COMPASS

真の理解のためのシンプルな数学のノート

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素数

素数

問題≪アイゼンシュタイン多項式≫

 $n$ を $2$ 以上の整数, $p$ を素数, $a_0,$ $\cdots,$ $a_{n-1}$ を整数とする. 多項式 \[ f(x) = x^n+pa_{n-1}x^{n-1}+\cdots +pa_1x+pa_0\] について, 次が成り立つことを示せ.
(1)
$f(x) = 0$ が整数解 $\alpha$ を持つ $\Longrightarrow$ $\alpha$ は $p$ で割り切れる.
(2)
$a_0$ が $p$ で割り切れない $\Longrightarrow$ $f(x) = 0$ は整数解を持たない.
[1996 京都大]

解答例

(1)
$f(\alpha ) = 0$ のとき, $\alpha ^n = -p(a_{n-1}\alpha ^{n-1}+\cdots +a_0)$ が成り立ち, $\alpha ^n$ は $p$ で割り切れるから, $\alpha$ は $p$ で割り切れる. 対偶を示すため, $f(x) = 0$ が整数解 $\alpha$ を持つとする. このとき, (1) から, $\alpha$ はある整数 $q$ を用いて $\alpha = pq$ と書ける. $f(\alpha ) = 0$ から \begin{align*} pa_0 &= -(p^nq^n+a_{n-1}p^nq^{n-1}+\cdots +a_1p^2q) \\ &= -p^2(p^{n-2}q^n+a_{n-1}p^{n-2}q^{n-1}+\cdots +a_1q) \end{align*} が成り立つので, $pa_0$ は $p^2$ で割り切れる. よって, $a_0$ は $p$ で割り切れる. ゆえに, 対偶は真だから, 元の命題も真である.

背景

 有理数全体の集合を $\mathbb Q$ とおく.
  • 定数でない有理数係数多項式 $f(x)$ が定数以外のすべての有理数係数多項式で割り切れないとき, $f(x)$ は $\mathbb Q$ 上「既約」(irreducible)であるという. 例えば, $x^2-1 = (x+1)(x-1)$ は $\mathbb Q$ 上「既約」でない. また, $x^2-2$ が $x^2-2 = (ax+b)(cx+d)$ ($a,$ $b,$ $c,$ $d$: 定数)と因数分解できるとすると, $\sqrt 2 = -\dfrac{b}{a}$ または $\sqrt 2 = -\dfrac{d}{c}$ となり, $\sqrt 2$ が無理数であることにより $a,$ $b,$ $c,$ $d$ は有理数とはならないので, $x^2-2$ は $\mathbb Q$ 上「既約」である.
  • 万能ではないが, 多項式が「既約」であるかどうかの判定に便利な, 次のような定理がある: ある素数 $p$ に対して, 最高次の項の係数が $p$ で割り切れず, それ以外の係数が $p$ で割り切れて, 定数項が $p^2$ で割り切れないような整数係数多項式は $\mathbb Q$ 上既約である(アイゼンシュタインの既約判定法). 特に, このような $2$ 次以上の多項式 $f(x)$ について, $f(x) = 0$ は整数解を持たない. 本問では, こちらを示した.
  • なお, 素因数分解と同様に, 定数でないすべての有理数係数多項式は $\mathbb Q$ 上の「既約多項式」と定数の積の形に $1$ 通りに表されることが知られている.

約数の和

定理≪約数の和の公式≫

 $2$ 以上の整数 $a$ が $a = p_1{}^{m_1}\cdots p_r{}^{m_r}$ ($p_k$: 相異なる素数, $m_k$: 正の整数)と素因数分解されるとき, $a$ の正の約数の総和 $\sigma (a)$ は \[\sigma (a) = (1+\cdots +p_1{}^{m_1})\cdots (1+\cdots +p_r{}^{m_r})\] である.

証明

 $a$ の正の約数は $p_1{}^{k_1}\cdots p_r{}^{k_r}$ ($0 \leqq k_j \leqq m_j$)の形に表され, \[ (1+\cdots +p_1{}^{m_1})\cdots (1+\cdots +p_r{}^{m_r})\] を展開したときの項としてもれも重複もなく現れるから, 上記の等式が成り立つ.

問題≪メルセンヌ素数と偶数の完全数≫

 正の整数 $a$ について, $a$ の正の約数の総和を $\sigma (a)$ で表す. $\sigma (a) = 2a$ が成り立つとき, $a$ を完全数と呼ぶ. 次のことを示せ.
(1)
正の整数 $a,$ $b$ が互いに素ならば, $\sigma (ab) = \sigma (a)\sigma (b)$ が成り立つ.
(2)
$n$ を正の整数とするとき, $2^n-1$ が素数ならば, $a = 2^{n-1}(2^n-1)$ は偶数の完全数である.
(3)
偶数の完全数 $a$ を $a = 2^{n-1}a'$ ($n$: $2$ 以上の整数, $a'$: 奇数)の形に表す. このとき, $\sigma (a') = a'+\dfrac{a'}{2^n-1},$ $a' = 2^n-1$ であり, $a'$ は素数である.
[2000 佐賀大*]
ヒント: $2^n-1 = (2-1)(1+\cdots +2^{n-1})$ が成り立つ.

解答例

(1)
$a,$ $b$ の素因数分解をそれぞれ \[ a = p_1{}^{m_1}\cdots p_r{}^{m_r}, \quad b = q_1{}^{n_1}\cdots q_s{}^{n_s}\] ($p_k,$ $q_l$: 相異なる素数, $m_k,$ $n_l$: 正の整数)とすると, $ab$ の素因数分解は \[ ab = p_1{}^{m_1}\cdots p_r{}^{m_r}q_1{}^{n_1}\cdots q_s{}^{n_s}\] となるから, 約数の和の公式により \begin{align*} \sigma (ab) &= (1+\!\cdots\!+p_1{}^{m_1})\cdots (1+\!\cdots\!+p_r{}^{m_r}) \\ &\qquad \times (1+\!\cdots\!+q_1{}^{n_1})\cdots (1+\!\cdots\!+q_s{}^{n_s}) \\ &= \sigma (a)\sigma (b) \end{align*} となる.
(2)
$2^n-1$ が素数であるとすると, (1) の結果から \begin{align*} \sigma (a) &= \sigma (2^{n-1})\sigma (2^n-1) \\ &= (1+\cdots +2^{n-1})\{ 1+(2^n-1)\} \\ &= (2^n-1)2^n = 2a \end{align*} となるので, $a$ は完全数である.
(3)
$\sigma (a) = 2a = 2^na'$ と \begin{align*} \sigma (a) &= \sigma (2^{n-1})\sigma (a') = (1+\cdots +2^{n-1})\sigma (a') \\ &= (2^n-1)\sigma (a') \end{align*} から, \[\sigma (a') = \frac{2^na'}{2^n-1} = a'+\frac{a'}{2^n-1}\] が成り立つ. $a'$ と $\sigma (a')$ は正の整数であるから, $\dfrac{a'}{2^n-1}$ は正の整数である. $n > 1$ から $2^n-1 > 1$ であるので, $\dfrac{a'}{2^n-1}$ は $a'$ より小さい $a'$ の約数である. $a'$ の正の約数は $a'$ と $\dfrac{a'}{2^n-1}$ の $2$ つのみであるから, $\dfrac{a'}{2^n-1} = 1$ つまり $a' = 2^n-1$ であり, $a'$ は素数である.

背景

  • $2^n-1$ ($n$: 正の整数)の形の素数を「メルセンヌ素数」(Mersenne prime)と呼び, 正の整数 $a$ の正の約数の総和が $2a$ になるとき, $a$ を「完全数」(perfect number)と呼ぶ.
  • 本問で示した結果により,「メルセンヌ素数」は偶数の「完全数」と $1$ 対 $1$ に対応する(ちなみに, (2) はユークリッド, (3) はオイラーによって示された). 例えば,「メルセンヌ素数」 $2^2-1 = 3,$ $2^3-1 = 7,$ $2^5-1 = 31$ には, 偶数の「完全数」$6,$ $28,$ $496$ が対応している. $2017$ 年 $12$ 月に発見された史上最大の素数 $2^{77232917}-1$ は $50$ 個目に発見された「メルセンヌ素数」である. まだ奇数の「完全数」は見つかっていないので, この「メルセンヌ素数」の発見は $50$ 個目の「完全数」の発見を意味する($2018$ 年 $3$ 月現在).