~(C) から,「レイリーの定理」(Reyleigh's theorem)と呼ばれる, 次の定理が証明される: 与えられた正の数 $x,$ $y$ について, すべての正の整数が $[mx],$ $[ny]$ ($m,$ $n$: 正の整数)の形に重複なく表されるためには, $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y} = 1$ が成り立ち, $x,$ $y$ が無理数であることが必要十分である. 例えば, $\varphi = \dfrac{1+\sqrt 5}{2}$ (黄金数)のとき, $\dfrac{1}{\varphi}+\dfrac{1}{\varphi ^2} = 1$ であり, 正の整数全体の集合 $\mathbb Z_+$ は \begin{align*} \{ [n\varphi ]|n \in \mathbb Z_+\} &= \{ 1,3,4,6,8,9,11,12,14,16,\cdots\}, \\ \{ [n\varphi ^2]|n \in \mathbb Z_+\} &= \{ 2,5,7,10,13,15,18,20,23,26,\cdots\} \end{align*} という $2$ つの集合に「分割」される.
  • $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y} = 1$ なる正の無理数 $x,$ $y$ に対して, 数列 $\{ [nx]\},$ $\{ [ny]\}$ を「ビーティ数列」(Beatty sequence)と呼ぶ. 「ワイソフのゲーム」(両方の山から同じ個数の石を取ることもできる二山崩し, 最後に石を取った方が勝ち)において, 後手必勝の局面は, 各山の石の個数の組が \[ \{ [n\varphi ],[n\varphi ^2]\} \quad \left( n \in \mathbb Z_+,\ \varphi = \dfrac{1+\sqrt 5}{2}\right)\] のときに限り,「ビーティ数列」を使って表されることが知られている.