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相加・相乗平均の不等式

相加・相乗平均の不等式

定義≪相加平均, 相乗平均, 調和平均≫

 $n$ を正の整数, $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ を実数とする.
(1)
$\dfrac{x_1+\cdots +x_n}{n}$ を $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ の相加平均(arithmetic mean)と呼ぶ.
(2)
$x_1,$ $\cdots,$ $x_n \geqq 0$ のとき, $\sqrt[n]{\mathstrut x_1\cdots x_n}$ を $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ の相乗平均(geometric mean)と呼ぶ.
(3)
$x_1,$ $\cdots,$ $x_n \neq 0$ のとき, $\dfrac{n}{x_1{}^{-1}+\cdots +x_n{}^{-1}}$ を $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ の調和平均(harmonic mean)と呼ぶ.

定理≪相加・相乗平均の不等式≫

 $2$ 以上の整数 $n,$ 正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ に対して \[\frac{x_1+\cdots +x_n}{n} \geqq \sqrt[n]{\mathstrut x_1\cdots x_n} \geqq \frac{n}{x_1{}^{-1}+\cdots +x_n{}^{-1}}\] が成り立つ. 等号成立は $x_1 = \cdots = x_n$ の場合に限る.

証明(Cauchy, 1821)

 左の不等号について示す.
(I)
$n = 2^m$ ($m$: 正の整数)の場合を, $m$ に関する数学的帰納法で示す.
(i)
$n = 2$ の場合は, \[ (x+y)-2\sqrt{xy} = (\sqrt x-\sqrt y)^2 \geqq 0\] から従う.
(ii)
$n = 2^m$ ($m$: 正の整数)の場合に成り立つとする. このとき, \begin{align*} &\frac{x_1+\cdots +x_{2^{m+1}}}{2^{m+1}} \\ &= \frac{1}{2^m}\cdot\frac{(x_1+x_2)+\cdots +(x_{2^{m+1}-1}+x_{2^{m+1}})}{2} \\ &\geqq \frac{\sqrt{x_1x_2}+\cdots +\sqrt{x_{2^{m+1}-1}x_{2^{m+1}}}}{2^m} \\ &\geqq \sqrt[2^m]{\sqrt{x_1x_2}\cdots\sqrt{x_{2^{m+1}-1}x_{2^{m+1}}}} \\ &= \sqrt[2^{m+1}]{x_1\cdots x_{2^{m+1}}} \end{align*} となるから, $n = 2^{m+1}$ の場合に左側の不等号が成り立つ. また, 等号成立は, $x_1 = x_2,$ $\cdots,$ $x_{2^{m+1}-1} = x_{2^{m+1}}$ かつ $\sqrt{x_1x_2} = \cdots = \sqrt{x_{2^{m+1}-1}x_{2^{m+1}}}$ のとき, つまり $x_1 = \cdots = x_{2^{m+1}}$ のときに限る.
よって, $n = 2^m$ ($m$: 正の整数)の場合に成り立つ.
(II)
一般の場合. $n$ を $2$ 以上の整数とする. このとき, $2^{m-1} < n \leqq 2^m$ なる正の整数 $m$ が存在する. $a = \dfrac{x_1+\cdots +x_n}{n}$ とおくと, \begin{align*} a &= \frac{na+(2^m-n)a}{2^m} = \frac{x_1+\cdots +x_n+(2^m-n)a}{2^m} \\ &\geqq \sqrt[2^m]{x_1\cdots x_na^{2^m-n}} \end{align*} となり, \begin{align*} a^{2^m} &\geqq x_1\cdots x_na^{2^m-n} \\ a^n &\geqq x_1\cdots x_n \\ a &\geqq \sqrt[n]{x_1\cdots x_n} \end{align*} となって, 左側の不等号が成り立つ. また, 等号成立は, $x_1 = \cdots = x_n = a$ のとき, つまり $x_1 = \cdots = x_n$ のときに限る.
 右の不等号については, \[\frac{x_1{}^{-1}+\cdots +x_n{}^{-1}}{n} \geqq \sqrt[n]{x_1{}^{-1}\cdots x_n{}^{-1}}\] の両辺の逆数をとることで示される.

別証明 1: 並べ替え不等式を利用(内田康晴, 2008)

 こちらを参照.

別証明 2: 和・積の大小関係を利用(Ehlers)

 こちらを参照.

別証明 3: 指数関数の $1$ 次関数による近似を利用(Polya, 1952)

 こちらを参照.

別証明 4: 数学的帰納法と微分法を利用

 こちらを参照.

別証明 5: Bernoulli の不等式を利用(Newman, 1960)

 こちらを参照.

別証明 6: Young の不等式を利用

 こちらを参照.

注意

 $n = 1$ の場合にも上記の不等式は成り立つが, その場合にはすべての正の数 $x_1$ に対して等号が成り立つので, $n \geqq 2$ として定理を述べた.

問題

数学 II: 式と証明

問題≪$2$~$4$ 変数の相加・相乗平均の不等式≫

(1)
$x,$ $y > 0$ のとき, $x+y \geqq 2\sqrt{xy}$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
(2)
$x,$ $y,$ $z,$ $w > 0$ のとき, $x+y+z+w \geqq 4\sqrt[4]{xyzw}$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
(3)
(2) において, $w = \dfrac{x+y+z}{3}$ とすることにより, $x+y+z \geqq 3\sqrt[3]{xyz}$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.

解答例

 こちらを参照.

問題≪並び替えと $3$ 変数相加・相乗平均の不等式≫

 次のことを示せ.
(1)
$a \geqq b,$ $c \geqq d$ のとき, $ac+bd \geqq ad+bc$ が成り立つ.
(2)
$X,$ $Y \geqq 0$ のとき, $X^2+Y^2 \geqq 2XY$ が成り立つ.
(3)
$X,$ $Y,$ $Z \geqq 0$ のとき, $X^3+Y^3+Z^3 \geqq 3XYZ$ が成り立つ.
(4)
$x,$ $y,$ $z \geqq 0$ のとき, $x+y+z \geqq 3\sqrt[3]{xyz}$ が成り立つ.

解答例

 こちらを参照.

問題≪和・積の関係と相加・相乗平均の不等式≫

 次のことを示せ.
(1)
$a \leqq 1 \leqq b$ のとき \[ a+b \geqq ab+1 \quad \cdots [1]\] が成り立つ.
(2)
$a_1\cdots a_n = 1$ を満たす $n$ 個の正の数 $a_1,$ $\cdots,$ $a_n$ に対して \[ a_1+\cdots +a_n \geqq n \quad \cdots [2]\] が成り立つ.
(3)
正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ に対して \[ x_1+\cdots +x_n \geqq n(x_1\cdots x_n)^{\frac{1}{n}} \quad \cdots [3]\] が成り立つ.

解答例

 こちらを参照.

問題≪レムスの不等式≫

 $3$ 辺の長さが $a,$ $b,$ $c,$ 外接円の半径が $R,$ 内接円の半径が $r,$ 面積が $S$ である $\triangle\mathrm{ABC}$ について, 次の問いに答えよ.
(1)
\[ abc \geqq (-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)\] が成り立つことを, $x = -a+b+c,$ $y = a-b+c,$ $z = a+b-c$ という置き換えを使って示せ.
(2)
$R \geqq 2r$ が成り立つことを示せ. ただし,「ヘロンの公式」 \[ S = \dfrac{1}{4}\sqrt{(a\!+\!b\!+\!c)(-a\!+\!b\!+\!c)(a\!-\!b\!+\!c)(a\!+\!b\!-\!c)}\] (こちらを参照)が成り立つことは, 証明なしに用いてよい.

解答例

 こちらを参照.

数学 II: 三角関数

問題≪オノの不等式≫

 $\triangle\mathrm{ABC}$ において, $a = \mathrm{BC},$ $b = \mathrm{CA},$ $c = \mathrm{AB},$ $A = \angle\mathrm A,$ $B = \angle\mathrm B,$ $C = \angle\mathrm C,$ $S = \triangle\mathrm{ABC}$ とおく. 次のことを示せ. ただし, $x,$ $y,$ $z \geqq 0$ のとき $x+y+z \geqq 3\sqrt[3]{xyz}$ が成り立つことは, 証明なしに用いてよい.
(1)
$\tan A\tan B\tan C \!=\! \tan A\!+\!\tan B\!+\!\tan C$ が成り立つ.
(2)
$\triangle\mathrm{ABC}$ が鋭角三角形のとき, \[ (4S)^6 \!\geqq\! 27(b^2\!+\!c^2\!-\!a^2)^2\!(c^2\!+\!a^2\!-\!b^2)^2\!(a^2\!+\!b^2\!-\!c^2)^2\] が成り立つ.

解答例

 こちらを参照.

数学 III: 微分法

問題≪指数関数の近似と相加・相乗平均の不等式≫

(1)
すべての実数 $x$ に対して, 不等式 $x \leqq e^{x-1}$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
(2)
正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ が $x_1+\cdots +x_n = n$ を満たすとき, $x_1\cdots x_n \leqq 1$ が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
(3)
正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ に対して $a = \dfrac{x_1+\cdots +x_n}{n}$ とおくとき, \[ x_1\cdots x_n \leqq a^n\] が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.
[2008 横浜市立大*]

解答例

 こちらを参照.

問題≪関数の増減と相加・相乗平均の不等式≫

 $n$ を正の整数とする.
(1)
$s,$ $p$ を正の数とする. 関数 \[ f(x) = \frac{s+x}{n+1}-(px)^{\frac{1}{n+1}} \quad (x > 0)\] の最小値を求めよ.
(2)
正の数 $a_1,$ $\cdots,$ $a_n$ に対して \[\frac{a_1+\cdots +a_n}{n} \geqq (a_1\cdots a_n)^{\frac{1}{n}} \quad \cdots [\ast ]\] が成り立つことを数学的帰納法で示せ.

解答例

 こちらを参照.

問題≪ベルヌーイの不等式の一般化と応用≫

 次のことを示せ.
(1)
$r$ を負の数とするとき, \[ (1+x)^r \geqq 1+rx \quad (x > -1) \quad \cdots [1]\] が成り立つ.
(2)
$a_1\cdots a_n = 1$ を満たす $n$ 個の正の数 $a_1,$ $\cdots,$ $a_n$ に対して \[ a_1+\cdots +a_n \geqq n \quad \cdots [2]\] が成り立つ.
(3)
正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ に対して \[ x_1+\cdots +x_n \geqq n(x_1\cdots x_n)^{\frac{1}{n}} \quad \cdots [3]\] が成り立つ.

解答例

 こちらを参照.

問題≪ヤングの不等式とその応用≫

(1)
$r$ を $0 < r < 1$ なる実数とする. $x > 0$ のとき, $r(x-1),$ $x^r-1$ の大小を比較せよ.
(2)
$p,$ $q$ を $p > 1,$ $q > 1,$ $\dfrac{1}{p}+\dfrac{1}{q} = 1$ なる実数とする. $a > 0,$ $b > 0$ のとき, $\dfrac{a}{p}+\dfrac{b}{q},$ $a^{\frac{1}{p}}b^{\frac{1}{q}}$ の大小を比較せよ.
(3)
$n$ を $2$ 以上の整数とする. $n$ 個の正の数 $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ に対して, $A_n = \dfrac{x_1+\cdots +x_n}{n},$ $G_n = (x_1\cdots x_n)^{\frac{1}{n}}$ とおくと, \[ A_{k+1} = \frac{A_k+x_{k+1}}{k+1}, \quad G_{k+1} = G_k{}^{\frac{k}{k+1}}x_{k+1}{}^{\frac{1}{k+1}}\] が成り立つ. このことと数学的帰納法, (2) の結果を使って, \[ A_n \geqq G_n\] が成り立つことを示せ.
[2017 一橋大*, 2019 九州歯科大*]

解答例

 こちらを参照.