COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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三角関数の倍角の公式

三角関数の倍角の公式

定理≪三角関数の $2$ 倍角の公式≫

 すべての角 $\theta$ に対して \begin{align*} \cos 2\theta &= \cos ^2\theta -\sin ^2\theta \\ &= 2\cos ^2\theta -1 = 1-2\sin ^2\theta, \\ \sin 2\theta &= 2\sin\theta\cos\theta \end{align*} が成り立つ. 角 $\theta \neq \dfrac{2k+1}{4}\pi$ ($k$: 整数)に対して \[\tan 2\theta = \frac{2\tan\theta}{1-\tan ^2\theta}\] が成り立つ.

問題≪ピタゴラス数の公式の解析的証明≫

 正の整数 $a,$ $b,$ $c$ ($a < c,$ $b < c$)を $3$ 辺の長さとする直角三角形において, $\theta$ を $\tan\theta = \dfrac{b}{a}$ なる鋭角とする.
(1)
$t = \tan\dfrac{\theta}{2}$ を用いて $\cos\theta,$ $\sin\theta,$ $\dfrac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}$ を表せ.
(2)
$t$ は有理数であることを示せ.
(3)
$3$ 辺の長さの比は互いに素なある正の整数 $m,$ $n$ を用いて \[ a:b:c = (m^2-n^2):2mn:(m^2+n^2)\] と表せることを示せ.

解答例

(1)
倍角の公式により \[\tan\theta = \frac{2t}{1-t^2}\] であるから, \begin{align*} &\cos ^2\theta = \frac{1}{1+\tan ^2\theta} = \frac{1}{1+\dfrac{4t^2}{(1-t^2)^2}} \\ &= \frac{(1-t^2)^2}{(1-t^2)^2+4t^2} = \frac{(1-t^2)^2}{(1+t^2)^2} = \left(\frac{1-t^2}{1+t^2}\right) ^2, \\ &\sin ^2\theta = 1-\cos ^2\theta = 1-\frac{(1-t^2)^2}{(1+t^2)^2} \\ &= \frac{(1+t^2)^2-(1-t^2)^2}{(1+t^2)^2} = \frac{4t^2}{(1+t^2)^2} = \left(\frac{2t}{1+t^2}\right) ^2 \end{align*} が成り立つ. よって, $0 < \theta < \dfrac{\pi}{2}$ から $\cos\theta > 0,$ $\sin\theta > 0,$ $0 < t < 1$ であることに注意すると, \begin{align*} &\cos\theta = \frac{1-t^2}{1+t^2}, \quad \sin\theta = \frac{2t}{1+t^2}\ \cdots [1], \\ &\frac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta} = \frac{(1+t^2)-(1-t^2)}{(1+t^2)+(1-t^2)} = t^2\ \cdots [2]. \end{align*} が得られる.
(2)
仮定から $\cos\theta$ は有理数であるので, $[2]$ から $t^2$ は有理数である. さらに, $\sin\theta$ も有理数であるので, $[1]$ から $t = \dfrac{1+t^2}{2}\sin\theta$ も有理数である.
(3)
互いに素な正の整数 $m,$ $n$ を用いて $t = \dfrac{n}{m}$ とおくと, (2) から \begin{align*} \frac{a}{c} &= \cos\theta = \frac{1-\dfrac{n^2}{m^2}}{1+\dfrac{n^2}{m^2}} = \frac{m^2-n^2}{m^2+n^2}, \\ \frac{b}{c} &= \sin\theta = \frac{2\cdot\dfrac{n}{m}}{1-\dfrac{n^2}{m^2}} = \frac{2mn}{m^2+n^2} \end{align*} となるので, \[ a:b:c = (m^2-n^2):2mn:(m^2+n^2)\] となる.

背景

 $3$ 辺の長さがすべて整数であるような直角三角形を「ピタゴラスの三角形」と呼び, その辺の長さの組 $(a,b,c)$ を「ピタゴラス数」と呼ぶ. 本問の結果からすべての「ピタゴラス数」を表す公式を得るには, もう少し議論が必要である(こちらを参照).

定理≪三角関数の $3$ 倍角の公式≫

 すべての角 $\theta$ に対して \begin{align*} \cos 3\theta &= 4\cos ^3\theta -3\cos\theta \\ \sin 3\theta &= 3\sin\theta -4\sin ^3\theta \end{align*} が成り立つ.

問題≪正五角形の対角線の長さ≫

 $\theta$ を任意の実数とする.
(1)
$\cos 3\theta = 4\cos ^3\theta -3\cos\theta,$ $\sin 3\theta = 3\sin\theta -4\sin ^3\theta$ が成り立つことを示せ.
(2)
$a = \cos\dfrac{2\pi}{5}$ の値を求めよ.
(3)
$1$ 辺の長さが $1$ である正五角形の対角線の長さを求めよ.
[横浜市立大*]

解答例

(1)
略.
(2)
$\theta = \dfrac{2\pi}{5}$ とおくと, $3\theta +2\theta = 2\pi$ となるから, $\cos 3\theta = \cos 2\theta$ となる. よって, 倍角の公式と (1) の結果から \begin{align*} &4a^3-3a = 2a^2-1 \\ &(a-1)(4a^2+2a-1) = 0 \end{align*} であるので, $0 < a < 1$ であることに注意すると $a = \dfrac{-1+\sqrt 5}{4}$ であることがわかる.
(3)
$1$ 辺の長さが $1$ である正五角形 $\mathrm{ABCDE}$ の頂点 $\mathrm A$ から辺 $\mathrm{CD}$ に下した垂線の足を $\mathrm H$ とおく.
$\angle\mathrm{ABC} = \dfrac{(5-2)\pi}{5} = \dfrac{3\pi}{5}$ と $\mathrm{BA} = \mathrm{BC}$ から, $\angle\mathrm{BCA} = (\pi -\angle\mathrm{ABC})\div 2 = \dfrac{\pi}{5}$ である.
よって, $\angle\mathrm{ACH} = \angle\mathrm{BCD}-\angle\mathrm{BCA} = \dfrac{2\pi}{5}$ から $\cos\dfrac{2\pi}{5} = \cos\angle\mathrm{ACH} = \dfrac{\mathrm{CH}}{\mathrm{AC}}$ であるので, \begin{align*} \mathrm{AC} &= \mathrm{CH}\div\cos\dfrac{2\pi}{5} = \dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{4}{\sqrt 5-1} \\ &= \dfrac{2(\sqrt 5+1)}{4} = \dfrac{1+\sqrt 5}{2} \end{align*} である.

別解

 $c = \cos\theta,$ $s = \sin\theta$ とおく.
(1)
ド・モアブルの定理により, \begin{align*} &\cos 3\theta +i\sin 3\theta = (c+si)^3 \\ &= c^3+3c^2(si)+3c(-s^2)-s^3i \\ &= (c^3-3cs^2)+(3c^2s-s^3)i \\ &= \{ c^3-3c(1-c^2)\} +\{ 3(1-s^2)s-s^3\} i \\ &= (4c^3-3c)+(3s-4s^3)i \end{align*} が成り立つ. $c,$ $s$ は実数であるから, 両辺の実部と虚部をそれぞれ比較すると, 求める等式が得られる.

背景

  • 正五角形の辺と対角線の長さの比 $1:\dfrac{1+\sqrt 5}{2}$ を黄金比(golden ratio)と呼び, $\dfrac{1+\sqrt 5}{2}$ を黄金数(golden number)と呼ぶ.
  • \begin{align*} \cos 2\theta &= 2\cos ^2\theta -1, & \!\!\!\!\!\!\sin 2\theta &= (2\cos\theta )\sin\theta, \\ \cos 3\theta &= 4\cos ^3\theta -3\cos\theta, & \!\!\!\!\!\!\sin 3\theta &= (4\cos ^2\theta -1)\sin\theta \end{align*} のように, 各正の整数 $n$ に対し, $\cos n\theta$ はある $n$ 次多項式 $T_n(x)$ を用いて $\cos n\theta = T_n(\cos\theta )$ と表せ, $\sin n\theta$ はある $n-1$ 次多項式 $U_n(x)$ を用いて $\sin n\theta = U_n(\cos\theta )\sin\theta$ と表せることが知られている. $T_n(x),$ $U_n(x)$ は, それぞれ「第一種チェビシェフ多項式」,「第二種チェビシェフ多項式」と呼ばれ, あわせて「チェビシェフ多項式」(Chebyshev polynomial)と呼ばれる.

問題≪正七角形調和≫

 正七角形 $\mathrm{ABCDEFG}$ において $a = \mathrm{GA},$ $b = \mathrm{GB},$ $c = \mathrm{GC}$ とおき, $\theta = \dfrac{\pi}{7}$ とおく.
(1)
$\triangle\mathrm{GAB}$ と $\triangle\mathrm{GBC}$ に着目して, $b = 2a\cos\theta$ と $c = a(4\cos ^2\theta -1)$ を示せ.
(2)
$\sin 3\theta$ と $\sin 4\theta$ を $\cos\theta$ の多項式と $\sin\theta$ の積の形に表せ.
(3)
$\cos\theta$ を解に持つ $3$ 次方程式を $1$ つ求めよ.
(4)
$a^{-1} = b^{-1}+c^{-1}$ が成り立つことを示せ.

解答例

(1)
$\triangle\mathrm{GAB}$ は頂角が $\dfrac{5\pi}{7},$ 底角が $\theta = \dfrac{\pi}{7}$ の二等辺三角形であるから, \[ b = \mathrm{GB} = 2\mathrm{GA}\cos\angle\mathrm{AGB} = 2a\cos\theta \quad \cdots [1]\] が成り立つ.
等脚台形 $\mathrm{ABCG}$ に着目すると, $\angle\mathrm{BGC} = \angle\mathrm{ABG} = \theta,$ $\angle\mathrm{BCG} = \angle\mathrm{AGC} = \angle\mathrm{AGB}+\angle\mathrm{BGC} = 2\theta$ がわかる. 点 $\mathrm B$ から $\mathrm{GC}$ に下した垂線の足を $\mathrm H$ とおくと, \begin{align*} c &= \mathrm{GC} = \mathrm{GH}+\mathrm{HC} \\ &= \mathrm{GB}\cos\angle\mathrm{BGC}+\mathrm{BC}\cos\angle\mathrm{BCG} \\ &= b\cos\theta +a\cos 2\theta \\ &= 2a\cos ^2\theta +a(2\cos ^2\theta -1) \\ &= a(4\cos ^2\theta -1) \quad \cdots [2] \end{align*} となる.
(2)
加法定理と $2$ 倍角の公式により, \begin{align*} \sin 3\theta &= \sin (2\theta +\theta ) = \sin 2\theta\cos\theta +\cos 2\theta\sin\theta \\ &= (2\sin\theta\cos\theta )\cos\theta +(2\cos ^2\theta -1)\sin\theta \\ &= (4\cos ^2\theta -1)\sin\theta \quad \cdots [3], \\ \sin 4\theta &= \sin 2(2\theta ) = 2\sin 2\theta\cos 2\theta \\ &= 2(2\sin\theta\cos\theta )(2\cos ^2\theta -1) \\ &= (8\cos ^3\theta -4\cos\theta )\sin\theta \quad \cdots [4] \end{align*} が成り立つ.
(3)
$\theta = \dfrac{\pi}{7}$ から $3\theta +4\theta = \pi$ であるので, \[\sin 4\theta = \sin 3\theta\] が成り立つ. ここに $[3]$ と $[4]$ を代入して整理すると \[ (8\cos ^3\theta -4\cos ^2\theta -4\cos\theta +1)\sin\theta = 0\] となり, $\sin\theta \neq 0$ から \[ 8\cos ^3\theta -4\cos ^2\theta -4\cos\theta +1 = 0 \quad \cdots [5]\] となる. $\cos\theta$ を解に持つ $3$ 次方程式 $8x^3-4x^2-4x+1 = 0$ が得られた.
(4)
$a^{-1} = b^{-1}+c^{-1}$ を示すには, $bc = ca+ab$ を示せばよい. $ab-bc+ca$ に $[1],$ $[2]$ を代入して整理すると, $[5]$ から \begin{align*} ab-bc+ca &= -a^2(8\cos ^3\theta -4\cos ^2\theta -4\cos\theta +1) \\ &= 0 \end{align*} となり, 求める結果が得られる.

別解

(4)
四角形 $\mathrm{BCDG}$ は円に内接するから, トレミーの定理により, \[\mathrm{BD}\cdot\mathrm{CG} = \mathrm{BC}\cdot\mathrm{DG}+\mathrm{CD}\cdot\mathrm{GB}\] つまり \[ bc = ac+ab\] が成り立つ.
両辺を $abc$ で割ると, 求める結果が得られる.

背景

 正七角形の $1$ 辺の長さ $a$ と対角線の長さ $b,$ $c$ に関する関係式 $a^{-1} = b^{-1}+c^{-1}$ は「正七角形調和」と呼ばれる.