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真の理解のためのシンプルな数学のノート

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相加・相乗平均の不等式

相加・相乗平均の不等式

定義≪相加平均, 相乗平均, 調和平均≫

 $n$ を正の整数, $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ を実数とする.
(1)
$\dfrac{x_1+\cdots +x_n}{n}$ を $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ の相加平均(arithmetic mean)と呼ぶ.
(2)
$x_1,$ $\cdots,$ $x_n \geqq 0$ のとき, $\sqrt[n]{\mathstrut x_1\cdots x_n}$ を $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ の相乗平均(geometric mean)と呼ぶ.
(3)
$x_1,$ $\cdots,$ $x_n \neq 0$ のとき, $\dfrac{n}{x_1{}^{-1}+\cdots +x_n{}^{-1}}$ を $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ の調和平均(harmonic mean)と呼ぶ.

定理≪相加・相乗平均の不等式≫

 $2$ 以上の整数 $n,$ 正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ に対して \[\frac{x_1+\cdots +x_n}{n} \geqq \sqrt[n]{\mathstrut x_1\cdots x_n} \geqq \frac{n}{x_1{}^{-1}+\cdots +x_n{}^{-1}}\] が成り立つ. 等号成立は $x_1 = \cdots = x_n$ の場合に限る.

証明

 左の不等号について示す.
(I)
$n = 2^m$ ($m$: 正の整数)の場合を, $m$ に関する数学的帰納法で示す.
(i)
$n = 2$ の場合は, \[ (x+y)-2\sqrt{xy} = (\sqrt x-\sqrt y)^2 \geqq 0\] から従う.
(ii)
$n = 2^m$ ($m$: 正の整数)の場合に成り立つとする. このとき, \begin{align*} &\frac{x_1+\cdots +x_{2^{m+1}}}{2^{m+1}} \\ &= \frac{1}{2^m}\cdot\frac{(x_1+x_2)+\cdots +(x_{2^{m+1}-1}+x_{2^{m+1}})}{2} \\ &\geqq \frac{\sqrt{x_1x_2}+\cdots +\sqrt{x_{2^{m+1}-1}x_{2^{m+1}}}}{2^m} \\ &\geqq \sqrt[2^m]{\sqrt{x_1x_2}\cdots\sqrt{x_{2^{m+1}-1}x_{2^{m+1}}}} \\ &= \sqrt[2^{m+1}]{x_1\cdots x_{2^{m+1}}} \end{align*} となるから, $n = 2^{m+1}$ の場合に左側の不等号が成り立つ. また, 等号成立は, $x_1 = x_2,$ $\cdots,$ $x_{2^{m+1}-1} = x_{2^{m+1}}$ かつ $\sqrt{x_1x_2} = \cdots = \sqrt{x_{2^{m+1}-1}x_{2^{m+1}}}$ のとき, つまり $x_1 = \cdots = x_{2^{m+1}}$ のときに限る.
よって, $n = 2^m$ ($m$: 正の整数)の場合に成り立つ.
(II)
一般の場合. $n$ を $2$ 以上の整数とする. このとき, $2^{m-1} < n \leqq 2^m$ なる正の整数 $m$ が存在する. $a = \dfrac{x_1+\cdots +x_n}{n}$ とおくと, \begin{align*} a &= \frac{na+(2^m-n)a}{2^m} = \frac{x_1+\cdots +x_n+(2^m-n)a}{2^m} \\ &\geqq \sqrt[2^m]{x_1\cdots x_na^{2^m-n}} \end{align*} となり, \begin{align*} a^{2^m} &\geqq x_1\cdots x_na^{2^m-n} \\ a^n &\geqq x_1\cdots x_n \\ a &\geqq \sqrt[n]{x_1\cdots x_n} \end{align*} となって, 左側の不等号が成り立つ. また, 等号成立は, $x_1 = \cdots = x_n = a$ のとき, つまり $x_1 = \cdots = x_n$ のときに限る.
 右の不等号については, \[\frac{x_1{}^{-1}+\cdots +x_n{}^{-1}}{n} \geqq \sqrt[n]{x_1{}^{-1}\cdots x_n{}^{-1}}\] の両辺の逆数をとることで示される.

別証明: 指数関数の $1$ 次関数による近似を利用

 こちらを参照.

注意

 $n = 1$ の場合にも上記の不等式は成り立つが, その場合にはすべての正の数 $x_1$ に対して等号が成り立つので, $n \geqq 2$ として定理を述べた.

問題

数学 II: 式と証明

問題≪$2$~$4$ 変数の相加・相乗平均の不等式≫

(1)
$x,$ $y > 0$ のとき, $x+y \geqq 2\sqrt{xy}$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
(2)
$x,$ $y,$ $z,$ $w > 0$ のとき, $x+y+z+w \geqq 4\sqrt[4]{xyzw}$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
(3)
(2) において, $w = \dfrac{x+y+z}{3}$ とすることにより, $x+y+z \geqq 3\sqrt[3]{xyz}$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.

解答例

 こちらを参照.

数学 III: 微分法

問題≪指数関数の近似と相加・相乗平均の不等式≫

(1)
すべての実数 $x$ に対して, 不等式 $x \leqq e^{x-1}$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
(2)
正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ が $x_1+\cdots +x_n = n$ を満たすとき, $x_1\cdots x_n \leqq 1$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
(3)
正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ に対して $a = \dfrac{x_1+\cdots +x_n}{n}$ とおくとき, \[ x_1\cdots x_n \leqq a^n\] が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
[2008 横浜市立大*]

解答例

 こちらを参照.